脳卒中患者の転院搬送時間とその問題点 [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
JAMA誌に2023年8月15日付で掲載された、
脳卒中の患者さんの転院搬送時間についての論文です。
急病で救急車を呼んだ全ての患者さんが、
その患者さんの病状に適した医療機関に、
運ばれるという訳ではありません。
たとえば頭痛やふらつきなどの症状があるとして、
今のような夏場であれば、
熱中症の可能性もありますし、
ウイルス感染症などの可能性もあります。
また、検査をしてみると、
実は脳梗塞が見つかる、というようなケースもあります。
最初から虚血性梗塞であることが分かっていれば、
その発症からの時間によって、
血栓溶解剤による治療や、
カテーテルによる血管内治療などを、
検討して行うことが可能です。
救急隊もそうした治療が施行可能な、
専門施設や病院に患者さんを運ぶことが出来ます。
しかし、そうした情報はないことの方が多く、
救急病院は何処も受け入れが難しい状況ということになると、
取り敢えず受け入れが可能が病院に搬送するということになります。
そこで診察をして検査を行って、
急性期の脳梗塞であると判明した場合、
どうすれば良いのでしょうか?
当然対応が可能な病院に、
可及的速やかに転送することが必要、
ということになります。
ただ、これはそう簡単なことではありません。
最初に対応した病院の医師やスタッフが、
対応が可能な高次病院に連絡を取り、
受け入れの可否を確認して、
再度救急車を要請して転院搬送しなければいけないのですが、
そうした移送が円滑に可能な仕組みがある訳ではなく、
他の患者さんの対応もしながら、
夜間であれば最小限のスタッフで、
そうした作業を同時進行しないとならないからです。
上記文献にあるアメリカの状況の説明では、
虚血性梗塞で救急受診した患者さんの13%は、
他の病院への転送が必要となり、
血管内治療が必要な患者さんに限ると、
その比率は更に高くなるようです。
アメリカのガイドラインでは、
こうした脳梗塞の患者さんが、
最初の病院に到着してから高次病院に搬送開始されるまでの時間は、
2時間以内である必要があると規定されています。
しかし、実際にはどの程度の時間が掛かっているのでしょうか?
今回の研究では、
2019年から2021年において、
登録されたアメリカの救急病院から、
虚血性梗塞や出血性梗塞のために高次病院に転院搬送された、
トータル10893名の患者さんの、
登録病院への到着から、
転院のために病院を出るまでに要した時間を、
計測しています。
その結果、
転院搬送までに要した時間の中間値は174分で、
ガイドラインにある120分以内であったのは、
全体の27.3%に過ぎませんでした。
特に年齢が80歳以上、女性、人種差が、
転院搬送までの時間が長くなることと関連していました。
日本においてもこうした検証が是非必要であると思いますし、
脳卒中の急性治療のように、
発症から適切な治療までの時間に制限があるような病気については、
治療そのものの進歩だけでは不充分で、
患者さんが適切に搬送され治療を受けられるような、
社会的システムの構築が不可欠なものであることを、
こうしたデータは明確に示しているように思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
JAMA誌に2023年8月15日付で掲載された、
脳卒中の患者さんの転院搬送時間についての論文です。
急病で救急車を呼んだ全ての患者さんが、
その患者さんの病状に適した医療機関に、
運ばれるという訳ではありません。
たとえば頭痛やふらつきなどの症状があるとして、
今のような夏場であれば、
熱中症の可能性もありますし、
ウイルス感染症などの可能性もあります。
また、検査をしてみると、
実は脳梗塞が見つかる、というようなケースもあります。
最初から虚血性梗塞であることが分かっていれば、
その発症からの時間によって、
血栓溶解剤による治療や、
カテーテルによる血管内治療などを、
検討して行うことが可能です。
救急隊もそうした治療が施行可能な、
専門施設や病院に患者さんを運ぶことが出来ます。
しかし、そうした情報はないことの方が多く、
救急病院は何処も受け入れが難しい状況ということになると、
取り敢えず受け入れが可能が病院に搬送するということになります。
そこで診察をして検査を行って、
急性期の脳梗塞であると判明した場合、
どうすれば良いのでしょうか?
当然対応が可能な病院に、
可及的速やかに転送することが必要、
ということになります。
ただ、これはそう簡単なことではありません。
最初に対応した病院の医師やスタッフが、
対応が可能な高次病院に連絡を取り、
受け入れの可否を確認して、
再度救急車を要請して転院搬送しなければいけないのですが、
そうした移送が円滑に可能な仕組みがある訳ではなく、
他の患者さんの対応もしながら、
夜間であれば最小限のスタッフで、
そうした作業を同時進行しないとならないからです。
上記文献にあるアメリカの状況の説明では、
虚血性梗塞で救急受診した患者さんの13%は、
他の病院への転送が必要となり、
血管内治療が必要な患者さんに限ると、
その比率は更に高くなるようです。
アメリカのガイドラインでは、
こうした脳梗塞の患者さんが、
最初の病院に到着してから高次病院に搬送開始されるまでの時間は、
2時間以内である必要があると規定されています。
しかし、実際にはどの程度の時間が掛かっているのでしょうか?
今回の研究では、
2019年から2021年において、
登録されたアメリカの救急病院から、
虚血性梗塞や出血性梗塞のために高次病院に転院搬送された、
トータル10893名の患者さんの、
登録病院への到着から、
転院のために病院を出るまでに要した時間を、
計測しています。
その結果、
転院搬送までに要した時間の中間値は174分で、
ガイドラインにある120分以内であったのは、
全体の27.3%に過ぎませんでした。
特に年齢が80歳以上、女性、人種差が、
転院搬送までの時間が長くなることと関連していました。
日本においてもこうした検証が是非必要であると思いますし、
脳卒中の急性治療のように、
発症から適切な治療までの時間に制限があるような病気については、
治療そのものの進歩だけでは不充分で、
患者さんが適切に搬送され治療を受けられるような、
社会的システムの構築が不可欠なものであることを、
こうしたデータは明確に示しているように思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2023-08-22 08:17
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