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極私的新型コロナウイルス感染症の現在(2020年12月31日) [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は大晦日でクリニックは休診です。

今年の締めはどうしようかと考えましたが、
矢張り新型コロナウイルス感染症の話で、
終わることにしました。

通常診療最終日の12月28日は、
15名のRT-PCR検査を施行しました。
結果は12月29日の夕方までに出る筈でしたが、
例によって遅れてしまい、
午後6時になってもファックスが届きません。
業界大手の検査会社に連絡すると、
「6時半くらいには検査が終わる予定です」
という返事だったので、
7時まで待っていましたが、
うんともすんとも、
ファックスの届く気配はありません。
その間にも、心配をされた患者さんからの電話が、
ひっきりなしに掛かって来ます。
それで再度問い合わせをすると、
「結果は出ているが、ファックスの送信に時間が掛かっている」
と言うので、
「どのくらい掛かりますか?」
と聞くと、
「1時間半以内には」
と言われたので、
呆然としました。

このところ、
翌日の3時半くらいには結果が来ることが多かったので、
少し安心して油断していたのですが、
そう甘くはなかったようです。

結局午後8時半にファックスが来て、
それから1人ずつ15名に電話で結果を説明して、
陽性であった5名については保健所に連絡をしました。
届出はプライバシーに配慮したものをファックスして、
それから担当者から電話を受けて,
その時に詳細を説明する、
という仕組みです。

そうした段取りがすべて終わったのは、
午後10 時半を廻っていました。

12月29日はクリニック自体は休診でしたが、
午後から都の要請による発熱外来を開きました。
通常の診療ではなく、
保健所や医師会からの依頼による、
発熱や新型コロナ疑いの患者さんのみ、
時間を決めて受け付けるというものです。
一般の患者さんと時間を分けて診療できるので、
効率的ではあるのですが、
毎日これをしていれば、
こちらが過労で死にます。
まあ、ギリギリのところです。

ただ、この日は近隣でも診療をしている医療機関が多く、
4人の診療とRT-PCR検査をしただけでした。
結果的には、これならやらなくても良かったかしら、
という感じでした。
医療リソースの効率的な運用というのは、
実際にはなかなか難しいものであるようです。
それでも12月30日の夜には、
検査結果を説明しないといけないので、
クリニックでその対応に当たりました。
4人のうち1名は陽性でした。
このところは、全員陰性という日はありません。

現状の大きな問題は、
医療リソースがもうギリギリのところで、
僕のような初期診療と検査をするクリニックと、
届け出を受け付けて入院などの割り振りと経過観察、
連絡などの業務を一手に引き受けている保健所、
入院患者を受け付ける病院の間の連携に綻びが出て、
互いに疲弊して不満もたまっているということです。

保健所の担当者の方から先日お聞きしたところでは、
最近入院患者を受け入れている病院からは、
本来入院の適応ではない軽症者ばかりが、
入院してしまい、
貴重なベッドが適切に運用されていない、
という怒りの声がしきりに上がっている、
ということでした。

これはね、たとえば殆ど検査のみをしているクリニックがあるでしょ。
もともと検査も郵送で唾液を送るだけで、
陽性になってもウェブ診察だけをして、
これはもう実際には診察というものではなく、
ただ、保健所に届け出をするために、
ちょっと話を聞くというだけなんですね。
保健所は電話で話を聞くだけですから、
結局誰もその患者の診察をしていないし、
客観的な情報も持っていない、
ということになるのですが、
それでもその患者さんの入院や宿泊療養の振り分けを、
保健所が電話のみでしないといけない、
というのが非常な問題で、
冷静に考えれば、そんなの無理なんですよね。

実際にそれで起こっていることは何かと言えば、
軽症で何の問題もない患者さんが、
テレビで急死した代議士のニュースなどを見て、
「こりゃ入院させてもらわないと大変だ」
というように思うんですね。
そう思えば胸も苦しいような気分になるでしょ。
それで保健所の電話に、
「胸が苦しくなって来た。早く入院させてくれ!」
と騒げば、入院にするしかないですよね。
それで送迎車を用意して入院となると、
本人は何の症状もなくケロッとしている、
ということが沢山起こっているのです。

これはね、簡単に解決出来る問題ではないんですね。

今年の春ぐらいの時には、
入院を受け持つ病院が、
患者さんの初期診療と振り分けも引き受けていたので、
疑いのある患者さんをクリニックから紹介するでしょ、
受診するとすぐにRT-PCR検査も胸部CTも採血も、
もうすぐにセットでやるんですね。
やや過剰検査と思われなくもありませんが、
それである程度患者さんの状態は判断出来るので、
最初期は陽性であればすべて入院ですし、
その後は入院か宿泊療養の2択ですよね。
とてもクリアなんですよ。

ただ、それがもう今は駄目なんですね。
入院は重症化しているか、
そのリスクの高い患者さんのみにしないと、
貴重な入院ベッドがすぐに枯渇するでしょ。
多くの患者さんでその選別を、
ほぼ電話の聞き取りだけでしないといけない、
というのが現状なんですね。

医療に対して悪意のある一般の方は、
「すべてのクリニックで患者を診れば、
それで解決じゃないか、医者がもっと働けばいいんだ!」
みたいなことを悪し様に言いますよね。
これはものが感染症でなければそれで済むんですよ。
でも敵は感染症なんですよ。
それも院内感染などすると、
簡単に100人規模のクラスターになるでしょ。
そう簡単じゃないんですよ。

医療体制を今のままで持続するためには、
トータルな医療リソースの中で、
ある程度低い比率で感染症を診るのでないと、
これはもう成立しないんですね。

成立させるためには、
割り切って軽症の患者の振り分けをするための、
大規模な医療施設を造らないと駄目ですよ。
つまり、今の体制を抜本的に変えないと無理なんですよ。
そんなことはそう簡単に出来ないでしょ。
今の体制のまま継続するには、
感染者の数を物理的にもっと抑え込まないと無理なんですよ。
それがまあロックダウンのような思想で、
そうするか医療提供体制を抜本的に変えるかの二択が、
今決断を迫られている、というのが現状なのだと思います。

すいません。
ちょっと話の論理が乱れ気味になりました。
この問題はまたもう少し整理して、
記事にしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い大晦日をお過ごし下さい。

来年は良い年でありたいですね。

今年1年お読み頂きありがとうございました。
来年もよろしくお願いします。

石原がお送りしました。
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「私をくいとめて」(2020年映画版) [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は年末でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
私をくいとめて.jpg
2017年末に「勝手にふるえてろ」
という松岡茉優さん主演の映画があって、
その年私的ベストワンの傑作でした。

原作は綿矢りささんで、
その年に新聞連載していた小説が、
この「私をくいとめて」の原作です。
多分その時点で映画化が決定していたのだと思いますが、
同じ大九明子さんの脚本・監督で、
再び心震える力作が誕生しました。

主人公はのんさん演じる31歳のOLで、
「おひとりさま」として自分の世界を守ることに必死で、
常に脳内の「A」と会話をしているのですが、
林遣都さん演じるちょっと冴えない会社員に恋をして、
「おひとりさま」である自分にさよならを告げるまでの物語です。

基本ラインは「勝手にふるえてろ」とほぼほぼ一緒です。

ただ、2人の男性の間で、
妄想しながら揺れ動く前作に対して、
今回の作品では最初から男性は林遣都さん1人で、
その代わりに同じ「おひとりさま」の同士であった、
高橋愛さん演じるイタリア人と結婚した女性が登場して、
妄想自体も人格を持って登場します。

前作も同様ですが、
最初は作為的な部分が鼻につく感じがあるのですが、
中段からグイグイと演出が主人公の心理を掘り下げ、
それに応えたのんさんの芝居もとても真に迫っているので、
作為を超えて引込まれ、
後半は前のめりになるようにして観てしまいました。

ただ、前作とどちらが好きかと聞かれれば、
矢張り「勝手にふるえてろ」の方が、
凝集力は強かったと思います。

133分というのはちょっと長いですよね。
中段のイタリアの部分がちょっと浮いた感じになっていて、
その前に「おひとりさま」の温泉旅行で、
吉住さんの1人コントを観るところがあるでしょ。
あの部分がとても素晴らしいので、
結局それと同じことを、
イタリアでもう一度繰り返すことになるのが微妙でしたね。
それと「A」という妄想との対話というのが、
ちょっと設定として凡庸ですよね。
これは勿論原作通りなのですが、
前作の妄想をミュージカル化した愉しさと比較すると、
どうしてもメンヘラ的な暗さが前に出るので、
話が重くなるのですね。
それでいて、過去のトラウマや、
家族関係などには全く切り込んでいないので、
その点が中途半端には感じました。

演出は矢張り冴えてますよね。
何度かのんさんにアップで長回しで語らせるでしょ。
普通の撮り方ではその部分が作為的でくどくなるので、
そのために敢えて全体を人工的に構成しているんですね。
手や足のアップとか、どきりとしますね。
視点の切り替えが巧みで、
それが画面にリズムを与えているので、
観ていて心地良いのですね。
主人公の2人の食事の場面とか、
たまらなく素敵ですね。
これは監督の腕だと思います。

そんな訳で「勝手にふるえてろ」再び、
という感じの1本で、
個人的には前作の方が好きですが、
今回の作品も余り類例のない、
傑出した日本映画であることは確かで、
是非多くの方に観て頂きたい傑作です。

お勧めですよ。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い年末をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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タニノクロウ秘密クラブ「MARZO VR」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日はクリニックは休診ですが、
午後は発熱外来を担当する予定です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
MARZO.jpg
12月22日から27日まで、
北千住のBUoYというカフェの一部で、
庭劇団ペニノのタニノクロウさんによる、
番外公演的な公演が行われました。

これは専用に製作された30分ほどの映像作品を、
VRゴーグルとヘッドホンを装着して体感する、
というものです。

内容は以前上演された「アンダーグラウンド」という、
外科手術をエンターティンメント化したようなお芝居を、
そのベースにしていて、
看護師の扮装をしたスタッフに、
病室めいた場所に案内されて、
横になってゴーグルを装着すると、
映像は病室で自分が患者として寝かされている、
という状態から物語がスタートする、
という趣向になっています。

最初は普通に血圧チェックなどをされているのですが、
そのうちにエロチックな看護師に、
誘惑されるようなパートがあり、
その後豹変した看護師に身体の自由を奪われると、
生きながら解剖されてバラバラにされてしまうのです。

これは相当ビックリしました。

さすがタニノクロウさんは頭のイカれた変態です。
(半分は呆れつつ、半分は感心しているという表現です)

勿論偽物であることは分かっているのですが、
映像で見せられている肉体が、
次第に自分の肉体と同一視されてしまうので、
そこにメスを入れられたりすると、
矢張り「うわっ!」という気分になります。

意図的に解体される肉体は、
偽物の人形のようにしか見えないので、
それでかろうじて耐えられましたが、
これでもっとリアルな人体が映っていたら、
リタイアしてしまったかも知れません。

VRに向いたテーマはエロとホラーだから、
それを臆面もなく複合してやった、
ということのようですが、
このある意味悪趣味の極地のような即物的な世界を、
綿密に作り込んで真面目に成立させてしまうという辺りが、
タニノクロウさんの変態たる所以なのだと思います。
(半分呆れつつ半分は褒めています)

3月に「縛られたプロメテウス」というVR演劇作品を観たのですが、
もっと藝術性のある作品でしたが、
VRの画像はかなり稚拙で没入感は乏しいものでした。
それに比べると今回のものは極めてリアルで、
その現実との融合は、
演劇と映像のコラボの、
新たな可能性を感じさせるものでした。

ただ、観客には女性もいましたが、
映像は明らかに男性目線で作られているので、
この点は幾つかのヴァージョンを用意するなど、
改良の余地があるようには感じました。

このジャンルが今後どのように進歩するのかは分かりませんが、
間違いなく小劇場演劇という領域においては、
1つの大きな潮流になるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い年末をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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新型コロナウイルス感染症と季節性インフルエンザの予後比較(アメリカの疫学研究) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

明日12月29日より1月4日までクリニックは年末年始の休診になります。

実際は都の依頼で12月29日と1月3日は、
発熱外来として開けることにはなっています。
ただ、基本的には保健所などからの指示による診療で、
通常の患者さんはお受けしていません。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
インフルエンザと新型コロナの比較.jpg
British Medical Journal誌に、
2020年12月15日にウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症と季節性インフルエンザ入院事例を、
比較検証した論文です。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が、
東京でも猛威を振るっています。

感染拡大は深刻な問題ですが、
その一方で通常の生活をしている多くの人にとっては、
「新型コロナって、そこまで大騒ぎするほどのものなの?」
というような意見もあります。

特にその第1波と呼ばれる流行初期の時期には、
「普通のインフルエンザだって、重症化して死んでいる人はいる。
新型コロナも重症化するのは一部の人だけだし、
インフルエンザと変わらないんじゃないの?」
というような意見も結構聞かれました。

実際はどうなのでしょうか?

今回の研究はアメリカにおいて、
高齢者の医療保険のデータを活用して、
2020年2月1日から6月17日までに、
新型コロナウイルス感染症で入院した3641名を、
2017年から2019年に季節性インフルエンザで入院した12676名と、
比較検証しているものです。

その結果、
新型コロナウイルス感染症で入院した患者さんは、
季節性インフルエンザで入院した患者さんと比較して、
入院中の腎障害のリスクが1.52倍(95%CI:1.37から1.69)、
透析使用のリスクが4.11倍(95%CI:3.13から5.40)、
インスリン使用のリスクが1.86倍(95%CI:1.62から2.14)、
重度敗血症のリスクが4.04倍(95%CI:3.38から4.83)、
昇圧剤使用のリスクが3.95倍(95%CI:3.46から4.51)、
肺塞栓症のリスクが1.50倍(95%CI:1.18から1.90)、
深部静脈血栓症のリスクが1.50倍(95%CI:1.20 から1.88)、
脳卒中のリスクが1.62倍(95%CI: 1.17から2.24)、
急性心筋炎のリスクが7.82倍(95%CI:3.53から17.36)、
不整脈による突然死のリスクが1.76倍(95%CI: 1.40から2.20)、
心筋障害の指標であるトロポニン上昇リスクが1.75倍(95%CI: 1.50から2.05)、
肝障害のリスクが3.16倍(95%CI: 2.43から2.88)、
横紋筋融解症のリスクが1.84倍(95%CI: 1.54から2.18)、
それぞれ有意に増加していました。

要するにインフルエンザの入院と比較して、
重篤な合併症のリスクは新型コロナウイルス感染症では、
有意に高いことが分かります。

そして、
総死亡のリスクも4.97倍(95%CI: 4.42 から5.58)、
人工呼吸器装着のリスクも4.01倍(95%CI: 3.53から4.54)、
集中治療室入室のリスクも2.41倍(95%CI: 2.25 から2.59)、
新型コロナウイルス感染症の入院において高くなっていました。

入院患者100人当たり、
インフルエンザと比較して新型コロナウイルス感染症の入院では、
16.85名(95%CI: 14.85 から18.99)死亡が多く発生する、
というように推計されています。
この死亡数の差は、
年齢が75歳を超え心血管疾患や慢性腎臓病、
認知症があるとより大きくなり、
人種では白人種より黒人種で大きくなっていました。

このように、
季節性インフルエンザでの入院と比較して、
新型コロナウイルス感染症での入院では、
合併症も生命予後も明確な差があり、
今後この感染症も特別視はされなくなるでしょうが、
その予後に差があること自体は、
間違いない事実であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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シベリア少女鉄道「メモリーXメモリー」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
メモリー×メモリー.jpg
先日までシベリア少女鉄道の新作公演が、
青山の草月ホールで上演されました。

ちょっと寺山修司の天井桟敷を思わせるような、
演劇の枠組みを超えて大胆な仕掛けのある作品作りと、
徹底したオタク趣味で異色の存在でしたが、
初期はかなり「演劇」の部分が稚拙で、
後半の仕掛けが始まるまでが、
もたない、という感じもありました。

休止期間を経て復活してからは、
主宰の土屋さんがアイドルの舞台を手がけるなど、
メジャーな仕事もするようになっって、
作品にプロの視点が加わり、
客演した俳優さんが定着するようになると、
「演劇」としてのレベルが格段に高くなり、
仕掛け前の部分も立派に演劇として鑑賞可能になって、
作品のトータルな質も格段に高くなりました。

ただ、最近の作品はほぼ全てが、
「演劇を成立させようとする力と壊そうとする力との戦い」
というテーマの繰り返しになり、
その枠組み自体を否定したり、
根底から改変するような部分は、
殆どなくなるようになりました。

再演もされた代表作の1つ、
「遙か遠く同じ空の下で君に送る声援」の、
恋愛物語がレースになる部分の衝撃、
「残酷な神が支配する」でのアントニオ猪木の登場の異常さ、
舞台が高速回転して世界が終わってしまうという虚無感、
「永遠かも知れない」での永遠という哲学的テーゼを、
終わらない漫才で成立させようという力技、
こうしたかつての世界が崩壊するときの衝撃のようなものは、
今の「シベリア少女鉄道」にはありません。

それが昔からのファンにとっては、
物足りない部分ではあります。

今回の作品に関しては、
演劇を支配しようとする役者同士の戦いの中、
後半で「観客」という存在が乱入し、
それを超えた存在として、
最後に「アイドル」が降臨する、
という部分に土屋イズムの真価を見た、
という感じはありました。

ただ、若干残念なのは、
最後に降臨するアイドルに、
有無を言わさぬ説得力がなかったことで、
ここは演出も全力を集中させて、
もっと力技を成立させて欲しかったと感じました。

そんな訳で僕の希望とは、
少しずれた進化をしている「シベ少」ですが、
それでも大好きな劇団であることには変わりなく、
今後も上演が続く限り足を運びたいと思っています。

頑張って下さい!

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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極私的新型コロナウイルス感染症の現在(2020年12月26日) [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも須田医師が外来を担当する予定です。

それでは今日の話題です。

今日はいつもの身辺雑記的話題です。

東京での新型コロナウイルス感染症の拡大が止まりません。

昨日はクリニックは休診でしたが、
一昨日のRT-PCR検査の結果が、
今どきどうして…という感じですが、
ファックスで送られて来るので、
それを確認して、
患者さんに連絡を入れ、
それから陽性者については保健所に届け出をしました。

品川区の保健所は、
30名の担当者が24時間体制で動いていて、
夜間帯も15名の職員が対応に当たっています。

聞き取りをしていても、
「何の権利があってお前はそんなことを言うんだ!」
みたいな人がいるでしょ。
本当に大変だと思います。

1昨日の検査は3分の2が陽性でした。

こんな感じの陽性率が連日続いていますから、
これはもう治まる訳がないですね。

目立っているのは矢張り家庭内感染と職場での感染で、
職場から家族へ、というルートが、
感染急拡大の1つの典型になっている、
という気がします。

職場での感染は、
今はもう本当に「何処で感染したか分からない」
というようなケースが多いのが特徴です。
デスクワークでマスクは常時していて会話はしていて、
原則複数で食事はしていない、
というような状況でも実際に感染は拡大しています。
それが家庭に流入して、
2倍、3倍にすぐなってしまう、という構図です。

尾身先生は家庭内感染より、
会食での感染を重視されていて、
いつも気を緩めずに会食を避けて、
と言われているのですが、
勿論その趣旨は理解しているつもりですし、
正しいとは思う一方で、
現場の皮膚感覚としては、
最近は会食などしていない人に、
感染が広がっているという事例を多く経験しているので、
実体は少し違っているのではないか、
という思いもしています。

会食による感染の予防も重要な一方で、
家庭内感染の抑止も、
矢張り重要な要素ではないでしょうか?

会食を止めよう、飲食店の営業時間を制限しよう、
という方向での対策は、呼びかけも含めて行われていますが、
家庭内感染の抑止という面では、
分かりやすいメッセージは発せられておらず、
対策も取られていない、という気がするからです。

現状家庭内感染が増えている原因には、
家族で感染者が出た場合に、
本来は宿泊療養や入院の適応であるのに、
空きがないので自宅療養になってしまっている、
というケースが多いという点が大きいと思います。

この1週間だけでも5例くらいそうしたケースを経験しています。

もう軽症者は自宅療養、という方針に切り替えるのではあれば、
そこに手厚く人員や予算を配分し、
自宅療養中の感染拡大を防ぐ対策が、
もっと積極的に行われる必要があるのではないでしょうか?

日本でのしっかりしたデータがないので、
推測にしか過ぎないのですが、
先日ご紹介した家庭内感染のメタ解析の数値より、
日本の今の家族内感染率は遥かに高いように、
現場での感覚としては思うからです。

それからここ数日目立っているのが、
某新橋辺りにあるPCRセンターと称する場所からの、
陽性事例の再検依頼です。

これは市町村毎の方針があるのだと思いますが、
現状品川区においては、
PCRセンターなどで受けた自費検査で、
陽性もしくはその疑いという結果が出て、
その本人から保健所に問い合わせがあった場合、
医療機関での再検査は公費を使用して問題ない、
行政検査として問題ない、
という方針になっています。

つまり、COCOAでの陽性と同じ扱いということです。

ただ、あの検査センターと称するところはですね、
結果も「陽性」という記述ではなくて、
「感染の疑いがあるので、医療機関を受診してください」
というような文言になっているのですね。
それで、かかりつけ医がいれば、
それで相談をして下さい、
全くないという場合にはこちらでも斡旋をすることがあります、
というような対応であるようです。
こちらへはね、
紹介状の1通も、検査データの報告も、
何もないのですね。

やりっぱなしで自己責任というのは、
それはちょっとあまりに無責任で酷いのじゃないかしら。

これね、無症状であることが前提の検査でしょ。
要するに無症状の一般住民の、
RT-PCR検査のみの陽性者、
無症状性感染者をあぶりだすための検査、
と言ってもいい性質のものですね。

ただ、無症状で検査のみ陽性、という人が、
実際にどのような人なのか、
ということがしっかりと分かっている訳ではないのですね。

その中には本物の無症状の感染者もいるでしょうが、
もう病気としては治っていて、
PCRの陽性のみが続いている、という人もいますよね。
偽陽性もありますし、
中には慢性的に陽性になっている、
というケースも否定はできません。

現状無症状感染者は、
陽性となった検査施行時から、
10日間の隔離ということになっています。

ただ、これはクラスターなどで、
有症状の感染者から感染した場合を、
想定している措置ですよね。

バカバカ無症状者に検査をやりまくって、
陽性になった人を対象としている方針ではなくて、
そうした場合にどうするべきかは、
議論して決めないといけない事項です。

それが決まっていなくて、
通常の感染者と同じ扱いで、
この自費検査の陽性者が急増している、
という点が臨床的には大きな問題です。

要するにこうした大規模検査というのは、
事後措置とセットで決めないといけないのですね。
検査だけやりました、ニーズがあるので、
というように検査母体の企業の方はそう思われていて、
社会貢献をされているつもりなのかも知れませんが、
それは違うと思うんですよ。
結果的に僕のようなクリニックの業務も圧迫しているし、
保健所の業務も圧迫しているんですよ。
それを理解してほしいな、というように思います。

要はね、陽性者の隔離施設も同時に建設して、
検査とその運用を同時に行うようなやり方であれば、
それはもう大賛成ですし、
そこで取られたデータを、
今後の研究に活かすことが出来れば一石三鳥だと思うのです。
陽性者は検体を取って、
ウイルスの遺伝子解析も行えばよいと思うんです。
勿論多方面にしっかり許可は取って頂いて、
そこまでやればこれはもう日本人のみならず、
人類に対しても偉大な貢献ではないでしょうか?

今やっていることはそうじゃないんですよ。
やりっぱなしで医療機関への紹介も何もないんですよ。
自己責任で適当にやってくれ、というだけなんですね。
それではもう、ただ有害であるだけのように思います。

ただ愚痴ってもそれまでですし、
この自費検査の分がですね、
数100人とかそれ以上という規模で、
感染者に上乗せされていくのですね。

想像するだけで憂鬱になるような話です。

それでもまあ、やれることをやるしかないですし、
腰も痛くて満身創痍の感じですが、
何とか乗り切りたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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乳児期の肺機能と喘息発症との関係 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
喘息と胎児肺機能.jpg
American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine誌に、
2020年12月15日掲載された、
乳児期の肺機能とその後の喘息発症との関連を解析した、
非常に長期間に渡る臨床研究結果についての論文です。

気管支喘息は気管支にアレルギー性の炎症が起こる、
慢性の呼吸器疾患の代表ですが、
その原因は他の多くの慢性疾患と同じように、
生まれつきの体質的要因と、
生まれてからの環境要因の、
両者が相俟って生じると考えられています。

しかし、実際に体質的な因子の何が、
将来的な喘息発症と結び付いているのか、
というような点については、
明確なことは分かっていません。
遺伝子変異を解析したような研究は多くありますが、
複数の遺伝子の関与を示すデータはあっても、
その結果はあまり一致していないからです。

今回の研究は生後6ヶ月以内に行われた肺機能検査の結果と、
その後6歳から36歳までにおける気管支喘息の発症との関連を検証したもので、
これまでにない長期間の観察データです。

アメリカ、アリゾナ州のトゥーソンという町で、
出生した180名の新生児に、
生後6ヶ月以内に呼吸機能を測定し、
それから36歳時まで継続的にアンケートを行い、
26歳時には呼吸機能検査と胸部CT検査で喘息の診断を行っています。

その結果、
乳児期に施行した呼吸機能検査の数値のうち、
総呼気時間に対する最大呼気流速到達時間の比率(TPTEF/tE)と、
安静呼気位における最大呼気流量(VmaxFRC)という、
2つの呼吸機能の指標が低いほど、
将来的な気管支喘息の発症リスクが高くなる、
という関係性が認められました。

具体的には数値が1SD(標準偏差)低下するごとに、
TPTEF/tEでは70%、VmaxFRCでは55%、
将来的な気管支喘息の発症リスクが増加していました。
数値を3等分した時に、
2つの指標が共に最も低い群にあると、
その3分の2は将来喘息になると推計されました。

出生後6ヶ月以内の呼吸機能は、
ほぼ生まれつきの肺の状態を反映していると思われます。
それが低下していることがその後数十年を経て、
喘息の発症と結び付いているとすると、
これまでの想定以上に、
喘息の発症には生まれつきの肺の状態が、
関連している可能性が高いということになる訳です。

この問題は今後より詳細な解析が必要ですが、
喘息になりやすい肺の状態がより明確になれば、
それを予防するための方法の開発に、
結び付く可能性も秘めています。

こうした知見が積み重ねられることにより、
喘息の新しい予防法の確立に、
繋がることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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新型コロナウイルス感染症の家庭内感染(メタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナの家族内感染.jpg
JAMA Network Open誌に、
2020年12月14日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルスの家庭内感染に頻度についての、
メタ解析の論文です。

最近何度も強調させて頂いているように、
今の新型コロナウイルス感染拡大の主な原因は、
家庭内感染を防止することが、
全く出来ていないという点にあります。

つい最近クリニックで経験したケースでも、
遊び歩いていた娘さんが感染して発熱で発症し、
陽性と分かっても入院先も宿泊療養先も決まらないまま、
自宅待機が続き、
そのうちに解熱したので、
そのまま何もせず家にいて、
60代の両親が共に感染して肺炎になった、
という事例がありました。
両親の症状が悪化した時には、
もう既に元気になった娘さんは、
遊び歩いていて家にはいませんでした。

今年の夏くらいの時点では、
高齢者はなるべく出歩かずに家にいて、
ステイホームで感染を防ごうという方針で、
そう間違いではなかったのですが、
流行のパターンは日々変化していて、
現状はむしろステイホームが感染を拡大しているのです。
春には殆どの感染者は隔離されたので、
こうしたことは起こらなかったのですが、
今では家庭の中で、
感染者が数日で数倍に増加しているのです。

それを防ぐ対策は何1つ取られてはいません。

自宅待機中の患者には、
毎日1回保健所から電話が入るだけです。
それで感染拡大を防げる訳がありません。

今回の研究では、
これまでの臨床データをまとめて解析する方法で、
新型コロナウイルス感染症の、
家庭内感染の実態をまとめています。

対象となっているのは、
これまでに発表された54の研究に含まれた、
77758名の家庭内感染の事例です。

トータルで見た時の家庭内感染の頻度は、
新型コロナウイルスでは16.6%(95%CI:14.0から19.3)で、
これはSARSウイルスの7.5%(95%CI: 4.8から10.7)、
MERSウイルスの4.7%(95%CI: 0.9から10.7)と、
これまで流行したコロナウイルスと比較して、
今回の新型コロナウイルスの家庭内感染の頻度の高さが際立っています。

家庭内における二次感染は、
無症状感染の場合は0.7%(95%CI: 0 から4.9%)と低いのに対して、
有症状感染では18.0%(95%CI:14.2から22.1)と非常に高く、
成人の事例では28.3%(95%CI: 20.2から37.1)と高いのに対して、
小児の事例では16.8%(95%CI: 12.3から21.7)と相対的には低くなっていました。

家族の中では配偶者間の感染が、
37.8%(95%CI: 25.8から50.5)と非常に高く、
それ以外の17.8%(95%CI: 11.7から24.8)と、
明確な違いがありました。
家族以外の同居者への感染では、
同居者が3人以上では22.8%(95%CI:13.6から33.5)に対して、
1人との接触では41.5%(95%CI: 31.7から51.7)と、
非常に感染率が高くなっていました。

このように、
新型コロナウイルスの家庭内感染は、
他のコロナウイルスより起こりやすく、
それは大人では起こりやすく、小児では起こり難く、
同じ部屋で寝ているような、
濃厚な接触において起こりやすいと想定されます。

個人的にはこの解析結果より、
日本の今の家庭内感染の頻度は、
より高いという印象があり、
それが生活様式によるものなのか、
ウイルス自体の性質の違いによるものなのか、
感染の急拡大によるものなのか、
そうした点についての検証も、
是非必要であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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変異型新型コロナウイルス(SARS-CoV-2 VUI 202012/01)のまとめ(ECDC) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
変異ウイルスの詳細.jpg
これは欧州疾病予防センター(ECDC)が、
2020年12月20日に出したレポートですが、
昨日のBritish Medical Journalの記事より詳しく、
イギリスで急激に増加している、
新型コロナウイルスの変異型ウイルス、
VUI 202012/01(これは2020年12月に最初に見つかった変異ウイルス、という意味です)
についてまとめているものです。

この変異型ウイルスは、
その突起(スパイク)の部分に、
多くの変異が見られるという特徴があります。
具体的には69、70、144番目のアミノ酸の欠損、
N501Y、A570D、D614G、P681H、T716I、
S982A、D1118Hという複数のスパイク蛋白部の変異が、
複合的に認められている点がその特徴です。

このうち特に注目されるのはN501Yという、
点遺伝子変異で、
この変異は丁度ウイルスが人間の細胞のACE2受容体と、
結合する部位(receptor binding domain )にあるからです。
この変異は実験的なデータにおいては、
ウイルスの細胞への感染感受性を、
高める可能性が示唆されています。

この変異ウイルスが注目されているのは、
イギリス南東部において2020年10月以降に、
急激な感染者の増加が認められ、
ウイルスの遺伝子解析を行ったところ、
この変異ウイルスの急激な比率の増加と相関していたからです。
12月19日にイギリスのジョンソン首相はその演説の中で、
この変異ウイルスが実効再生産数(R1)を0.4増加させ、
感染感受性を70%増加させる可能性がある、
と語っています。
これは専門家の見解を元にした発言ですが、
現時点では上記レポートにおいても、
そのソースとして示されているのは、
ジョンソン首相のスピーチだけです。
この変異ウイルスが本当に、
これまでの新型コロナウイルスより強い感染力を持っているかどうかは、
今後の研究データなどの開示を待つ必要がありそうです。

ウイルスは常に部分的な遺伝子変異を繰り返しているので、
変異ウイルスが出現すること自体は、
それほど珍しいことではありません。
むしろ当たり前のことです。
ただ、今回問題の変異ウイルスは、
多くの変異を同時に有していて、
それが非連続的に、
突然に出現して急激に増加したように見える、
という点が特異な点です。

それでは、どのようにしてこの変異ウイルスは出現したのでしょうか?
1つの可能性は免疫の低下した患者の体内で、
持続的に新型コロナウイルス感染が続き、
その過程で免疫をすり抜けるような遺伝子変異が蓄積し、
出現したという可能性が指摘されています。
もう1つの可能性は新型コロナウイルスが一旦他の動物に感染し、
その体内で変異したウイルスが、
再び人間に感染したというものです。
デンマークで今回の変異ウイルスと同じ、
幾つかの変異を共有するウイルスが発見されていることは、
この可能性を補強するものです。
ただ、現時点でこの変異ウイルスが、
イギリスの外から入って来たことを、
明確に占めるような証拠はありません。

色々な意味で注目される今回の変異ウイルスですが、
まだ不明の点ばかりであるのが実際です。
今後の検証を冷静に待ちたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

(付記)実効再生産数の表記が、
基礎再生産数と誤って記載されていたため、
その点を修正しました。
(2021年1月17日午後2時修正)
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英国由来の変異型新型コロナウイルスについて(短報) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
変異型ウイルスについて.jpg
British Medical Journal誌に、
2020年12月16日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルスの遺伝子変異についてのニュースです。

今月になって、
一般でも話題になったニュースとして、
イギリスで新型コロナの変異ウイルスが流行しており、
それが感染拡大の原因となっているのではないか、
というものがありました。

この記事はその変異ウイルスについての、
現時点で分かっていることを、
Q&A形式でまとめたものです。

イギリスで2020年12月に、
新型コロナウイルスの17カ所の点遺伝子変異などからなる、
変異ウイルス(VUI-202012/01)が命名されました。
そのうち最も重要と思われているのは、N501Yという、
ウイルスの突起(スパイク)部分の蛋白をコードしている遺伝子の変異で、
この部位は人間のACE2受容体に結合して、
感染の始まりとなる場所なので、
この部分の変異は、
ウイルスの感染力を高め、
感染を広げやすくするという可能性があるのです。

2020年12月13日の時点で、
この変異ウイルスの見付かった検体は1108に及び、
イギリス国内の60箇所の異なる施設で見付かっていて、
その多くはイギリス南東部で広がっています。
ただ、最近の報告はウェールズやスコットランドでも見付かっています。

12月15日の専門家の報道発表では、
この変異ウイルスの報告は2020年9月が初めてで、
現在ではノーフォーク州での検体の20%、
エセックス州の10%、サフォーク州の3%で検出されています。
現状この変異ウイルスが、
イギリス国外から持ち込まれたことを示すデータはなく、
イギリスで発生したと想定されています。

別の専門家は12月14日に、
イギリス南東部の感染拡大に結び付いている可能性がある、
と報告しています。
ただ、確かにその地域における感染の拡大と、
変異ウイルスの増加との間には相関がありますが、
そのことは因果関係であるとは言えない、と述べてもいます。
つまり、感染の拡大が、
変異ウイルスが原因である、とは言えないのです。

実際スパイク蛋白に関わる点遺伝子変異は、
これまでに4000以上も見付かっていますが、
その多くはウイルス自体の性質に、
影響を与えるものではないと考えられています。
今回の変異がウイルスの感染力を変えている、
という可能性は否定は出来ませんが、
今の時点でそれが証明されているという訳ではありません。
現行のワクチンの多くは、
スパイク蛋白そのものか、
それをコードする遺伝子を活用したものなので、
そこに大きな変異が生じれば、
ウイルス自体の有効性も低下する可能性はあります。
ただ、今開発中のワクチンに充分な有効性が認められれば、
仮に変異したウイルスが流行するようになっても、
それに合わせてワクチンを作り直すことは、
それほど難しいことではないと想定されています。
これはインフルエンザワクチンでは毎年行われていることだからです。

現状分かっていることはほぼ以上で、
変異ウイルスがイギリスで増えていることは確かですが、
それが通常のウイルスの広がりによるものなのか、
それとも感染力を増すような進化であるのかは、
まだ全く分からないというのが実際であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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