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新型コロナウイルス感染症に対するアデノベクターワクチンの有効性(アストロゼネカ社など) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナウイルスのアデノベクターワクチンの有効性.jpg
Lancet誌に2020年12月8日ウェブ掲載された、
オックスフォード大とアストラゼネカ社などによる、
新型コロナウイルス予防ワクチンの臨床試験結果についての論文です。

このワクチンも、
ファイザー社などによるmRNAワクチン、
モデルナ社によるmRNAワクチンより少し遅れて、
本国のイギリスで一般への接種が開始されています。

このADZ1222と題されたワクチンは、
mRNAワクチンとは異なる製法によるアデノウイルスベクターワクチンです。

ウイルスベクターワクチンというのは、
他の無害なウイルスの遺伝子の一部に、
目標とするウイルスの遺伝子を取り込ませて、
それを人間に感染させることにより、
免疫を誘導しよう、という手法のワクチンです。

今回のイギリスのワクチンは、
チンパンジー由来の人間には感染しないアデノウイルスを、
ベクターとして利用して、
そこに新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の、
突起(スパイク)部分の蛋白質の遺伝子を挿入し、
それを接種することで人間にこのアデノウイルスを感染させます。

このウイルスは人間の細胞に感染しますが、
そこで増殖はしないように調整されています。
結果としてウイルスに対して身体が免疫を誘導するので、
それが新型コロナウイルスにも有効に作用する、
という仕組みです。

生ワクチンや不活化ワクチンほど量産に時間が掛からず、
ウイルスを感染させるので、
不活化ワクチンより細胞性免疫の活性化も強く期待出来る、
という点が利点です。

中国で開発されている同種のワクチンは、
エボラ出血熱ワクチンで開発には成功しており、
イギリスの今回のワクチンはMERSワクチンとして開発した経緯があり、
いずれのワクチンも大規模な臨床応用、
というところには至っていない点に、
若干の不安はありますが、
比較的成功の可能性の高い技術ではあるのです。

今回発表された臨床試験は、
ブラジル、南アフリカ、イギリスで施行された、
4種類の介入試験の結果をまとめて解析したものです。
いずれも18歳以上の一般住民をクジ引きで2つに分けて、
一方は実際のワクチンを投与し、
もう一方は偽ワクチン(試験により髄膜炎菌など別のワクチンや生理食塩水)
を使用して、
2本目のワクチン接種後14日以降の、
新型コロナウイルス感染症の発症を比較して有効率を算出しています。

トータルで23848名が試験に参加し、
メインである有効性の解析には、
そのうちの11636名が使用されています。
基本的に2本のワクチンを筋肉注射で使用していますが、
その間隔は試験により幅がありますが、
標準は4週間です。
トータルなワクチンの有効率は70.4%(54.8から80.6)と算出されています。

このワクチンはmRNAワクチンとは異なり、
冷凍保存などの特殊な温度管理の必要性がなく、
現状のインフルエンザワクチンなどと、
同じような管理で接種可能である点が一番の利点で、
ワクチンの価格自体も安いとされていますが、
mRNAワクチンの有効性が概ね95%であることを考えると、
70%というのはかなり見劣りのすることも確かです。

今後その接種が拡大する中で、
その利便性と有効性、安全性のバランスが、
より明確になることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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