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SGLT2阻害剤とGLP-1アナログの有効性と安全性(2021年ネットワークメタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
SGLT2GLP1の比較.jpg
British Medical Journal誌に、
2021年1月13日ウェブ掲載された、
現在最も評価の高い2型糖尿病治療薬である、
SGLT2阻害剤とGLP-1アナログの両者の有効性とリスクとを比較した、
システマティックレビューとネットワークメタ解析の論文です。

2型糖尿病の治療薬として、
近年その評価が急上昇しているのが、
尿へのブドウ糖の排泄を増加させる作用を持つ、
SGLT2阻害剤と、
従来のSU剤とは別のメカニズムでインスリン分泌を刺激する、
インクレチン関連薬の注射薬、GLP-1アナログの2種類です。

いずれの薬剤も、
血糖を低下させる作用に加えて、
患者さんの生命予後を改善し、
心血管疾患や慢性腎臓病のリスクも低下させる、
という効果が臨床試験で報告されています。

ただ、そのどちらがより優れているのか、
という点や、
どのような違いがあるのか、
というような点については、
あまり明確なことが分かっていません。

今回の研究では、
SGLT2阻害剤とGLP-1アナログに関わる、
精度の高い臨床試験のデータをまとめて解析することで、
両者の比較を行っています。

これまでの764の主だった臨床試験のデータに含まれる、
トータルで421346名の患者データをまとめて解析した結果、
従来の治療にSGLT2阻害剤もしくはGLP-1アナログを追加したところ、
いずれも患者の総死亡リスク、心血管疾患による死亡リスク、
非致死性心筋梗塞と腎不全の発症リスクを、
有意に低下させていました。
これはかなり信頼度の高い結果です。

両者の違いとしては、
SGLT2阻害剤はGLP-1アナログよりも、
心不全による入院と死亡リスクはより低下させる効果があり、
逆にSGLT2阻害剤は脳卒中のリスクは有意に低下させないのに比較して、
GLP-1アナログは非致死性脳卒中のリスクを有意に低下させています。

副作用や有害事象としては、
SGLT2阻害剤が外陰部の感染症のリスクを増加させる一方、
GLP-1アナログは重度の胃腸症状の原因となることが報告されています。

SGLT2阻害剤とGLP-1アナログのいずれも、
下肢切断や失明、眼疾患や神経痛など、
糖尿病の合併症に伴う重度の障害のリスクを、
明確に低下はさせていませんでした

このようにSGLT2阻害剤とGLP-1アナログのいずれの薬剤も、
糖尿病の患者さんの生命予後を改善し、
心血管疾患や腎臓病のリスクを低下させる、
という知見では一致しています。
ただ、神経障害や網膜症などの合併症の進行については、
必ずしもその予後を改善するというデータはなく、
心不全についてはSGLT2アナログが、
脳卒中についてはGLP-1アナログが、
より予後改善に有効な可能性が高い、
という結果になっています。

今後こうしたデータも元にして、
患者さんの心血管疾患のリスクなどの病態に合わせた、
SGLT2阻害剤やGLP-1アナログの、
より科学的で患者さんにとって有益な、
個別治療の実現に期待をしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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