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新型コロナウイルス感染症の重症化とチェックポイント阻害剤 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナウイルスと癌治療.jpg
Nature Medicine誌に2020年7月掲載されたレターですが、
癌の患者さんで新型コロナウイルス感染が重症化する因子についての報告です。

高血圧や糖尿病などの患者さんで、
新型コロナウイルス感染症の重症化が多い、
という報告は複数認められます。

しかし、癌の患者さんで、
新型コロナウイルス感染症の重症化が多いかどうかについては、
データによっても違いがあり、
まだ明確は結論は得られていません。
これまでの報告で中国やイタリアにおいては、
癌の患者さんの新型コロナウイルス感染症による死亡率は、
そうでない場合より高いと報告されていますが、
癌の患者さんと言っても、軽症から重症まで幅広く、
どのような治療を受けているのかによっても、
その免疫の状態などは大きく異なっているので、
癌の患者さんを一括りにして論じることに、
そもそも問題があるという気もします。

今回の検証はアメリカの単独施設のもので、
アメリカの癌センターにおいて癌の治療中に、
有症状の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染した、
423名の解析を行っています。

感染者のうち40%は入院治療を行い、
20%は急性呼吸窮迫症候群の状態となって、
そのうちの9%は人工呼吸器を装着しています。
感染者の12%が発症30日以内に死亡しています。

この数字は世界的に一般住民の入院患者の死亡率と、
ほぼ同等の数字となっています。
一方で癌患者の入院中死亡率のデータは、
一般患者と同等のものと、
より高いものとがあり、
その違いは不明ですが、
おそらくは患者の重症度やどんな治療をしているのかに、
影響されている可能性が高いと考えられています。

ここで急性呼吸窮迫症候群になるリスク因子を解析すると、
年齢が65歳を超えると、それ以下より1.67倍(95%CI:1.07から2.60)、
オブジーボのような免疫チェックポイント阻害剤による治療を、
行なっていると行なっていないより2.74倍(95%CI:1.37から5.46)、
それぞれ有意に重症化のリスクは増加していました。
一方で手術治療や通常の抗癌剤による化学療法治療群では、
こうした重症化のリスク増加は認められませんでした。

免疫チェックポイント阻害剤は、
癌細胞によって抑制されているT細胞機能を、
活性化させるような働きがあり、
非常に有用な薬剤である一方、
免疫系の過剰反応による有害事象を、
生じやすい事が指摘されています。

新型コロナウイルス感染症による肺病変の重症化も、
免疫の過剰反応が関連しているという可能性が指摘されているので、
そのためにリスクが増加している、
という可能性が想定されます。

これはまだ単独施設の報告ですし、
そのメカニズムも推測に過ぎませんが、
免疫チェックポイント阻害剤を使用中の方は、
より感染予防に留意するべきだ、
ということは間違いがないように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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