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アスピリンの二次予防はどの程度行われているのか? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アスピリンの二次予防の処方頻度.jpg
JAMA誌に2023年8月付で掲載された、
有効なアスピリンの治療の世界での実施状況を検証した論文です。

1日80㎎から100㎎くらいの低用量のアスピリンに、
心筋梗塞などの心血管疾患の再発予防効果のあることは、
これまでの多くの臨床データにより実証されている事項です。

これは一度そうした病気を起こした患者さんの、
再発予防効果としてで、
まだ病気になっていないけれど、
そのリスクが高い状態での使用については、
最近は否定的な見解もあって結論に至っていません。

つまり、心血管疾患の再発予防のためには、
アスピリンは非常に有効な治療であることに間違いはなく、
安価な薬であることを考えれば、
非常に費用対効果の高い治療である、
という言い方が出来ます。

それでは、アスピリンの再発予防の適応のある患者さんのうち、
実際に使用している比率はどのくらいなのでしょうか?

今回の研究は世界51か国を
高所得国、高中所得国、低中所得国、低所得国
(この順番に所得が高い。国連で決められている区分です。)に分け、
2013年から2020年に、
40から69歳の124505人の健康調査を施行して、
心血管疾患の有無とアスピリン使用との関連を検証しているものです。

その結果、
対象者のうち8.1%に当たる10589名が、
心血管疾患の既往がありました。
心血管疾患の既往のある人のうち、
再発予防目的でアスピリンを使用していたのは、
全体では40.3%に過ぎませんでした。
これを国の所得によって分類して比較すると、
エチオピア、ウガンダなどの低所得国では、
アスピリンの使用比率は16.6%という低率であったのに対して、
低中所得国のケニア、ザンビア、ベトナムなどでは24.5%、
高中所得国のアルジェリア、イランなどでは51.1%、
高所得国のイギリス、アメリカなどでは65.0%となっていました。

このように、
有効性が高く経済的にも負担が少ないとされる、
アスピリンによる心血管疾患の再発予防についても、
実際には適応の患者さんの多くが施行しておらず、
特に低所得国においてその傾向が顕著であることが、
今回の検証で明らかになりました。

日本においても、
色々な理由により、
本来必要な再発予防の治療が、
行われていないケースはかなり多いと考えられ、
その有効な対策が、
検討される必要があると思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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