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唾液の遺伝子検査の有効性について(2021年メタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談にて都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
PCR唾液と鼻腔の比較.jpg
JAMA Internal Medicine誌に、
2021年1月15日ウェブ掲載された、
唾液と鼻咽頭の遺伝子検査の精度を比較した、
カナダの研究者によるメタ解析の論文です。

唾液の遺伝子検査は
採取が何処でも痛みなく行える利点から、
日本では新型コロナウイルス感染症の診断のための検査として、
広く行われています。
自費検査と呼ばれるものは、
その殆どがこの唾液採取による方法で行われています。

通常症状出現から9日目までは、
鼻咽頭と唾液とどちらの検体でも良く、
10日目以降は鼻咽頭や喀痰などの検体のみ可、
というのが今の日本の基準になっています。
そのベースになっているデータは、
以前ブログでご紹介したことがありますが、
厚労省の研究班のデータが元になっているようです。

ただ、欧米においては、
唾液検体はそれほど積極的には採用されておらず、
遺伝子検査の検体は鼻咽頭から採取するのが一般的であるようです。

今回の研究はこれまでの臨床データをまとめて解析した、
システマティックレビューとメタ解析です。
これまでの16の研究をまとめて解析した結果、
唾液の遺伝子検査の感度は83.2%(95%CI:74.7 から91.4)、
特異度は99.2%(95%CI:98.2 から99.8 )、
と算出されました。
一方で鼻咽頭の検体での検査の感度は84.8%(95%CI:76.8から92.4)、
特異度は98.9%(95%CI:97.4から99.8)で、
両者には統計的に有意な差はありませんでした。

このように、
特に軽症から中等症の事例においては、
唾液の遺伝子検査の精度は鼻咽頭の検体採取による検査と遜色はなく、
同様の信頼性を持つと考えて大きな間違いはないようです。

感度がやや低いのは、
陽性と判定されていても、
遺伝子の断片があるだけで、
もう治癒しているようなケースもあるからです。

ただ、これまでのデータの解析では、
唾棄の方がむしろ鼻咽頭より長期間、
遺伝子が検出されるケースが多いと記載されていて、
これは日本の今の基準と研究班のデータとは、
相反する知見です。

唾液の遺伝子検査に有用性のあることは間違いがありませんが、
その遺伝子検出期間については相反する見解もあり、
今後再検証される必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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