SSブログ

インフルエンザに特徴的な症状は? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
インフルエンザで特徴的な症状は?.jpg
2015 年のClinical Infectious Diseases誌に掲載された、
インフルエンザの症状についての論文です。

少し古いものですが、
先日の感染症対策の講演でご提示のあった論文だったので、
改めて読んでみました。

「発熱外来」という言葉があるように、
通常感染リスクの高い感染症では、
発熱が最も重要な指標として使われています。

たとえば、熱が37.5℃以上の方は、
通常の診察室ではなく、発熱外来で対応する、
というようなトリアージが、
今は一般的に行われています。

新型コロナについても、
矢張り発熱が感染を疑う一番の指標となりました。

インフルエンザの場合も状況は同じです。

しかし、実際には新型コロナでもインフルエンザでも、
発熱がなくて感染しているというケースが、
少なからずあることが報告されています。

厄介なのは咳込みが酷いのに、
熱は出ていない、というような状態があることで、
この場合は発熱がなくても、
当然周辺にウイルスをバラまいて、
感染が拡大する事態となるのです。

それでは、実際に特定の感染症において、
どの程度の比率で発熱はなく、
それ以外の症状はある、
という病態が存在しているのでしょうか?

今回の研究はアメリカの単独医療施設において、
出勤する医療従事者の症状を確認。
発熱があれば即自宅療養となりますが、
発熱がなく、咳、咽頭痛、鼻汁、鼻閉のうち、
いずれかの症状がある場合には、
インフルエンザの遺伝子検査を施行して、
症状と陽性率との関連を検証しています。

449名に遺伝子検査を施行し、
そのうちの54%に当たる243名で、
インフルエンザに代表される感冒の原因ウイルスが同定されました。
同定されたウイルスのうち、
最も多かったのはコロナウイルス(新型コロナではありません)で、
142例で検出。
続いてインフルエンザウイルスが35例、RSウイルスが33例となっていました。
全体の18%は発熱を伴っていたか、
経過中に発熱した事例でした。
インフルエンザの事例のうち1例のみがB型で、
それ以外はA型でした。

インフルエンザA型と診断された34例のうち、
経過中に発熱したのは42.4%で、
咳は全例に認められ、鼻水は63.6%に、
鼻閉は63.6%に、咽頭痛は60.6%に認められていました。

ちょっとややこしいのですが、
上記以外にかかりつけ医で検査を行い、
インフルエンザA型と診断された7例があり、
それを加えると41例がインフルエンザA型と診断された事例になります。
そして、そのうちで発熱を経過中に伴っていたのは、
51.2%の21例のみでした。

インフルエンザと診断された事例のうち、
前年度にインフルエンザワクチンを接種していたのは20人で、
ワクチン未接種者で無熱性のインフルエンザが多い傾向は認められましたが、
統計的に有意な差はありませんでした。

このように、
咳などの症状のみでも、
実際にはインフルエンザの事例は流行期には多く存在していて、
感染の拡大を防ぐためには、
感冒症状全体を、
感染拡大のリスクと考えた方が良いようです。

この論文は、先日の感染症関連の講演で、
ご高名な感染症の専門の先生が提示されていたのですが、
説明としては、
「インフルエンザでは100%咳の症状がある」
と言われていました。

そんなことあるのかしら、
とお聞きした時点で疑問に思ったので、
元論文を読んでみたのですが、
確かに咳の頻度は調べた範囲では100%ですが、
事例は34例のみで1シーズンのみでの検証ですから、
それで言い切るのは如何なものか、と思いました。
そもそもこの研究では、
感冒症状のある人のみを検査の対象としているので、
それがインフルエンザ自体の症状の特徴、
という言い方は出来ないと思います。

高名な先生も意外にエビデンスの乏しい知見を、
断定的な事実のように言われるのだなあ、
と改めてそんなことを思いました。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(4)  コメント(0) 

nice! 4

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。