「初恋」(三池崇史監督) [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。
土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
三池崇史監督の新作「初恋」が、
今ロードショー公開されています。
三池監督というと、
日本映画が元気だった頃の、
プログラムピクチャーの熱気を、
再現してくれるような熱のある作品がある一方、
「金返せ!」と絶叫したくなるような、
絶望的な大作映画や話題作を、
多く演出している監督でもあります。
従って、蓋を開けてみるまで分からないのが、
三池監督の映画なのですが、
今回はかなり会心作ではないかしら、
徹底してプログラムピクチャーの極意を披露していて、
石井輝夫監督の黄金時代に匹敵するような、
異様でデタラメで暴力的で下品でエロチックな、
猥雑な魅力が満載の素敵な映画でした。
役者がまた良かったですよ。
身体を作り込んだ、
ボクサーの窪田正孝もそれらしいオーラがあり、
ベッキー凄かったよね。
ヤケクソすれすれの体当たりの演技には涙が出ました。
ベッキーは何処に行くつもりなのかしら。
好きなタレントではありませんでしたが、
ここまでされたら応援しないではいられません。
偉そうで薄っぺらな芝居をする「演技派女優」に、
爪の垢でも飲ませてやりたいくらい。
染谷将太さんの国宝級のゲスな小物芝居も素晴らしく、
1970年代にタイムスリップしてもらって、
小池朝雄や金子信雄とゲス対決をしてもらいたいくらい。
風格あるヤクザの内野聖陽さんも抜群の安定感で惚れ惚れしますし、
脇にも大森南朋さん、村上淳さん、塩見三省さんと、
これはもう鉄壁の布陣です。
ちょっと石川さゆりみたいな、
チャイニーズマフィアの藤岡麻美さんも良かったですね。
台本も演出もなかなかいいんですよ。
ちょっと主人公があまり活躍しないな、
と言う感じはあるのですが、
群像劇としては人物の絡ませ方も上手くて、
とても充実していますよね。
最初からテンションが高いと、
観ている方もだんだん疲れて来て、
中だるみするのがこうした映画の常なのですが、
染谷将太さんの姑息で何処か間抜けな企みを中心において、
それがどんどん見当違いの方向にずれてゆく、
というシンプルな物語に、
房に付いたブドウのように、
個性的な登場人物の個々の物語を絡め、
それをホームセンターでの深夜の大乱闘に、
収斂させてゆく手際が鮮やかです。
オープニングで、
ヒロインの登場は目のアップからでしょ。
それも貞子みたいな妙なアップ。
意表を突きますよね。
それから汚物の散乱した部屋の中で、
半裸でうごめくようなヒロインの姿に、
タイトルの「初恋」が重なるというセンス。
「ああ、70年代だ」という感じがとても素敵です。
ヒロインがシャブ中で、
かつて犯された父親の妄想を見るのですね。
白いシーツが不気味に盛り上がって、
人間の形になるところ、
シュールでいいですよね。
これ元ネタは大和屋竺ですね、多分。
そのお父さんが山中アラタさんで、
彼女が妄想を見ながら沖縄民謡を聴くと、
それに合わせて踊りだすのです。
このデタラメで滑稽で無残なセンス。
とても良いです。
それ以外にもイチイチ書いていても切りがないのですが、
内野聖陽さんにかつて日本刀で片腕を切り落とされた、
チャイニーズマフィアの暴れん坊が、
内野さんの片腕を切り落とそうと、
青龍刀を持って勝負するとか、
何かワクワクするでしょ。
そして矢張りベッキーですね。
この映画の彼女の存在こそ、
かつての東映プログラムピクチャーそのものです。
ラストも綺麗に終わるでしょ。
きちんとシャブ中からの更生も描いて、
前半の台詞で登場する高倉健を伏線に、
雪の遠景で締め括る辺りにも、
作り手のセンスを感じました。
そんな訳で多分これまで観た中では、
最も好きな三池崇史映画で、
「スキヤキ・ウェスタン・ジャンゴ」も良かったですが、
少しくどくて長かったですし、
その点この作品は締まるところは綺麗に締まって完成度が高く、
三池崇史監督でなければなし得ぬ世界で、
とても素敵な時間を過ごすことが出来ました。
監督素敵な映画をありがとうございます。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。
土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
三池崇史監督の新作「初恋」が、
今ロードショー公開されています。
三池監督というと、
日本映画が元気だった頃の、
プログラムピクチャーの熱気を、
再現してくれるような熱のある作品がある一方、
「金返せ!」と絶叫したくなるような、
絶望的な大作映画や話題作を、
多く演出している監督でもあります。
従って、蓋を開けてみるまで分からないのが、
三池監督の映画なのですが、
今回はかなり会心作ではないかしら、
徹底してプログラムピクチャーの極意を披露していて、
石井輝夫監督の黄金時代に匹敵するような、
異様でデタラメで暴力的で下品でエロチックな、
猥雑な魅力が満載の素敵な映画でした。
役者がまた良かったですよ。
身体を作り込んだ、
ボクサーの窪田正孝もそれらしいオーラがあり、
ベッキー凄かったよね。
ヤケクソすれすれの体当たりの演技には涙が出ました。
ベッキーは何処に行くつもりなのかしら。
好きなタレントではありませんでしたが、
ここまでされたら応援しないではいられません。
偉そうで薄っぺらな芝居をする「演技派女優」に、
爪の垢でも飲ませてやりたいくらい。
染谷将太さんの国宝級のゲスな小物芝居も素晴らしく、
1970年代にタイムスリップしてもらって、
小池朝雄や金子信雄とゲス対決をしてもらいたいくらい。
風格あるヤクザの内野聖陽さんも抜群の安定感で惚れ惚れしますし、
脇にも大森南朋さん、村上淳さん、塩見三省さんと、
これはもう鉄壁の布陣です。
ちょっと石川さゆりみたいな、
チャイニーズマフィアの藤岡麻美さんも良かったですね。
台本も演出もなかなかいいんですよ。
ちょっと主人公があまり活躍しないな、
と言う感じはあるのですが、
群像劇としては人物の絡ませ方も上手くて、
とても充実していますよね。
最初からテンションが高いと、
観ている方もだんだん疲れて来て、
中だるみするのがこうした映画の常なのですが、
染谷将太さんの姑息で何処か間抜けな企みを中心において、
それがどんどん見当違いの方向にずれてゆく、
というシンプルな物語に、
房に付いたブドウのように、
個性的な登場人物の個々の物語を絡め、
それをホームセンターでの深夜の大乱闘に、
収斂させてゆく手際が鮮やかです。
オープニングで、
ヒロインの登場は目のアップからでしょ。
それも貞子みたいな妙なアップ。
意表を突きますよね。
それから汚物の散乱した部屋の中で、
半裸でうごめくようなヒロインの姿に、
タイトルの「初恋」が重なるというセンス。
「ああ、70年代だ」という感じがとても素敵です。
ヒロインがシャブ中で、
かつて犯された父親の妄想を見るのですね。
白いシーツが不気味に盛り上がって、
人間の形になるところ、
シュールでいいですよね。
これ元ネタは大和屋竺ですね、多分。
そのお父さんが山中アラタさんで、
彼女が妄想を見ながら沖縄民謡を聴くと、
それに合わせて踊りだすのです。
このデタラメで滑稽で無残なセンス。
とても良いです。
それ以外にもイチイチ書いていても切りがないのですが、
内野聖陽さんにかつて日本刀で片腕を切り落とされた、
チャイニーズマフィアの暴れん坊が、
内野さんの片腕を切り落とそうと、
青龍刀を持って勝負するとか、
何かワクワクするでしょ。
そして矢張りベッキーですね。
この映画の彼女の存在こそ、
かつての東映プログラムピクチャーそのものです。
ラストも綺麗に終わるでしょ。
きちんとシャブ中からの更生も描いて、
前半の台詞で登場する高倉健を伏線に、
雪の遠景で締め括る辺りにも、
作り手のセンスを感じました。
そんな訳で多分これまで観た中では、
最も好きな三池崇史映画で、
「スキヤキ・ウェスタン・ジャンゴ」も良かったですが、
少しくどくて長かったですし、
その点この作品は締まるところは綺麗に締まって完成度が高く、
三池崇史監督でなければなし得ぬ世界で、
とても素敵な時間を過ごすことが出来ました。
監督素敵な映画をありがとうございます。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2020-03-14 06:02
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コメント(1)
あ,コレ絶対観ます。
by midori (2020-03-14 23:11)