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全粒穀物の摂取と糖尿病発症リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
シリアルと糖尿病リスク.jpg
2020年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
精製していない全粒穀物の摂取による、
2型糖尿病の予防効果を検証した論文です。

糖尿病や他の生活習慣病の予防のための食事として、
米では白米が、パンでは白い食パンや菓子パンなどのパンが、
良くないというのはほぼ間違いのない事実です。

その一方で良いとされているのが、
米であれば玄米や五穀米などの茶色い米で、
パンであればベーグルや全粒小麦パンや胚芽パンなど、
茶色い色のついたパンです。

こうした米やパンは、
通常穀類を精製する過程で除去される、
外皮や胚芽などの部分を含んでいて、
そうした部位には食物繊維や抗酸化物質などが多く含まれ、
内臓脂肪の減少やインスリン抵抗性の改善、
抗炎症作用などがあると報告されています。
こうした作用が糖尿病や動脈硬化性疾患の、
予防に繋がると考えられているのです。

ただ、こうした全粒穀物由来の食品にも、
多くの種類があります。
全粒小麦パンや玄米以外に、
小麦ブラン(ふすま)由来のパンやクッキー、
全粒穀物を主体としたシリアル、オートミールなど、
多種多様です。

こうした食品毎にその健康効果を検証したような研究は、
これまでにあまり行われたことはありませんでした。

そこで今回の研究では、
アメリカの医療従事者を対象とした、
大規模な疫学データを活用して、
全粒穀物由来の食品と糖尿病発症リスクについての、
詳細な検証を行っています。

158259名の女性と36525名の男性を対象に検証した結果、
トータルな全粒穀物の摂取量を5分割して、
最も少ない群と比較して最も多い群では、
2型糖尿病の発症リスクは29%(95%CI:26 から33)有意に低下していました。

個別の食品の解析では、
その食品を月に1回未満しか摂取しない場合と比較して、
1日1単位以上摂取した場合、
全粒穀物由来のシリアルで19%(95%CI:0.77から0.86)、
全粒小麦パンで21%(95%CI:0.75から0.83)、
それぞれ有意に2型糖尿病の発症リスクは低下していました。
ポップコーンで同様の検証を行うと、
糖尿病リスクはむしろ増加する傾向を示していました。

それ以外の食品は摂取量が少ないので、
その食品を月に1回未満した摂取しない場合と、
1週間に2単位以上摂取する場合で比較すると、
オートミールで21%(95%CI:0.75から0.83)、
玄米で12%(95%CI:0.82から0.94)、
小麦ブランで15%(95%CI:0.80から0.90)、
小麦胚芽で12%(95%CI:0.78から0.98)、
2型糖尿病の発症リスクは有意に低下していました。

このように食品によるばらつきはありますが、
多くの全粒穀物由来の食品を多く摂取することで、
2型糖尿病の発症リスクは低下していました。

これは以前から指摘されていた知見ではありますが、
大規模な疫学データでその詳細が明確になったことは、
臨床においては非常に意義のあることで、
今後より精度の高い栄養指導や病気予防に繋がることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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