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「東京原子核クラブ」(2020年本多劇場上演版) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診ですが、
夜にはRT-PCR結果の連絡を、
15件ほどしないといけないのでクリニックには行く予定です。
結果を電話で説明して、
陽性であれば、
保健所に連絡をして…という一連の段取りがあり、
最近は25から50%くらいが陽性なので、
1時間から1時間半くらい毎日掛かっています。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
東京原子核クラブ.jpg
1997年に初演されたマキノノゾミさんの代表作の1つ、
「東京原子核クラブ」がマキノさんの演出で、
今下北沢の本多劇場で上演されています。

この作品は生で観るのは今回が初めてです。

公演は本日までですが、
客席は半分のみが使用され、
19時開始の公演が何回か中止となっていました。

客席はほぼ埋まっていましたが、
どちらかと言うと身内の方が多いかな、
という感じの印象でした。
多少ダレ場もある芝居ですが、
寝ているような方は殆どいませんでした。

これね、井上ひさしさんの「きらめく星座」や「闇に咲く花」のように、
軍人や政治家以外の日本人の戦争責任を扱った内容で、
ノーベル賞を受傷した朝永振一郎博士をモデルにした、
友田晋一郎という科学者が主人公です。

お分かりのように、
名前はモデルになった人物が、
明確に分かるように書かれているんですね。

第二次大戦中にはアメリカのマンハッタン計画以外にも、
各国で「原子爆弾」の開発が、
しのぎを削っていたのですね。
日本でも旧帝大の物理学教室を中心にして、
そうした研究が実際に行われていました。
朝永振一郎博士も湯川秀樹博士も、
その関わり方は様々であっても、
関わり自体があったことは確かであるようです。

原爆に関わった科学者の話は、
「コペンハーゲン」とか海外には有名な戯曲がありますが、
日本ではあまり取り上げられないテーマではないかと思います。
通常演劇作品は文系の方が執筆されるので、
科学者の内面に踏み入るのは、
結構難しい作業なのではないかと思います。
井上ひさしさんにも、そうした作品はないですよね。

その問題に真っ向から取り組んだという意味で、
「東京原子核クラブ」は非常に画期的な作品であると思いますし、
評価されるのも納得、という感じの作品ではあります。

ただ、
理系の端くれの意見としては、
あまり主人公達に理系の研究者という感じはしないですね。
新劇青年やピアノ弾き、レビューの踊り子などが登場しますが、
そちらの描写はリアルである一方で、
科学者同士の会話はあまりリアルには感じません。

天才科学者の心理や倫理観というのは、
多分もっと別種のものですよね。
ラスト近くで戦争に関わった責任について、
絶叫的に懺悔する場面があるのですが、
ちょっとそれは違うのじゃないかな、
と少し醒めた感じで観てしまいました。

上演時間は休憩15分を入れて2時間50分。
前半は人物紹介から始まって、
東大野球部の偽部員の話がメインになるので、
ちょっと長いな、という感じがします。
後半は戦時中の話になって本筋になるので、
こちらは力感もあって集中して観ることが出来ます。
ベースの雰囲気は井上ひさしさんの「闇に咲く花」に近いですし、
野球を絡める辺りは影響もあると思うのですが、
ラスト、シリアスな場面の後で、
コミカルに振って終わりにするでしょ。
これはちょっとどうかな、というように感じました。
この重いテーマでラストにコミカルなオチを付けるのは、
計算違いであると個人的には思います。

キャストは皆さん熱演でしたが、
主人公が矢張りとても科学者には見えないんですよね。
これは役者さんにも責任はありますが、
戯曲自体がそう書けていない、と言う点が、
一番の問題であるように感じました。

そんな訳で生で観ることが出来て良かった、
と感じられた名作でしたが、
内容的には全面的に納得、
というようには思いませんでした。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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