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新型コロナウイルス感染症の嗅覚障害の特徴と経過(ヨーロッパの大規模調査) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は事務作業の予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナの嗅覚障害の頻度と回復.jpg
Journal of Internal Medicine誌に、
2021年1月5日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症の嗅覚障害の特徴と予後についての論文です。

新型コロナウイルス感染症の、
比較的特徴的な所見として、
嗅覚障害と味覚障害とがあります。
これはおそらく本質的なのは嗅覚障害で、
味覚障害は嗅覚障害に伴う二次的な現象と考えられています。

鼻腔の粘膜にウイルスが感染して、
そこで炎症や腫脹を来すことはほぼ事実とされていますから、
嗅覚障害が生じること自体は不思議ではありませんが、
何故他のウイルス感染症と比較して、
明らかに嗅覚障害の頻度が高いのか、
感染の重症度と嗅覚障害の間に関連があるのか、
といった事項に関しては、
まだ明確には分かっていません。

今回の研究はヨーロッパの複数施設において、
2581名の新型コロナウイルス感染症の患者を解析し、
病気の重症度と嗅覚障害との関連や、
その症状の持続期間について検証しています。

その結果、
主に自宅療養で対応するような、
軽症の新型コロナウイルス感染症においては、
嗅覚障害の発症率は85.9%と非常に高く、
その一方で入院を要するような中等症から重症では、
中等症で4.5%、重症で6.9%と、
嗅覚障害の発症率は高くはありませんでした。

嗅覚障害を発症した患者のうち、
24.1%は60日後も症状は持続しており、
その自覚症状による平均持続期間は21.6±17.9日となっていました。
客観的指標(検査)において、
発症60日の時点で15.3%、6ヶ月の時点で4.7%の患者は、
嗅覚障害は回復していませんでした。
発症時の嗅覚障害の程度が重いと、
それだけ持続期間も長いという関連が認められました。

このように、
軽症の新型コロナウイルス感染症においては、
嗅覚障害は非常に頻度の高い特徴的な所見ですが、
肺炎を来して入院を要するような事例では少ないという特徴があり、
その持続期間は非常に長くて、
半年を超えるというケースも22人に1人程度は認められています。

何故軽症事例で嗅覚障害が多いのか、
という原因は不明ですが、
上記論文では、
免疫反応の違いが関連している可能性が示唆されています。

最初はその真偽も疑われた嗅覚障害ですが、
今ではその発症メカニズムはともかくとして、
その臨床的意義は確立していると言って良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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