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コレステロールは空腹で測らないといけないのか? [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
脂質の測定と食事からの時間.jpg
昨年11月のArch Intern Med.誌に掲載された、
コレステロールの測定値が、
食事からの時間でどれだけ変わるか、
という点を、
非常に多くの人数で検討した文献です。

健康診断などで採血をする時には、
空腹で測るようにと言われます。

病院など医療機関で採血をする時も、
飲んでいるお薬の性質や患者さんの状態によって、
食後に採血をすることもありますが、
概ね空腹での採血が指示されます。

食事の後には、
食事により吸収された栄養素などが、
血液中に移動しますから、
当然その数値は変動します。

全ての測定値が、
程度の差はありこそすれ、
変動はする訳です。

その意味では、
全ての採血は、
その食事の影響がほぼ消失すると考えられる、
空腹時にするのが望ましい、
ということになります。

しかし…

健康診断などで、
ご病気のない一般の方の採血をして、
動脈硬化の進行に結び付くような、
身体の異常をチェックしよう、
というような場合、
全ての方が空腹で採血をする、
というのは結構ハードルの高いことです。

診療所の関わっている集団健診などでも、
一定数の方は食後でお出でになりますし、
長時間の空腹は、
本人にとってはかなりのストレスとなり、
却って体調不良の原因になることもあります。

勿論厳密な測定には、
空腹時の方が良いに決まっています。

しかし、
それが単純に、
ご病気がないかどうかのスクリーニングであれば、
取り敢えず食事の制限なしの採血でも、
大きな問題はないのではないか、
という考え方も出来ます。

食後で変動する数値の代表は、
血糖値と中性脂肪などの脂質です。

このうち血糖値に関しては、
あまり食事時間と関わりのない指標である、
HbA1cの測定に、
検診項目が変わりつつある、
という経緯があります。

それでは、
食事と共に変動する数値の、
もう1つの代表である、
脂質に関してはどうなのでしょうか?

欧米のガイドラインにおいては、
食事から8時間以上は時間を置いて、
脂質の採血は行なうように決められています。

ただ、
上記の論文の著者らは、
食事に関わらない採血であっても、
健診などのスクリーニングにおいては、
大きな問題は生じないのではないか、
という仮説を立て、
カナダにおいて検査機関が保有する、
トータル20万人を超える採血データを、
その採血の食事からの時間毎に解析し、
どの程度の差が見られるものかを検討しています。

検討されている数値は、
総コレステロールとHDLコレステロール、
中性脂肪、
そして上記の3つの数値から計算された、
LDL コレステロールの数値です。
ただし、中性脂肪が400mg/dlを超える場合には、
LDL コレステロールの計算式は不正確となるので、
計算はされていません。

その結果…

総コレステロールとHDLコレステロールの数値については、
食事からの時間毎に区分けしても、
統計的に有意な差は認められていません。
計算式によるLDL コレステロール値は、
10%程度の幅で推移し、
計算式の性質上、
食事からの時間が短いと低めになります。
最も変動の大きいのは、
当たり前のことですが中性脂肪で、
この場合20%程度の幅で変動を示し、
食後からの時間が短いほど、
高値になっています。

中性脂肪が400を超えた事例は、
全体の1.5%程度に認められました。

このデータを上記の文献の著者らは、
この程度の変動幅であれば、
まずは食事に関わりのない採血を、
一次スクリーニングとして行ない、
中性脂肪が400を超えた事例に限って、
追加で空腹時の採血や、
LDL コレステロールのより厳密な直接測定を、
追加すれば良いのではないか、
という見解を示しています。

このデータをどう考えるかは、
非常に微妙だと思います。

コレステロールの測定に関しては、
食事と無関係の測定で、
スクリーニングとしては問題のないように思います。

中性脂肪の測定値を厳密に考える場合には、
矢張り空腹での採血が必須と思いますが、
欧米のガイドラインにおいては、
中性脂肪の高値の意味付けは、
あまり大きなものではないので、
まずは食事と関わりのない測定で、
400を超えるような数値のみを、
抽出して再検査に廻せれば、
それで良い、
ということになるのかも知れません。

個人的には中性脂肪は食前の採血においても、
かなりのばらつきの生じる検査なので、
その数値のみで何かを判断することは難しく、
血糖におけるHbA1cのように、
より平均化したようなマーカーが、
別個に必要になる可能性が高いのではないか、
と考えます。

今日は血液の脂質の測定値についての話でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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