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新型コロナウイルス感染症に対するアデノウイルスベクターワクチンの効果(イギリス、オクスフォード大) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナウイルスとアデノウイルスベクターワクチンイギリス.jpg
Lancet誌に2020年

世界各国で新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の、
ワクチン開発が行われています。

今回ご紹介するのは、
先日日本政府が輸入の確保を要請してニュースになった、
イギリス、オックスフォード大の研究チームによるもので、
以前5月の時点で中国政府と中国企業が開発して臨床試験結果を報告したものと、
ほぼ同じ製法のアデノウイルスベクターワクチンです。

ウイルスベクターワクチンというのは、
他の無害なウイルスの遺伝子の一部に、
目標とするウイルスの遺伝子を取り込ませて、
それを人間に感染させることにより、
免疫を誘導しよう、という手法のワクチンです。

中国ではアデノウイルス5型という、
弱毒性の人間にも感染するウイルスを、
ベクター(乗り物)として使用していましたが、
今回のイギリスのワクチンは、
チンパンジー由来の人間には感染しないアデノウイルスを、
ベクターとして利用して、
そこに新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の、
突起(スパイク)部分の蛋白質の遺伝子を挿入し、
それを接種することで人間にこのアデノウイルスを感染させます。

このウイルスは人間の細胞に感染しますが、
そこで増殖はしないように調整されています。
結果としてウイルスに対して身体が免疫を誘導するので、
それが新型コロナウイルスにも有効に作用する、
という仕組みです。

生ワクチンや不活化ワクチンほど量産に時間が掛からず、
ウイルスを感染させるので、
不活化ワクチンより細胞性免疫の活性化も強く期待出来る、
という点が利点です。

中国のワクチンはエボラ出血熱ワクチンで開発には成功しており、
イギリスの今回のワクチンはMERSワクチンとして開発した経緯があり、
いずれのワクチンも大規模な臨床応用、
というところには至っていない点に、
若干の不安はありますが、
比較的成功の可能性の高い技術ではあるのです。

今回発表された臨床試験は、
イギリス国内の5カ所の施設において、
新型コロナウイルスには感染したことのない1077名の被験者を、
クジ引きで2つの群に分けると、
一方はこのアデノウイルスベクターワクチンを、
1回もしくは27日間隔で2回の筋肉注射の接種を行ない、
もう一方は髄膜炎菌のワクチンを代わりに接種して、
その後の抗体上昇や細胞性免疫の賦活などの、
身体の免疫反応を比較検証しています。
このワクチンは高率に発熱や倦怠感などの症状が出るので、
アセトアミノフェンが摂取後に一部の群では使用されています。

その結果、
1回の接種で全体の91%に充分な抗体上昇が認められ、
2回の接種により100%に抗体上昇が確認されました。
抗原に特異的なT細胞の賦活化は、
接種後2週間をピークとして確認されましたが、
2回目の接種によりより刺激される、
ということはありませんでした。

副反応については、
発熱や関節痛、頭痛などが主体で、
アセトアミノフェンの使用により一定の緩和効果が認められ、
重篤なものはありませんでした。

このように短期の免疫誘導と安全性とが、
今回の試験では確認され、
1つのハードルは超えたという結果です。

このワクチンが果たして、
実際の感染予防にどの程度の役割を果たしうるのかは、
まだ未知数ですが、
おそらく海外でのより大規模な臨床試験により、
一定の有効性が担保されれば、
日本での通常の審査は、
かなり端折るような形で導入されることは間違いがなく、
他のワクチンの進捗も見ながら、
今後ワクチンの接種に向けての動きが、
活発になるのは間違いがなさそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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