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極私的新型コロナウイルス感染症の現在(2020年1月4日) [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日までクリニックは年末年始の休診です。
明日からは通常通りの診療になります。

今日はまた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の診療についての話です。

昨日は午前中発熱外来でクリニックを開けましたが、
結局連絡があって受診されたのは2名のみでした。

どうも無理して三が日に診療をした割には、
あまりお役には立てなかったようです。

年末の1300人以上という数字は非常にショッキングでしたが、
その内訳は実際のところどうなのか、
地域的な偏りがどの程度あるのか、
自費検査の分がどの程度乗っかっているのか、
など、その詳細を知りたいところです。

年末年始の診療をしていてのこの閑散とした状況からは、
緊急事態宣言も間近、というようなニュースは、
どうも実感を持って感じることが出来ません。

落ち着いているようで、
一部の病院には患者さんが殺到しているのでしょうか?

仮にそうだとすれば、
軽症の方は幾らでも廻して頂いて良いのですから、
もっと効率的な診療が、
出来るような体制を何とか整備して欲しいものです。

幾つか最近印象的だった事例の話をします。
実際の事例を元にしていますが、
守秘義務及び個人の特定を避ける観点から、
敢えて事実を変えて記載している部分のあることを、
予めお断りしておきます。

1例目は近隣のあるお寺のお坊さんなのですが、
僧房で集団生活をしていたのですね。
その中の1人が持病を持っていて、
その持病のために総合病院に入院したのですが、
その病院で新型コロナウイルス感染症の院内感染が発生。
それから数日して、その人は、もう入院は続けられないと、
強制退院のような形になったのです。
その時点で発熱などの症状はなかったのですが、
退院となって2日後に発熱。
発熱外来を経由しての検査でその人の陽性が確認され、
一緒に生活していた10人以上が濃厚接触者と認定。
結果としてクリニックで検査をしたお坊さんを含めて、
5人以上がお寺で感染してしまうという、
クラスターになってしまったのです。

クリニック目線で考えると、
いきなり退院にするのではなく、
一定期間は隔離にするなど、
もう少し配慮があるべきではなかったかしら、
というようには思うのですが、
病院としてはそれどころではないですし、
ともかく感染していない(と思われる)患者さんを、
一刻も早く病院の外に出そう、
という考えが先行したのだと思います。

クリニック、家庭、保健所、病院と、
それぞれの認識に違いがあり、
それぞれに疲弊してくると、
結局は自分のところから、
自分の責任の及ぶところから、
新型コロナの患者さんを早く手放したい、
という思いが先行してしまい、
こうした事例が多くなるように思います。

ここにも患者数急拡大の1つの要因がありそうです。

2例目は知的障害のある30代の男性ですが、
37度代後半の発熱と咳、胸の痛みを主訴にして、
近隣の救急指定病院を受診。
すぐに採血とRT-PCR検査、胸部CTまで検査をしましたが、
CTで肺炎像はなくPCR検査は陰性であったので、
咳止めなどが対処療法として処方され、
経過をみる方針となりました。
ただ、ご本人も付き添いの母親も、ちょっと癖のある人で、
その診断をあまり信用せず、
今度は別の内科を再び受診し、
診察のみを受けて抗菌剤などの処方を受けました。
それから一週間が経ちましたが、
微熱は続き体調はあまり改善しません。
それでその患者さんは再び母親と一緒に、
クリニックを受診されました。
他の病院でも同じだったと思うのですが、
全く事前の連絡なく、いきなり受診をされて、
「具合が悪い。熱がある。胸が苦しい」と言われるのです。
正直困りました。
診察をお断りすることは出来ないのですが、
他の熱のない患者さんと一緒にお待たせする訳にはゆきません。
いつも別室で診察をする手はずにしているのですが、
時間で予約して調整しているので、
飛び込みでそうした方が来られると、
調整がつかなくなってしまうのです。
仕方なく一旦その2人を別室に案内し、
時間通りに来た濃厚接触者の方を、
しばらく外でお待たせすることになってしまいました。

拝見すると診察上は呼吸状態を含めて、
大きな異常はありません。
ただ、微熱は続いていて、
胸が苦しいとも言われているので、
このまま帰ってもらう、という訳にもゆきません。

これまでの経緯を考えれば、
最初に受診した救急病院で、
CTなども撮っているのですから、
そこでもう一度問題がないか確認をしてもらうのが、
適切ではないかと考えました。

それでその救急病院に連絡して、
担当した医師に相談すると、
「あの症状はメンタルなのだから、
これ以上検査をしても意味がない。
CTは月に2回撮ると保険で通らないので出来ない」
と剣もほろろの対応でした。

仕方なく午前中の患者さんが終わるのを待って、
胸部レントゲンと採血をして、
いずれも問題はなかったので、
PCR検査の再検はせず、様子をみてもらう方針としました。

勿論救急病院の初診の判断としては、
検査も異常はなかったので経過観察で良いと思うのですが、
1週間も微熱が続いていることは客観的事実なので、
勿論精神的な要因かも知れませんが、
知的障害があるから症状はメンタル、
というのは疑問ですし、
1週間前の検査が異常がなかったからと言って、
今も異常がないとは言い切れないのですから、
もう一度診療してくれても良いのではないかしら、
というのは強く思った事例でした。

いずれにしても医療機関や担当部署のいずれもが、
疲弊してほころびが出て、
連携も上手くいっていないので、
その狭間で患者さんや感染者が放置され、
その間に感染が拡大する、という悪循環が、
おそらく現状の本質ではないかという気がします。

明日からまたどのような展開が待っているかは分かりませんが、
状況を見つつ自分に出来ることを、
日々やっているより他はないように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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