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骨密度検査を繰り返すことに意味はあるのか? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
繰り返す骨密度測定の有効性.jpg
JAMA Internal Medicine誌に2020年7月27日ウェブ掲載された、
骨密度測定を繰り返し行うことの有効性を検証した論文です。

閉経後の女性では急激に骨塩量が減少し、
骨粗鬆症になると骨折のリスクが高まります。
主に問題となるのは、
背骨の圧迫骨折と足の付け根の大腿骨頸部骨折で、
どちらも寝たきりの大きな原因となります。

上記文献にあるアメリカの状況では、
アメリカの閉経後白人女性の、
2人に1人は生涯に骨折を経験するとのことです。

骨粗鬆症の治療薬は、
多くの新薬が登場するなど格段に進歩を遂げていて、
そのため骨密度(骨量)の検査を行なって、
骨量が減少している閉経女性を拾い上げ、
適切な治療を行なうことは、
骨折の患者さんを減らすことに繋がるので、
骨粗鬆症検診のような形で、
骨塩量を測定する検診を行なうことには意義があります。

アメリカのUSPSTF(アメリカ予防医学作業部会)は、
65歳以上の閉経女性に、
こうした検診を行なうことを推奨しています。

それでは、骨塩量の測定は、
複数回繰り返した方が、
より効果があるのでしょうか?

たとえば毎年1回骨塩量を測定すれば、
その変化を確認することが出来るので、
リスクの高い患者さんを、
より効率的に見付けることが出来るのではないか、
というように考えられます。

日本で行う健診というのは、
概ね定期的に繰り返して比較することを、
推奨していることが多いと思います。

ただ、世界的に見ると、
1回きりの健診と繰り返しの健診というのは、
基本的に意味合いの違うもので、
一度のみ行う検診としては意味があっても、
繰り返し行うことの有用性は確立していない、
というような健診の方が多いのです。

骨塩定量検査を、
初回の検査後4から8年後にもう一度行う、
という検診の有効性を検証した臨床研究がこれまでに2つあり、
その結果は骨折の有無にかかわらず、
有用性は乏しいというものでした。

今回の研究では、
アメリカで7419名の閉経女性に対して、
3年の間隔で2回の骨塩定量検査を施行し、
単回の検査による評価と、
2回の検査の比較による評価の、
いずれがより骨折リスクの予測に、
有効であるのかを検証しています。

その結果、大腿骨頸部骨折と主要部位の骨折のいずれにおいても、
初回のみの検査値での骨折リスク評価と、
2回の検査の変化率による骨折リスク評価との間には、
明確な違いは認められませんでした。

このように、
何度も検査をすればそれだけ骨折を予測出来るように、
何となく思いがちですが、
実際には1回のみの骨塩量の測定で、
予測には充分で、
治療効果などを確認するため以外の骨量の複数回の測定は、
検診としてはあまり意味のないものであるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。

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新型コロナウイルスの陽性率と推計患者数(アメリカでの解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナウイルスの抗体価とアメリカ.jpg
JAMA Internal Medicine誌に2020年7月21日ウェブ掲載された、
アメリカの抗体陽性率から見た患者数の推計についての論文です。

新型コロナウイルス感染症の患者が、
今日は何名新たに診断された、
というような報道が連日あります。

ただ、これは敢くまで症状からその存在を疑ったり、
濃厚接触者であったりという理由があって、
検査をして判明した数に過ぎません。

実際には診断されない感染者が、
特に無症状や軽症者では多いだろうと言うことは、
誰でもそうだろうな、とは思うところです。

それを推測する方法の1つが、
血液の抗体価を測定することです。

抗体が陽性であることは、
その病気に罹ったことがあることを通常は示し、
不特定多数の住民に抗体検査を行なった陽性率から、
実際の感染者を推測することが出来るという理屈です。

ただ、現状どのような方法で測定した抗体が、
感染の既往をより正確に反映しているかは、
明確ではありませんし、
一旦陽性になった抗体が、
数か月以内という短期間において、
陰性化するケースが少なからずあるという報告もあって、
抗体価測定の意義は混沌としているのが現状です。

今回の検証はアメリカの10か所の地域において、
脂質異常症の検診などの目的で採血された、
一般住民の検体を活用して、
個々の地域の新型コロナウイルスの、
スパイク蛋白に対する抗体価(ELISA法)の陽性率を、
比較検証しています。

16025名の採血結果を元に推測したところ、
住民の抗体陽性率はサン・フランシスコ湾岸部が1.0%で最も低く、
ニューヨークが最も高く6.9%でした。
これを元にして、
実際の感染者数を推測すると、
実際に判明している患者数の、
6から24倍であると考えられました。

この数値は感染者の大部分が、
無症状から通常の風邪程度の軽症であることを意味していると共に、
自然に感染が拡大して、
集団免疫に達するのは、
容易なことではない、
ということを同時に示しているように思います。

画期的なブレイクスルーがない限り、
ウイルスとの闘いがかなりの長期戦になることは、
間違いがないと言っても良さそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

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新型コロナウイルス感染症に対する吸入インターフェロンβの有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
インターフェロンβのコロナウイルスへの効果.jpg
これはシネアジェン社という、
イギリスのバイオテクノロジーメーカーの、
2020年7月20日付のプレスリリースですが、
報道などで「画期的新薬が…」というような感じで、
話題になっているものです。

ただ、画期的な効果があったとする、
メーカー主導の臨床試験の結果を、
かいつまんで説明しているだけのもので、
まだ論文化にも至っていないようです。

海外発のニュースですが、
一企業の宣伝を、
ただ垂れ流すという感じのニュースは、
如何なものか、
というようには思います。

インターフェロンβは、
抗ウイルス作用を持つサイトカインで、
その吸入剤としての使用は、
2014年に喘息患者のウイルス感染時の病状改善目的で、
同じシネアジェン社の主導で臨床試験が行われ、
こちらは論文となっています。

ウイルスの気道感染の際に、
気道上皮細胞はインターフェロンβを産生し、
それがウイルス感染の防御に重要な役割を果たしているのは事実です。
喘息の患者さんの一部では、
ウイルス感染時のインターフェロンβの産生能が低下していて、
それが喘息では感染時に呼吸機能が悪化することの、
要因ではないかという考え方があります。

そこで感冒症状の見られた喘息患者に、
インターフェロンβの吸入薬を2週間使用したところ、
喘息症状の改善が認められましたが、
患者の一部では増悪も認められました。
つまり、必ずしも結果は上手くいかなかったのです。

その後シネアジェン社はCOPDに対しても、
このインターフェロンβの吸入試験を試み、
そして今回は新型コロナウイルス感染症に対して、
同じ薬剤を使用した臨床試験を行なっているのです。

理屈から言えば、
新型コロナウイルスの下気道感染に対して、
気道のインターフェロンβを増加させることは、
感染防御とコントロールに有効である可能性はありそうです。

今回のプレスリリースによると、
イギリスの9カ所の専門病院において、
新型コロナウイルス感染症の入院患者101名を、
クジ引きで2つの群に分け、
患者さんにも主治医にも分からないように、
一方はインターフェロンβの吸入を16日間継続し、
もう一方は偽の吸入を施行してその経過を比較したところ、
偽吸入群では6%に当たる3名が死亡した一方で、
インターフェロンβ吸入群では死亡者はなく、
死亡か人工呼吸器を装着するリスクは、
吸入により79%(95%CI:0.04から0.97)有意に低下していた、
と記載されています。

これが事実であれば、
かなり画期的な重症予防効果です。

症例数は少ないですが、
二重盲検の介入試験で、
明確な臨床上の有用性が示された、
新型コロナウイルス感染症の治療薬というのは、
実際には殆どなく、
その意味でも画期的ではあります。

ただ、
これはまだ詳細なデータが開示されたとは言い難いもので、
現状は多分に一企業の宣伝という範囲を超えていません。
当該の企業は5年以上前から、
インターフェロンβの吸入の可能性を、
色々な病気で試して、
それほど明確な有効性を実証していないのに、
今回がこれだけ明確な効果が示されている、
ということにも釈然としない部分があります。

論文化を待たないと何とも言えないというのが正直なところで、
これが単独の宣伝報告に終わってしまうのか、
それとも実際に画期的な重症化予防の治療であるのか、
今後の検証を待ちたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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新型コロナウイルス感染症に対するアデノウイルスベクターワクチンの効果(イギリス、オクスフォード大) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナウイルスとアデノウイルスベクターワクチンイギリス.jpg
Lancet誌に2020年

世界各国で新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の、
ワクチン開発が行われています。

今回ご紹介するのは、
先日日本政府が輸入の確保を要請してニュースになった、
イギリス、オックスフォード大の研究チームによるもので、
以前5月の時点で中国政府と中国企業が開発して臨床試験結果を報告したものと、
ほぼ同じ製法のアデノウイルスベクターワクチンです。

ウイルスベクターワクチンというのは、
他の無害なウイルスの遺伝子の一部に、
目標とするウイルスの遺伝子を取り込ませて、
それを人間に感染させることにより、
免疫を誘導しよう、という手法のワクチンです。

中国ではアデノウイルス5型という、
弱毒性の人間にも感染するウイルスを、
ベクター(乗り物)として使用していましたが、
今回のイギリスのワクチンは、
チンパンジー由来の人間には感染しないアデノウイルスを、
ベクターとして利用して、
そこに新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の、
突起(スパイク)部分の蛋白質の遺伝子を挿入し、
それを接種することで人間にこのアデノウイルスを感染させます。

このウイルスは人間の細胞に感染しますが、
そこで増殖はしないように調整されています。
結果としてウイルスに対して身体が免疫を誘導するので、
それが新型コロナウイルスにも有効に作用する、
という仕組みです。

生ワクチンや不活化ワクチンほど量産に時間が掛からず、
ウイルスを感染させるので、
不活化ワクチンより細胞性免疫の活性化も強く期待出来る、
という点が利点です。

中国のワクチンはエボラ出血熱ワクチンで開発には成功しており、
イギリスの今回のワクチンはMERSワクチンとして開発した経緯があり、
いずれのワクチンも大規模な臨床応用、
というところには至っていない点に、
若干の不安はありますが、
比較的成功の可能性の高い技術ではあるのです。

今回発表された臨床試験は、
イギリス国内の5カ所の施設において、
新型コロナウイルスには感染したことのない1077名の被験者を、
クジ引きで2つの群に分けると、
一方はこのアデノウイルスベクターワクチンを、
1回もしくは27日間隔で2回の筋肉注射の接種を行ない、
もう一方は髄膜炎菌のワクチンを代わりに接種して、
その後の抗体上昇や細胞性免疫の賦活などの、
身体の免疫反応を比較検証しています。
このワクチンは高率に発熱や倦怠感などの症状が出るので、
アセトアミノフェンが摂取後に一部の群では使用されています。

その結果、
1回の接種で全体の91%に充分な抗体上昇が認められ、
2回の接種により100%に抗体上昇が確認されました。
抗原に特異的なT細胞の賦活化は、
接種後2週間をピークとして確認されましたが、
2回目の接種によりより刺激される、
ということはありませんでした。

副反応については、
発熱や関節痛、頭痛などが主体で、
アセトアミノフェンの使用により一定の緩和効果が認められ、
重篤なものはありませんでした。

このように短期の免疫誘導と安全性とが、
今回の試験では確認され、
1つのハードルは超えたという結果です。

このワクチンが果たして、
実際の感染予防にどの程度の役割を果たしうるのかは、
まだ未知数ですが、
おそらく海外でのより大規模な臨床試験により、
一定の有効性が担保されれば、
日本での通常の審査は、
かなり端折るような形で導入されることは間違いがなく、
他のワクチンの進捗も見ながら、
今後ワクチンの接種に向けての動きが、
活発になるのは間違いがなさそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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新型コロナウイルス感染症の嗅覚味覚障害の経過 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナウイルスと嗅覚障害の持続期間.jpg
JAMA Otolarygology-Head & Neck Surgery誌に、
2020年7月2日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症の特徴的症状の1つである、
嗅覚味覚障害の経過を検証した論文です。

特に軽症から中等症の新型コロナウイルス感染症において、
その診断に有用な特徴的症状が、
嗅覚味覚障害です。

これは通常は嗅覚障害と、
それに伴う味覚鈍麻が本態であると思われ、
嗅皮質周囲の粘膜に、
ウイルスが感染して炎症を起こすことが、
その要因であるように、
これまでの知見からは想定されます。

上記論文の著者らによる以前の報告では、
肺炎を来さないような軽症の新型コロナウイルス感染症のうち、
64%に嗅覚味覚障害があるとされています。

他にも同様の報告があり、
僕の経験でも概ねそのくらいの頻度で、
日本でも嗅覚味覚障害は発症していると思われます。

つまり、
重症の肺炎を来さないような新型コロナウイルス感染症を、
他の通常の感冒症候群などと見分ける上で、
この症状の存在は非常に重要なのです。

今回の研究はイタリアの単独施設において、
202名の軽症で自宅隔離の対応となった、
新型コロナウイルス感染症の患者の経過を観察し、
嗅覚味覚障害の経過を追っています。

202名のうち、
2名は経過観察中に突然死をしていて、
13名は経過観察中に協力を拒否され離脱しています。
そのため、最終的解析は残りの187名で行われています。
187名のうち60.4%に当たる113名が、
観察開始の時点で嗅覚味覚障害が認められています。
その時点で嗅覚味覚障害のなかった74名のうち、
11名は経過中に新たに症状を発症しています。
従って、トータルに見ると、
経過中に66.3%が嗅覚味覚障害を発症していることになります。

観察の開始は、
RT-PCRにて検査陽性となってから、
5、6日が経過した時点ですが、
それから4週間が経過した時点でも、
全体の36.9%に当たる69名では、
嗅覚味覚障害が持続していました。
嗅覚味覚障害が観察期間中に改善した事例において、
その平均持続期間は11.2日でした。
最初のRT-PCR検査(鼻腔もしくは咽頭で施行)から、
4週間後に再度行われたRT-PCR検査で、
68.1%は陰性となりましたが、
残りの31.9%は再度陽性でした。
そして遺伝子検査の陽性率と、
嗅覚味覚障害の持続との間には、
関連は認められませんでした。

このように、
新型コロナウイルス感染症が回復しても、
1か月以上嗅覚味覚障害が持続することは稀ではなく、
それは病状の重症さなどとは関連がないようです。

遺伝子検査によるウイルスの検出は、
発熱などの症状から回復しても、
より長期間持続することが稀ではなく、
全身倦怠感などの症状の持続も、
長期間継続することが稀ではありません。

この点がこの病気をどの時点で治ったとするのか、
判断を難しくしている厄介な点です。

以前は有症状の新型コロナウイルス感染症の場合、
2回続けてRT-PCR検査が陰性とならないと、
退院すら認められずに、
これが入院期間を長期化する要因となっていたのですが、
現状は検査による陽性確認から10日が経過し、
発熱などの症状が消失して72時間が経過すれば、
退院は可能と判断は変更されています。
無症状の場合は10日経てば隔離は解除してよしとされています。

これは感染に病気が治癒したという意味ではなく、
10日を超えて感染が周辺に拡大した、
という事例がないからで、
実験的にも採取されたウイルス遺伝子に、
感染力のないことは確認されているからです。

この病気の性質が明らかになるにつれ、
その対応は少しずつ合理的かつ効率的になってきてはいるのですが、
まだまだ分からない点は多く、
今後の検証の継続に注視したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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極私的新型コロナウイルス感染症情報(2020年7月26日) [身辺雑記]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。
雨も降っていますし、
妻は外出しました。
今日は1人でステイホームの予定です。

それでは今日の話題です。

今日は新型コロナウイルス感染症の、
クリニック周辺での状況を踏まえたあれこれです。

このところ唾液のPCRでの振り分けを行なっているので、
今の感染状況の実際が見えてくるという部分があります。

患者さんは矢張り現時点では20代から30代が多く、
症状は初発は急な発熱と関節痛や倦怠感が多いという印象です。
鼻水や咳はあまりありません。咽頭痛もありません。
それから数日して嗅覚障害と味覚障害です。
勿論全例で出ているということではありませんが、
嗅覚障害と味覚障害は矢張りこの病気の大きな特徴で、
鼻閉などがないのに、
ある日急に臭いや味を感じなくなったら、
高い確率でこの病気を疑います。

これは僕だけが言っていることではなく、
症状のみから新型コロナウイルス感染症の診断をしようという、
診断ツールを検証している論文でも、
最も診断オッズ比の高い症候として、
嗅覚障害と味覚障害を挙げています。

これはある日急に感じなくなるということと、
一部の臭いや味だけではなく、
ほぼ全ての臭いや味を感じなくなる、
という点がポイントです。

こうした症状があった場合には、
それだけでPCR検査に進んで良いものと、
個人的には考えます。

これは実際の事例ですが、
最初に発熱が1日のみあって、翌日には平熱になり、
その2日後に嗅覚障害と味覚障害が出現した20代の女性がいました。
近医を受診したところ、
その時点では経過をみてよいと漢方のみが処方されましたが、
症状が改善しないため相談電話を介して、
クリニックに連絡がありました。
結果は陽性で新型コロナウイルス感染症と診断しています。
結果として症状出現後9日が既に経過しており、
唾液のPCRの施行としてはギリギリのタイミングでした。

こうしたケースはもっと早期の検査が望まれると考えます。

一方で今咽頭痛と発熱があって、
同時に鼻水は鼻閉もあり、
その後痰がらみの咳が出るというような経過の、
急性上気道炎症候群に関しては、
ほぼ症状のみで新型コロナウイルス感染症ではないと、
経験的には思われます。
特に咽頭所見において、
扁桃炎の所見が明らかである場合には、
ほぼそれだけで新型コロナウイルス感染症は否定されます。

ただ、これは今の時点で、
流行している上気道炎に限った話で、
また別の時期になれば判断は変わるという可能性があります。

6月に発熱が持続する患者さんで、
扁桃炎の所見があり、
抗菌剤を処方したものの経過が遷延するために、
新型コロナウイルス感染症診療の窓口の1つとなっている病院に、
ご紹介をしたのですが、
病院ではPCR検査はすることなく、
扁桃炎として診療を施行しました。

通常心配なのでPCR検査もして、
新型コロナウイルス感染のないことを確認したいところですが、
その病院の先生は新型コロナの患者を多数診察しているので、
経験的にその必要を認めなかったのだと思います。

僕も今では症状を1つの基準として、
すぐにPCR検査を行なうのか、
その可能性は低いとしてまずは経過をみるのかを、
考えるようにしています。

さて、クリニックでは新型コロナウイルスの診療自体は出来ないので、
PCR検査が陽性と判明した時点で、
患者さんには保健所からの連絡を待ってもらう、
という対応が通常です。

ただ、東京都の感染動向の資料を見て驚いたのですが、
入院患者が1000名強、宿泊療養が150名強(7月25日現在)であるのに対して、
自宅療養が400名強で、
入院療養調整中が1000名を超えています。

基本的には新型コロナウイルス感染症と診断されて、
症状のある患者さんについては、
入院もしくは宿泊療養が通常と理解していたのですが、
実際には入院もしくは医師看護師の観察下にある患者は、
陽性者の半数に満たないという現状であることが分かります。

僕が問題と考えるのは、
軽症の新型コロナウイルス感染症と診断され、
発生届が提出された患者さんが、
軽症と判断された場合には、
結果的に放置に近い状態となってしまい、
主治医もいない状態で自宅待機を強いられてしまう、
ということです。

医療的サポートなく多くの軽症患者さんが、
放置されてしまうような現状は、
好ましいものではないように思います。

今年の4月から5月くらいの時期には、
入院が必要でありながらベッドがなく、
自宅待機を長期強いられるというケースが問題となった訳ですが、
現状はそうではなく、
軽症ではありながら対応が決まらず結果として放置されている、
というような患者さんが多い、
という状況であるようです。

個人的にはもし自宅療養の方針なのであれば、
外来主治医が継続的に、
経過をみてゆくような態勢が望ましいように思いますが、
その線引きのようなものは、
現状は明確ではないようです。

今後はこうしたケースでは患者さんに現状を聞きつつ、
必要あれば連絡をしてもらうような態勢を、
取ってゆこうかと考えています。

今日は今思う新型コロナの現状についてのあれこれをお届けしました。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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小劇場演劇は死ぬのか? [身辺雑記]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも須田医師が外来を担当する予定です。

それでは今日の話題です。

今日も身辺雑記的記事になります。

小劇場演劇は僕にとっては、
多くの娯楽の中でも最も愛していた世界で、
もし一度だけタイムスリップが可能であるとすれば、
状況劇場の「ベンガルの虎」の上野不忍池の初演を観る、
と決めているくらいです。
人生での一番の後悔は、
頑張れば行くことの出来た、
第七病棟の「ビニールの城」を東京で観なかったことです。

ただ、現時点でこの数年くらいの期間における、
小劇場演劇の将来については、
悲観的に思わざるを得ません。

小劇場演劇というのは、
狭い場所に観客は閉じ込められたり、
変な場所(野外を含む)に誘導したりして、
汚い恰好で唾を飛ばし合って熱演する役者を、
その唾が降りかかるような状態で、
ドキドキしながら観劇するという娯楽なのです。

それが小劇場演劇の王道であるのです。

勿論そうでない小劇場演劇というものも存在はしていましたし、
今も存在しています。

モニターだけが舞台に並んでいて、
役者が存在しない、という舞台もありました。
地図を片手に野外を散策して、
そこで当時多発的に起こる事件を楽しむ、
というようなタイプの演劇もありました。

ただ、そうしたものは敢くまで「変化球」であって、
小劇場演劇の王道とは言えません。

王道は密閉空間で、
非常に近接した肉体の表現を体験する、
という性質のものなのです。

これは言ってみれば三密の最たるもので、
カラオケボックスに不特定多数の人間を閉じ込めて、
密接した空間で大声で歌を歌う、
というような状況と酷似しています。
つまり、濃厚接触の最たるものであり、
飛沫感染のリスクが非常に高まるような状態です。

演劇の上演時間は、
平均すれば2時間くらい。
長いものは3時間以上ありますし、
短いものでもまあ、時に30分以内という、
意図的に短くしているものもありますが、
少なくとも15分以上同じ閉鎖空間で、
飛沫感染の生じやすいような状態が続くことは事実で、
仮にその中に新型コロナウイルス感染症の、
患者さんが紛れていれば、
感染のリスクが非常に高いものになることは、
ほぼ間違いのないことなのです。

現状様々な感染対策を行って、
小劇場の公演を再開する試みが行われています。

観客やキャスト、スタッフに検温をする、
体調不良かどうかの確認をする、
入場時に手指消毒を行ってもらう、
客席を間引いて1メートル以上の距離を保つ、
定期的な会場の換気を行う、
観客にはマスク着用を義務化する、
などです。

上演される舞台自体も、
パーテーションを置いたり、
役者同士がなるべく距離を取って、
向き合って会話を交わさないようにしたり、
フェイスシールドを使用したりと、
工夫が凝らされています。

これは確かに感染リスクを減らす、
という意味では一定の有効性のある対策です。

しかし、感染をなくすという対策ではありません。

これまでに報告された、
最も信頼のおけるデータにおいても、
マスクや人間同士の距離をとる(Physical distancing)の有効性は、
8割程度のリスク低下とされています。
有効ではあるけれど、
感染自体は起こっておかしくはないのです。

感染していないことを確認するための検査、
というようなものが存在していれば、
それを皆でやればいい、
ということになりますが、
実際にはそんな検査はありません。

PCR検査にしても抗原検査にしても、
感染を疑う状況や症状があった時に、
それを鑑別診断するための検査であって、
陰性であれば大丈夫、
という免罪符のような意味はありません。

今陰性であっても、
1時間後の検査では陽性、
ということが当然あり得る訳ですし、
感染が拡大しているような現状では、
検査をして陰性だから大丈夫、
と考えた人が感染を広げてしまうというリスクが、
充分に想定されるからです。

抗体検査は免疫の有無を鑑別出来るのでは、
と一時期待をされたのですが、
現状測定されている抗体にそこまでの役割はなく、
現行の抗体検査は混乱を招くだけの可能性が高いので、
少なくとも不特定多数に感染予防目的で行うことは、
意味がないというのが現時点での判断です。

つまり、
現状やれば安心、というような検査はないのです。
検査は基本的に新型コロナウイルス感染症の、
リスクが高いと想定されるときにするもので、
その診断を補足する役割を持つものであって、
単独で診断可能という性質のものではないのです。

そうなると、
この病気に感染するリスクの高いような環境には、
極力身を置かないことが適切な判断である、
という帰結になります。

クルーズ船やカラオケボックス、
老人施設や病院、バーやライブハウス、
屋内でのセミナーや集会などは、
そうしたリスクが明らかに高い状況です。

そして実際にそうした状況下では、
感染の広がりが非常に強くなることが、
これまでの事例から確認されています。
1人から10人に感染というような状況も、
出現しておかしくはありません。

そして、小劇場はもちろん、
こうしたリスクの高い環境と言って良いのです。

このうちで病院や老人施設は、
その社会的な必要性が高く、
リスクはあっても運営は継続する必要のある施設です。
そのために通常より厳密な感染予防策を取りながら運営がされ、
1人でも感染者が出た時点で、
その機能の一部もしくは全部を、
一定期間停止するという措置が取られます。
患者の捕捉も行いやすいという性質があります。

それでは、
小劇場で病院と同じような感染予防策が取れるでしょうか?

残念ながらそれは不可能ですし、
仮に可能であるとして、
そこはもう小劇場ではないと思います。

従って、
小劇場ではクラスターは必ず発生します。
今のような感染の広がりにおいては、
それは仕方のないことなのです。
防ぎようのないことなのです。

ここからは僕の独自の見解ですが、
現状小劇場は全て閉めるべきだと思います。

ただ、それは小劇場演劇がなくなる、
ということを意味しているものではありません。

演劇は、
一旦今の王道のありかたを、
捨てる必要があるのです。

三密の空間で楽しむのが小劇場演劇なのですから、
それが一旦なくなるのは仕方のないことなのです。

いつまで、と言うと、
感染がコントロールされるまでです。

有益なワクチンによる集団免疫の賦与は、
その1つのゴールではあります。
ただ、別にワクチンがなくてもスペイン風邪が沈静化したように、
こうした新規の病原体による感染は、
一定期間広がった上で、
徐々には沈静化するのがこれまでの歴史的事実です。
これも1つのゴールでより自然な解決ですが、
おそらく数年は掛かると想定されます。
人間の生活の仕方を抜本的に改め、
人間同士の生身の接触を避けて、
インターネットなどを駆使しつつ、
ある意味個々の小集団がロックダウンしつつ、
経済を回すことが可能であれば、
そうした「新しい生活」に移行するのも、
もう1つの選択肢です。
感染の初期から使用可能で、
感染リスクを著明に軽減しつつ、
病気の快復も促進するような治療薬が開発される、
というのも選択肢ではありますが、
現状その可能性は低いように思います。

冷静にこの状況を見れば、
大人数のカラオケやバー、ライブハウス、
小劇場や屋内のセミナーなどを、
「感染対策を徹底して持続する」という今の方針は、
そう言うしか仕方がないということは分かりますが、
現実的な解決策ではなく、
クラスターを予防出来る方策ではないと考えます。

一旦そうした環境は、
ストップするしかないのです。
現状の認識では、
それは少なくとも年単位になる可能性が高い、
というように思われます。

それでは小劇場演劇に将来はないのでしょうか?

そんなことはないと個人的には思います。

以下はやや夢想に近い僕の考えです。

まず可能性があるのは野外劇です。

そもそも明かりのない昔において、
演劇は戸外でやるものでした。

野外劇こそ演劇の母であり父であるのです。

新型コロナウイルスが野外で集団発生した、
というような事例はこれまでになく、
通常のマスクや手指消毒のような感染対策さえ怠らなければ、
野外劇はいつでも可能です。

無言劇というのも1つの方向性です。

この場合役者のみならず観客も、
劇場に入ったら一切の言葉を発することを許されません。
言葉というコミュニケーション手段が奪われた、
という仮定から始まるフィクションの豊穣さを、
楽しむような芝居はどうでしょうか?

感染リスクを限りなく減らすための、
これは1つの実験的な試みです。

役者を無機物で代用したり、
遠隔の画像の組み合わせで表現することは、
現状でも試みられている1つの解決策で、
リモート演劇というような趣向です。

ただ、演劇というのは生身の肉体がそこにある、
ということが不可欠な要素であると、
個人的にはそう考えているので、
モニター同士が対話するような演劇は、
それはもう映像メディアであって、
劇場や観劇空間とは馴染まないものであるように、
個人的には思います。
それは演劇ではないのです。

反体制的な部分や反社会的な部分は、
それが藝術という意匠を纏っている範囲においては、
小劇場演劇の魅力の1つでもあります。

以下はそのための少し不謹慎なアイデアです。

クラスターの発生した劇場を舞台として、
その原因を時間を遡るようにして検証するような、
そうした「演劇」を創作します。
舞台は全ての扉が開かれ、
ほぼ戸外と化した劇場です。

観客も距離を取ってその様子を見守りますが、
時間が遡るにつれ、
劇場は密閉空間に近づき、
ラストは感染リスクのない短時間のみ、
劇場という密室が再現された瞬間に終わります。

それは最初に色々な可能性が示されながら、
予想外の「最初の感染者」が、
舞台に登場した瞬間でもあるのです。

これは感染という現実の恐怖を、
観客の安全が担保されるギリギリを狙って再現するという、
少し不謹慎な企画です。

今上演するには問題がありますが、
少し感染が収束に向かった段階であれば、
上演の意義があるように夢想します。

その昔アングラの最盛期に、
寺山修司は「疫病流行記」という密室劇を創作して上演しました。

この作品は密室を更にカーテンで仕切るという趣向ですから、
勿論現在上演は不可能です。

ただ、今演劇として最も上演すべきテーマは、
「疫病流行記」であることは間違いがなく、
演劇に関わる全ての方は、
今上演するべき「疫病流行記」の可能性を、
今は夢想にせよ追い求めるべきではないでしょうか?

現実のウイルスが生み出す、
不安や恐怖の連鎖に、
真の意味で対抗出来る人間の武器は、
藝術の夢想の力であり、
それは現実に疫病を防ぐような力は持たないけれど、
その未来の水先案内人になるべきものではないでしょうか?

僕の大好きな演劇の、
今こそ底力を見せて下さい。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「今日から俺は!!劇場版」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
今日から俺は.jpg
漫画を実写化したヒットドラマの映画版を、
日比谷の映画館で観て来ました。

80年代のツッパリの青春を、
20代から30代くらいの役者が演じるという、
「サザエさん」に近いような、
時間が静止した感じのドラマなのですが、
脚本も手掛けた福田雄一監督の、
独特の世界が展開されています。

これはこうしたものと割り切って観れば、
なかなか楽しくて、
ドラマ版のキャストも皆手馴れた演技で、
その持ち味を発揮していますし、
映画から参加組も山本舞香さんの初々しさや、
柳楽優弥さんの余裕たっぷりの凶悪さなど楽しめます。

漫画の実写映画化というと、
「キングダム」などの佐藤信介監督と、
福田雄一監督がおそらく双璧で、
個性は全く違いますが、
これまでにはあまりなかったタイプの、
原作のファンにも納得がゆくような、
実写映画に仕立てる名手です。

福田雄一さんは今明らかに脂がのっていて、
今回の作品も原作の世界観を守りながら、
随所に福田さんらしい遊びを入れ、
トータルには串団子のような構成で、
充実した娯楽作に仕上げていたと思います。

まあ、これを独立した映画と言えるかどうかは疑問ですが、
2時間現実を忘れてドラマの世界に浸りたい、
という向きには、
観て損のない作品ではあると思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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PCR検査の混乱と感染の現在 [身辺雑記]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

本日は祝日でクリニックは休診です。

今日は身辺雑記的な記事になります。

新型コロナウイルスの唾液のPCR検査が、
2週間くらい前には検体提出の翌日には結果が出ていたのですが、
ここ数日は遅れに遅れていて、
20日提出分については、
検査会社に何度も連絡を入れ、
お願いにお願いを重ねて、
ようやく22日の午後4時半にファックスが届きました。

詳細は言えませんが、
結果を受けてまた患者さんに来て頂いて説明したり、
あれやこれやがあり、
保健所とも何度も連絡を取って、
昨日午後は休診だったのですが、
事前の予定はほぼ全てつぶれました。

その間に品川区のPCRセンターがパンク状態で、
昨日の時点で次に検査の出来るのが27日ということになり、
依頼がこちらに廻って来て、
25日に数件の検査を受託しました。

25日に検査をしても、
現状の外注検査会社の混乱ぶりを見ると、
検査結果がいつ出るのか定かではありません。

その説明はしたのですが、
それでもまだこちらの方が早そう、
ということで検査は行う方針となりました。

21日に検査をした方が仮に陽性であると、
職場のクラスターになる可能性があり、
早く結果が欲しいのですが、
これもいつ結果が来るのか定かではありません。
これからクリニックに行って確認をする予定です。

埼玉の方に救急専門の有床クリニックがあって、
PCR検査を積極的に受託していて、
メディアでも盛んに登場し宣伝をされています。

勿論意義のある試みではあろうかと思います。
熱意を持った医療機関であろうとも思います。

ただ、最近の宣伝はかなり過剰なもので、
特にPCR検査の無条件の受け入れのような姿勢には、
少なくとも品川区の現状とはかなり乖離した点があって、
正直腹立たしい気分になります。

まず、県外の方の検査も積極的に受け入れているので、
実際に品川区の方も、
その埼玉のクリニックで検査を受けていると、
実際に複数の事例を確認しています。

結果として感染している可能性のある都内の方が、
埼玉に移動することになり、
その往復で感染が拡大するリスクがあります。
それで陽性が判明すると、
結果として品川区の保健所に連絡が入り、
品川区で対処しなくてはいけないことになるのです。

患者数が都内で急増し、
保健所もPCRセンターも検査会社もパンク状態で、
このような対応が妥当でしょうか?

今週の日曜日のテレビであったと思いますが、
そのクリニックの先生は、
少しでも症状のある方は全て公費でPCR検査をします、
と言われていて、
朝に検体を提出すれば、
5時間後には結果が出せるとも言われていました。

それは確かにそのクリニックではそうなのでしょうが、
それは検査会社がそのクリニックの検査を最優先で行っているからで、
前述のように、
少なくとも今週の品川区の現状で言えば、
そのような状況は現実にはないのです。

こうしたテレビを見た方から、
「なんで、検査の出るのが遅いのだ。テレビでは5時間で出るといわれたぞ」
とお叱りを受けるこちらの身にもなって欲しい、
というのが今の正直な気持ちです。

そもそも少しでも疑いのある症状があれば、
無条件で公費のPCR検査を行ないます、
というアナウンスには問題はないのでしょうか?

PCR検査を増やせ、という意見があることは承知していますが、
闇雲の検査をすればそれで良い、
というものではないではないでしょうか?
現状最低でも16000円くらいの税金が、
PCR検査1件当たりで拠出されているのです。
それでも公費の検査をすると、
殆どは検査会社に支払うことになり、
医療機関はむしろ赤字になるのです。
財政は圧迫されますが、
その実誰も儲けてはいないという奇怪な仕組みになっています。

今この状況においては、
検査のパンクを避けつつ、
効率的な検査を行なって、
必要な人の検査結果が、
迅速に出せるということが重要なのです。

今のように無秩序に検査をすると、
全ての検査が遅れることで、
対応にも遅れが生じてしまうのです。

状況は常に変化をしていて、
数日前の正解が今は誤答になっているのです。

そのことを是非理解して頂きたいと思います。

やや混乱した文章になりました。

言わんとすることが伝わっているでしょうか?

それでは今日はこのくらいで。

これからクリニックに向かいます。

石原がお送りしました。
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PCR顛末記(2020年7月22日の現状) [身辺雑記]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今とても困っています。

7月の10日から唾液のPCR検査が可能となり、
ある大手の検査会社に検査を依頼しています。

7月11日に施行した検査の結果は、
12日にはファックスでクリニックに送付されました。
その後も概ねそのペースで結果が来たので、
患者さんにも概ね翌日か遅くても2日後には結果が出ます、
という説明をしていました。

ところが…

7月20日に数人の検査を行なって、
検体を3重に封をして提出しました。

翌日の朝に確認しましたがファックスは来ませんでした。

昼にもう一度確認しましたがファックスは来ません。

それで窓口となる検査会社の営業所に連絡をすると、
「正確には言えないが本日の午後5時までには届く予定です」
ということなので、
遅いなあ、と思いながら待っていました。
しかし、午後5時を過ぎても結果は届きません。

それでもう一度営業所に連絡すると、
「今日の夜には届く予定です。24時間体制で検査をしていますから」
というやや不安に感じる曖昧な答えでした。

それで当日は無理と考え、
検査をした患者さんにも、
結果が出次第連絡はするけれど、
今日になるか明日になるかは分からない、
というお話しをしました。

翌日朝クリニックに来ましたが、
まだファックスは届いていませんでした。

検査会社への連絡は午前10時にならないと出来ないので、
外来をしながら10時を待って連絡しました。
すると、「こちらでは確認出来ません」
というすげない返事です。
「何処に聞けばいいのですか?」
と聞くと、
「ラボのPCR受付に聞いて下さい」
と携帯の電話番号を教えられました。

それでラボに連絡すると、
20日1日だけで3000件以上の検体が集まっているとのことで、
検査はまだ半分程度しか済んでいない、ということでした。
「それではいつ結果が出るのですか?」
と聞くと、
「今日の昼の12時までには出すように最大限努力しています」
というやや語尾に不安を感じる返答です。

それで患者さんには、
「申し訳ありません。どうか、今日の昼まで待って下さい」
と個別に連絡し、
外来をしながら午後0時を待ちました。

午前11時55分です。
ファックスは来ません。

午後0時丁度です。
複合機はうんともすんとも言いません。

午後0時5分にファックスが来ましたが、
ただの宣伝でした。

午後0時10分です。
ファックスは来ません。

午後0時30分です。
ファックスは来ません。

幾らなんでも酷いじゃないかと思い、
もう一度営業所に連絡をしました。

すると営業担当の方の話では、
「午後0時に送信する筈のファックスの予定が、
午後2時くらいに遅れるという連絡が入っています」
という脱力するような返事でした。
「それは間違いがないのですか?午後2時には来るんですか?」
と再度尋ねると、
「午後2時から3時には…」という案の定の返事です。

「もし午後3時を過ぎるようなら、
僕の携帯に連絡して下さい」
と言って電話を切ると、
再び検査をした患者さんに連絡を取り、
もう一度説明をして、
午後3時にこちらから電話をすると説明しました。

午後は予定があったのですが、飛びました。

それで今、ファックスを待っているところです。

現状はこんな感じで、
PCR検査はあちこちでパンク状態になっているようです。

品川区のPCRセンターも予約がパンクに近い状態で、
6月には殆ど陽性者はいなかったのですが、
先週1週間の陽性率は12.2%となっています。

これで明日から連休突入ですか…

僕は比較的楽天的な方ですが、
それでもかなりまずい状況であることは、
ひしひしと感じています。

ファックスは…まだ来ません。
(2020年7月22日午後2時5分)
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