「MOTHER マザー」 [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。
土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
少年による祖父母殺人事件の実話をもとに、
生活の破綻した母子の奇妙で壮絶な絆を描いた、
大森立嗣監督の新作映画を観て来ました。
実話に基づいた親子の絆と犯罪というテーマは、
日本映画ではお馴染みのもので、
野村芳太郎監督の「鬼畜」や、
大島渚監督の「少年」、
是枝裕和監督の「誰も知らない」など、
これまでにも多くの傑作や話題作が生まれています。
今回の作品も、
自堕落な生活を送り、
子供に自分の金の無心をさせて、
何とも思わないような母親と、
そんな母親から離れることの出来ない息子との、
長い年月を経た愛憎劇が、
結局は肉親を巻き込んだ犯罪で、
終わりを告げるまでを描いています。
基本的に救いの欠片もない暗い話ですが、
登場人物の誰にも感情移入をさせないように、
全編はドライなタッチで貫かれていて、
これまでにない役柄を熱演した、
母親役の長澤まさみさんのお芝居が、
くっきりと浮かび上がってくるような仕上がりです。
息子を演じた2人の少年の芝居も良いですが、
間違いなくこれは長澤まさみさんの存在を観る、
という趣きの映画です。
観る前には、
長澤さんにこの役柄というのは、
ちょっと美形過ぎるのではないかしら、
というように思うのですが、
観ているうちにその美しい仮面の内側の、
濃密な嫌らしさや狂気じみた情熱が、
ふつふつと湧き上がって来るような感じがあって、
後半には違和感なく、
その役柄として感じることが出来ます。
ともかく、
周りにいたら背筋が嫌悪に震えるような存在なのですが、
それを長澤さんが演じることで、
こちらはそこまでの嫌悪感なく、
その存在を受け入れることが出来るのです。
後半では特にメイクなどすることなく、
自然体で老け役を演じているのですが、
それが違和感なく感じられるところが凄いと思います。
1年前に「キングダム」をやって「コンフィデンスマンJP」をやって、
それでこれでしょ。
その振り幅には素直に感心します。
阿部サダヲさんの徹底したダメ男も凄まじく、
2人の絡みの濃厚さは、
かつての大竹しのぶさんと豊川悦司さんなどを彷彿とさせました。
一方で監督の演出や絵作りについては、
正直あまり個性を感じませんでしたし、
あまり好みではありませんでした。
音楽は岩代太郎さんなのですが、
たとえばラストの殺人の場面などは無音にしておきながら、
その後で血まみれの少年が出て来ると、
そこでドカンと音を入れるでしょ。
こういうのは僕は嫌いです。
何か、場面に寄り添うという感じではなくて、
「ここで音を聴け!」みたいな感じでしょ。
これなら音効などない方がいいのに、
と思いました。
絵作りもあまり美学や個性を感じませんよね。
全体が平板で、間合いもずっと同じでしょ。
最後のところとか、いくら何でもため過ぎですよ。
もっとさらっとやった方がいいのに、
と感じました。
ところどころで遠景の長回しがあるのも、
如何にも「やってやったぞ」という感じで鼻につくし、
室内撮影とか、
ここにカメラを置きました、
みたいな構図が多いですよね。
ちょっと工夫を感じませんでした。
そんな訳で映画としては、
もう少し個性があって美意識のある映画が好きなので、
ちょっと好みではなかったのですが、
テーマはなかなか重く扱いも面白く、
長澤さんの芝居は凄いので、
一見の価値はある作品だと思います。
ご興味のある方はどうぞ。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。
土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
少年による祖父母殺人事件の実話をもとに、
生活の破綻した母子の奇妙で壮絶な絆を描いた、
大森立嗣監督の新作映画を観て来ました。
実話に基づいた親子の絆と犯罪というテーマは、
日本映画ではお馴染みのもので、
野村芳太郎監督の「鬼畜」や、
大島渚監督の「少年」、
是枝裕和監督の「誰も知らない」など、
これまでにも多くの傑作や話題作が生まれています。
今回の作品も、
自堕落な生活を送り、
子供に自分の金の無心をさせて、
何とも思わないような母親と、
そんな母親から離れることの出来ない息子との、
長い年月を経た愛憎劇が、
結局は肉親を巻き込んだ犯罪で、
終わりを告げるまでを描いています。
基本的に救いの欠片もない暗い話ですが、
登場人物の誰にも感情移入をさせないように、
全編はドライなタッチで貫かれていて、
これまでにない役柄を熱演した、
母親役の長澤まさみさんのお芝居が、
くっきりと浮かび上がってくるような仕上がりです。
息子を演じた2人の少年の芝居も良いですが、
間違いなくこれは長澤まさみさんの存在を観る、
という趣きの映画です。
観る前には、
長澤さんにこの役柄というのは、
ちょっと美形過ぎるのではないかしら、
というように思うのですが、
観ているうちにその美しい仮面の内側の、
濃密な嫌らしさや狂気じみた情熱が、
ふつふつと湧き上がって来るような感じがあって、
後半には違和感なく、
その役柄として感じることが出来ます。
ともかく、
周りにいたら背筋が嫌悪に震えるような存在なのですが、
それを長澤さんが演じることで、
こちらはそこまでの嫌悪感なく、
その存在を受け入れることが出来るのです。
後半では特にメイクなどすることなく、
自然体で老け役を演じているのですが、
それが違和感なく感じられるところが凄いと思います。
1年前に「キングダム」をやって「コンフィデンスマンJP」をやって、
それでこれでしょ。
その振り幅には素直に感心します。
阿部サダヲさんの徹底したダメ男も凄まじく、
2人の絡みの濃厚さは、
かつての大竹しのぶさんと豊川悦司さんなどを彷彿とさせました。
一方で監督の演出や絵作りについては、
正直あまり個性を感じませんでしたし、
あまり好みではありませんでした。
音楽は岩代太郎さんなのですが、
たとえばラストの殺人の場面などは無音にしておきながら、
その後で血まみれの少年が出て来ると、
そこでドカンと音を入れるでしょ。
こういうのは僕は嫌いです。
何か、場面に寄り添うという感じではなくて、
「ここで音を聴け!」みたいな感じでしょ。
これなら音効などない方がいいのに、
と思いました。
絵作りもあまり美学や個性を感じませんよね。
全体が平板で、間合いもずっと同じでしょ。
最後のところとか、いくら何でもため過ぎですよ。
もっとさらっとやった方がいいのに、
と感じました。
ところどころで遠景の長回しがあるのも、
如何にも「やってやったぞ」という感じで鼻につくし、
室内撮影とか、
ここにカメラを置きました、
みたいな構図が多いですよね。
ちょっと工夫を感じませんでした。
そんな訳で映画としては、
もう少し個性があって美意識のある映画が好きなので、
ちょっと好みではなかったのですが、
テーマはなかなか重く扱いも面白く、
長澤さんの芝居は凄いので、
一見の価値はある作品だと思います。
ご興味のある方はどうぞ。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。
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- 作者: 石原 藤樹
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2020/07/18
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