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野鳩とナカゴー「ひとつになれた」 [演劇]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は日曜日で診療所は休診です。
先週は大雪がありましたし、
今年になってから、
初めて少しのんびりした休日のような気がします。

休みの日は趣味の話題です。

今日はこちら。
ひとつになれた.jpg
野鳩という劇団があって、
2001年に結成され、
2007年に活動休止となったのですが、
今回別のナカゴーという劇団との合同公演という形で、
6年ぶりに活動再開となったのが、
この作品で、
22日まで下北沢のOFF・OFFシアターで上演されています。

野鳩は活動休止前に3回ほど観ています。

観ていない人に説明するのが、
非常に難しい劇団なのですが、
完全に書割の絵本のようなセットの上で、
田舎の小中学生に扮した役者さんが、
田園風景の中で、
ほのぼのしたファンタジー色の強い物語を、
様式的な学芸会的な演技で、
淡々と演じます。

作品は概ね1時間も経たないうちに、
終わってしまいます。

何処が面白いのかと、
改めて問われると困る感じがありますが、
唯一無二の感じがあり、
多くの作品でヒロインを演じた、
ぷっくりと巨大化した多部未華子のような、
佐伯さち子さんという女優さんには、
得難い魅力がありました。
小劇場では僕が最も偏愛する女優さんの1人です。

概ねセーラー服姿で、
ぬぼーっと出て来ると、
アニメの擬音のようなものを口で発しながら、
良い意味でおままごとのような演技で、
ファンタジーの世界を紡いでゆきます。

ただ、
野鳩活動休止前の作品では、
似合わない男役の脇役だったりして、
ガッカリした覚えがあります。

さて、
今回の久しぶりの野鳩作品は、
演出が野鳩主催の水谷圭一さんで、
ご本人が出演もされていますが、
戯曲自体はナカゴーの鎌田順也さんの作品なので、
これまでの野鳩とは全く違う世界が展開されています。
時間も1時間半と、
野鳩としては長尺です。

最初はどうなることかと思いましたが、
途中からシュールな世界が盛り沢山に展開し、
佐伯さち子さんの演技も、
久しぶりに観ることが出来たので、
それなりに納得はしました。

以下、
ネタバレがあります。

観劇予定の方は、
それほど多くはないと思いますが、
必ず観劇後にお読み下さい。

何もないセットに、
素の役者さんが、
実名でアップをしながら現われ、
それから演出の水谷圭一さんも本人役で登場します。

実際に野鳩とナカゴーとの合同公演で、
初日公演直前の、
最終チェックをしている、
という設定です。

ナカゴー主催の鎌田さんは、
ノロウイルスでお休みということで、
最初は登場しません。

演出家はうつ状態で、
役者は皆勝手気ままなので、
最終チェックはスムースには進まず、
何度も不毛な練習が繰り返されます。

所謂楽屋落ちで、
演技のクオリティも非常に低いので、
とても辛い気分になり、
正直途中で帰ろうかと本気で思いました。

と、
30分くらいして、
演出家が舞台上でフリーズしてしまうと、
突然巨大な毛むくじゃらの怪物が現われ、
あれあれと言う間に、
舞台上の演出家の上半身を、
その身体にある巨大な口で、
パクリと食べてしまいます。

一瞬の暗転の後には、
怪物の口から、
演出家の下半身が、
どさっと舞台に転がり落ちます。

これが勿論作り物とは分かるのですが、
意外にリアルに出来ていて、
作り物の下半身も、
意外にリアルな動きをするので、
そのクオリティの高さに驚きます。

そこからは、
急に話は「宇宙戦争」のようになり、
演出家を殺された役者さんの集団は、
車で下北沢を脱出し、
先も知れない逃避行に出掛けます。

それから色々あって、
役者さんは下北沢に戻り、
観客が1人もいなくても、
舞台は幕を開けようという熱血ドラマのような展開になり、
最後は皆はお隣の駅前劇場に去って、
舞台には演出家の下半身が寂しく残されます。

それでお終い。

合同公演ではありますが、
あまり野鳩色はなく、
今回が初見なので推測に過ぎませんが、
ナカゴー色が強い公演という印象を持ちました。

役者さんも皆私服的な衣装で、
せっかく佐伯さち子さんが復帰されたのですから、
まだまだいけそうな感じだったので、
セーラー服姿も観たかったのですが、
そうした趣向はありませんでした。

たとえば、
1場面夢の場にして、
野鳩の公演がそのまま繰り広げられても、
良かったのではないかと思いますし、
合同公演と銘打つならば、
楽屋落ちよりも、
そうした趣向こそが、
数少ない野鳩マニアにとっては、
望むものだったと思いますが、
そうはなりませんでした。

ナカゴーの舞台は今回観るのが初めてで、
かつ合同公演なので、
断定的には言えませんが、
ちょっと独特な世界で、
僕の立場からは、
書けない性質の特殊性があります。

鎌田さんが物凄い特殊なキャラを、
中段で圧倒的な存在感で自ら演じていて、
これも素直に面白いとは言い難い、
ちょっと特殊な世界です。

これでもう少し全体の演技の水準が上がれば、
より面白いと思うのですが、
現時点では演技のトータルなレベルは低く、
作品世界の途方もなさと、
鎌田さん本人の途方もなさが、
十全に活かされているとは言い難いのが、
少し残念に感じました。

皆さんに広くお奨め出来るものではありませんが、
小劇場でしか観られない特殊な世界で、
そうしたものにご興味のある方には、
一見の価値はあると思います。

個人的には次はもっと野鳩的な世界で戯れる、
佐伯さち子さんの姿が、
観たいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。

(付記)
コメント欄でご指摘を受け、
不正確な記述を、
より客観的なものに改めました。
(2013年1月20日午後2時修正)
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コメント 2

にむ

ナカゴーをみたことないのに、何故、作品の世界は完全にナカゴーのものといえるの。
by にむ (2013-01-20 13:52) 

fujiki

にむさんへ
そうですね。
野鳩の世界では殆どなかったので、
合同公演-野鳩=ナカゴー
という判断です。

より正確には、
ナカゴーの世界なのではないかと推測されます、
が正しい表現と思いました。

加筆して修正させて頂きました。
by fujiki (2013-01-20 14:01) 

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