SSブログ

肥満を伴う心不全に対するセマグルチドの有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は校医活動などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
セマグルチドの心不全に対する有効性.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2023年8月25日付で掲載された、
肥満を伴う心不全に糖尿病の治療薬を試みる、
という臨床試験の報告です。

アメリカにおいては、
心機能が一定レベル保たれている心不全患者の多くは、
肥満を伴っていると報告されています。

この心不全と肥満は無関係ではなく、
体重増加による心臓への負荷や、
内臓脂肪の増加の心血管系に与える影響などが、
密接に関連していると考えられています。

しかし、現行の心不全の治療薬は、
利尿剤や血管拡張剤、強心剤など、
いずれも肥満の改善とは無関係のものばかりです。

それでは肥満を改善することにより、
どの程度心不全は改善するのでしょうか?

GLP-1アナログは、
インクレチン関連薬と呼ばれる糖尿病治療薬の注射薬ですが、
高用量において肥満に有効であることが臨床試験で確認されています。

それでは、
このGLP-1アナログの注射薬を、
肥満を伴う心不全に使用した場合、
どのような効果があるのでしょうか?

今回の研究では、
左室機能が一定レベル(駆出率45%以上)保たれている心不全があり、
BMI30 以上の肥満のある、
トータル529名の患者を、
くじ引きで2つの群に分けると、
患者本人にも主治医にも分からないように、
一方はGLP-1アナログのセマグルチドを、
1週間に一回2.4㎎皮下注射して、
もう一方は偽の注射薬を同じように使用して、
その経過を52週に渡って観察しています。

その結果セマグルチドの使用により、
体重は平均で13.3%低下し、
それに伴って心不全の身体症状にも改善が認められました。
また6分間で歩ける距離を比較すると、
治療前後でセマグルチド群では21.5メートル改善していたのに対して、
偽注射群では1.2メートルの改善に留まっていて、
有意な運動能力の改善が確認されました。

このように、
GLP-1アナログの使用により、
長期に渡り体重の減少と共に、
心不全症状の改善が認められていて、
安定した肥満を伴う心不全に対しては、
今後有用な治療の選択肢となる可能性がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(2)  コメント(0) 

nice! 2

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。