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男性ホルモン治療の軽症糖尿病進行予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
テストステロンの糖尿病治療.jpg
Lancet Diabetes & Endocrinology誌に、
2021年1月1日掲載された、
男性ホルモン治療の糖尿病予防効果についての論文です。

肥満している男性では血液中の男性ホルモン(テストステロン)が低下していて、
それが2型糖尿病の発症リスクと関連している、
という疫学データが存在しています。
メタ解析ではテストステロン濃度が低い場合と比較して、
高いと2型糖尿病の発症リスクが低下する、
という解析結果も報告されています。

肥満している男性がダイエットで体重を落とすことにより、
糖尿病の発症リスクが低下し、
血液のテストステロン濃度も回復することが報告されています。
テストステロン補充療法を施行した介入試験において、
体脂肪が低下して筋肉量が増加するというデータはあり、
このことからは、テストステロンの補充を行なうことにより、
糖尿病の予防に繋がる可能性が示唆されますが、
実際に厳密な方法で、
テストステロンによる糖尿病予防効果が検証されたことは、
これまでありませんでした。

そこで今回の研究では、
オーストラリアの6か所の専門施設において、
50歳から74歳の男性で、腹囲が95センチ以上あり、
血液中の総テストステロン濃度が14.0nmol/L(404ng/dL)以下と低めで、
耐糖能異常があるか新規に2型糖尿病と診断された、
トータル1007名を対象として、
本人にも主治医にも分からないように、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方はテストステロンの注射製剤テストステロン・アンデカノエイトを、
1000mgで開始し、その6週間後、その後は3ヶ月毎に2年継続。
もう一方は偽の注射を使用して、
2年間の経過観察を行います。

治療開始後2年の時点で、
糖負荷試験での2時間血糖200mg/dLを超えた事例は、
偽注射群では21%に認められたのに対して、
テストステロン治療群では12%に認められ、
テストステロン治療は糖尿病のリスクを、
41%(95%CI: 0.43から0.80)有意に低下させていました。

テストステロン群の有害事象としては、
前立腺癌のマーカーであるPSAの上昇には、
両群で有意差はなかった一方で、
血液の濃縮度を示すヘマトクリットは、
テストステロン群で有意に高値を示していました。

このように、
テストステロンの使用は、
内臓脂肪が多く糖尿病のリスクの高い男性において、
糖尿病の発症を予防する効果が、
一定レベル認められました。
その一方で血液を濃縮させるなど、
有害事象は否定出来ず、
今後その安全性を含めて、
より詳細な検証が必要と考えられます。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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