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新型コロナウイルスに対するmRNAワクチンの有効性(モデルナ社) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
モデルナ社のコロナワクチン.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2020年12月30日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症のワクチンとして、
ファイザー社などのワクチンと共に、
もう海外では一般への接種が開始された、
モデルナ社によるmRNAワクチンの、
有効性についての臨床試験結果をまとめた論文です。

今回開発されたのは、
mRNAワクチンというタイプのワクチンです。
その仕組みの概略がこちら。
(図はファイザーなどのワクチンのものを使用しています)
RNAワクチンのメカニズムの図.jpg
mRNAというのは、
人間の細胞がリボゾームという工場でタンパク質を作る時に、
その設計図となる遺伝子の鋳型のようなものですが、
それを合成して新型コロナウイルスの突起部分の蛋白質の、
元になる遺伝子を挿入します。
それを脂質の膜のカプセルで保護して粒子にしたのが、
このワクチンの原型で、
それを筋肉注射で身体に送り込みます。

それが、抗原提示細胞と呼ばれる免疫細胞に取り込まれると、
そこで抗原蛋白が作られ、
それが新型コロナウイルスに対する免疫を、
誘導することになるのです。

これまでのワクチンは、
基本的に抗原蛋白そのものを投与して、
それで免疫を誘導するという手法でしたから、
今回のワクチンはその元になる遺伝子を投与して、
身体の細胞に抗原蛋白を作らせる、
という点が全く違っているのです。

このワクチンは100μgを4週間の間隔で2回筋肉注射で接種します。

今回の臨床試験はアメリカで、
18歳以上の30420名をくじ引きで2つに分けると、
一方は上記のワクチンを2回接種し、
もう一方は偽ワクチンを接種して、
その後の両群の新型コロナウイルス感染症発症率を、
比較検証しています。

その結果、
2回目のワクチン接種から14日以上経過後に発症した、
新型コロナウイルス感染症は、
ワクチン接種群では11件であったのに対して、
偽ワクチン群では185件で、
2回のワクチン接種により、
新型コロナウイルス感染症は94.1%
(95%CI: 89.3 から96.8)有意に抑制されていました。

今回の臨床試験においては、
ワクチンの有害事象は、
主に接種部位の疼痛や発赤、
だるさや頭痛などで、
重篤なものは少なく、
偽ワクチンと有意な差は認められませんでした。

先日ご紹介したファイザー社などによるmRNAワクチンの有効性は、
ほぼ95%で、
今回のモデルナ社のワクチンは、
ほぼ同一の規模と方法の臨床試験において、
こちらもほぼ同一の有効性を示した、
と言って良さそうです。

現時点での新型コロナウイルス感染症に対するワクチンの問題点は、
最長でも2ヶ月程度の短期間の有効性しか、
示されてはいない、という点にあります。
猿を使った実験や中和抗体の測定などのデータでは、
3ヶ月程度の有効性はあると推測されますが、
それ以降の有効性については全く分からない、というのが実際です。
また、ワクチンの臨床試験は偽ワクチンを使用して行われていますが、
明らかにワクチンの接種部位の腫れや痛みには差があるので、
結果としては本人にも本物のワクチンが接種されたかどうかは分かってしまい、
それが結果に影響を与えている可能性も否定は出来ません。
更には今回の臨床試験は症状のある感染の予防効果をみたもので、
無症状の感染まで予防可能であるかどうかは明らかではありません。
つまり、接種者の有症状の感染の予防効果は確かでも、
無症状の感染は予防しないとすれば、
感染拡大自体を阻止するかどうかは、
まだ今後の経過をみないと、
判断は出来ない事項なのです。

今後の情報を注視しつつ、
その進捗を待ちたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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