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極私的新型コロナウイルス感染症の現在(2020年1月14日) [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はいつもの感染症情報です。

2020年12月は104例の新型コロナウイルスの遺伝子検査を行い、
陽性者は25名でした。
ほぼ4人に1人が陽性という頻度です。

無症状感染者や味覚嗅覚障害のみと言った、
軽症者が多いのですが、
少数ですが高熱が続いていたり、
強い全身倦怠感や息苦しさを訴える事例もありました。
ただ、入院や宿泊療養となったのは5例のみで、
それも月の前半に集中していました。
月の後半についてはその全てが最初から自宅療養か、
受け入れ先のない自宅待機のまま、
回復まで結果的にそのまま自宅で過ごした、
というケースでした。

70代の男性で癌の治療中という方がいて、
発熱と全身倦怠感で発症。
感染者との接触は不明でしたが、
お店をしているということもあり、
職場や商店街などでの人間関係の中で感染したと推測されました。
現状肺炎や低酸素血症を疑わせるような所見はないのですが、
明らかに高リスクではありますよね。
12月の前半までなら入院か、
少なくとも宿泊療養にはなった事例なのですが、
高リスクで届け出をしたのですが都の審査では却下となり、
高齢の妻との2人暮らしで自宅療養となってしまいました。

届けを出してから6日後に保健所から依頼があって、
胸部レントゲンの撮影依頼であったので、
自宅待機の患者さんに、
他の患者さんがいない時間帯(休憩時間中)に受診をして頂いて、
胸部レントゲンを撮影して、
その後消毒に掛かりました。
レントゲン上は異常はありませんでした。

保健所の方にお聞きすると、
12月の初旬までは症状があって高リスクであれば、
入院治療の適応として問題はなかったのですが、
12月中旬以降は病床の不足が深刻化しているので、
「重症であることが客観的な指標により確認」されないと、
入院適応ではない、という判断になっているようです。

宿泊療養については慢性的に空きがない状態ですから、
結果として明らかな重症、という以外の方は、
殆どの方が実際には家で経過をみている、
というのが実際なのです。

現状一番の問題は、
軽症の方であっても、
発症1週間くらいの時点で呼吸困難を来すなど、
重症化するケースがあることで、
パルスオキシメーターを郵送して、
自宅でその数値をチェックして報告する、
というような対応は行われてはいるものの、
1日に1から2回程度の保健所からの電話連絡だけで、
その重症化の兆候をいち早く発見する、
というのは事実上不可能です。

少し前までは、
症状が悪化時にはすぐに病院受診、
という流れがあったのですが、
現状は病院は手一杯で即日の入院は困難、
という状況があるので、
「重症かどうかも分からないのに、
本人の症状だけで来られては困る」
という意識が強く、
簡単に受診することは難しいのです。

更には病院受診には専用の車を用意しなければならず、
そちらの手配もすくには困難、
という事情もあります。

現状自宅療養をバックアップする仕組みがない以上、
僕のようなクリニックの医者が、
そのサポートをするしかないと、
最近は考えるようになっています。

そのために、
少し前まではクリニックの仕事は、
患者さんを診断して保健所に連絡する、
という時点でほぼ終わり、という認識であったのですが、
現在では必ず検査陽性を伝える時には、
「何かあればクリニックに連絡して下さい」
とお話するようにしています。

保健所からも検査の依頼と共に、
自宅療養中の患者の症状悪化時に、
「レントゲンを撮って肺炎の有無を確認して欲しい」
という依頼が多くなっています。

ただ、検査であれば導線を完全にわけて、
通常の診療と同時に施行することも可能ですが、
レントゲンは新型コロナの患者さん専用にする、
という訳には行きませんから、
診療終了後などにするしかありません。
その後の除菌消毒もしなくてはいけませんし、
小規模のクリニックにとってはかなりハードルが高いのです。

本来はレントゲンで分かる肺炎は結構進行した状態であることが多く、
新型コロナの肺炎の初期像は、
CTでないと確認は困難です。

今後こうした状態が続くのであれば、
日本は小規模の病院レベルでも、
CTの普及率は非常に高く、
クリニックでも健診主体の施設や科によっては、
CTが常備されていますから、
そうした市囲のCTを、
適宜活用出来るような体制作りも必要なのではないかと思います。

個人的な見解としては、
現状の感染拡大は自宅療養の急速な拡大に伴う、
家族内や施設内の二次感染による部分が大きく、
本来は自宅療養での感染対策のサポート体制や、
宿泊療養施設の拡充が、
入院施設の確保と同じくらい重要であった訳ですが、
それがなされないまま感染拡大に至ってしまった現在では、
僕達のような医療機関がその下支えをして、
効果的な施策により感染自体の押さえ込みが、
どうにか成功するまでを、
耐え抜くしかないような気がします。

粘り強く、
今出来ることを探して、
少しでも感染収束に繋げられれば、
それ以上はないという気持ちで、
日々の診療に当たりたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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