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新型コロナウイルス重症事例に対するステロイド治療の効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので外来は午前中で終わり、
午後は事務作業などの予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナウイルスに対するデキサメサゾンの有効性.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2020年7月17日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症に対する、
ステロイド治療の効果を検証した論文です。

新型コロナウイルス感染症は、
8割以上の患者さんは軽症で推移しますが、
肺炎から重篤な呼吸不全に進行するケースがあり、
人工呼吸器の装着が必要となるような事例では、
その致死率も25%以上と報告されています。
上記文献にあるイギリスのデータでは、
入院して人工呼吸器を装着した事例の致死率は、
37%と記載されています。

抗ウイルス剤のレムデシビルは、
患者の回復までの期間を短縮する効果が、
臨床試験で報告されていますが、
現状重症の事例で明確に死亡リスクを低下させた、
という信頼のおけるデータが、
存在しているような治療はありません。

新型コロナウイルス感染症の肺病変の重症化には、
免疫系の過剰な反応が影響しているのでは、
という考え方があります。
炎症性サイトカインなどの増加は、
その可能性を示唆しています。

デキサメサゾンなどの、
強力な合成ステロイド(糖質コルチコイド)剤には、
強い抗炎症作用と免疫抑制作用があり、
免疫の暴走を抑えるような効果が期待されます。

その一方で免疫の抑制は、
ウイルス感染の経過を悪化させるような可能性も、
否定は出来ません。

強力なステロイド剤の使用は、
諸刃の刃という側面があるのです。

これまでに少数の事例のデータにおいて、
メチルプレドニゾロンというステロイド剤の使用により、
新型コロナウイルス感染症の予後が改善した、
というようなデータはあるものの、
大規模なデータや介入試験での有効性は確認されておらず、
現状のガイドラインの多くにおいて、
ステロイドの使用は推奨されていません。
しかし、実際には臨床においてステロイド剤は、
少なからず使用されているのです。

今回の研究はそのギャップを埋めようとしたもので、
イギリスにおいて新型コロナウイルス感染症と診断されて入院した患者さんを、
1対2の比率でクジ引きで2つの群に分けると、
4321名は通常の治療を行ない、
2104名はデキサメサゾンというステロイドを、
経口もしくは経静脈投与で、
1日6ミリグラムを最長10日間使用して、
登録後28日の時点での生命予後を比較検証しています。

その結果、
デキサメサゾン使用群の22.9%に当たる482名と、
通常治療群の25.7%に当たる1110名が、
登録28日の時点までに死亡していて、
デキサメサゾンの使用は28日間の死亡リスクを、
17%(95%CI:0.750.93)有意に低下していました。

これを人工呼吸器使用者のみで解析すると、
デキサメサゾン使用群は通常治療群と比較して、
28日間の死亡リスクを36%(95%CI:0.51から0.81)、
より大きく低下させていました。
一方で人工呼吸器や酸素療法を施行していない患者のみの解析では、
デキサメサゾンの使用は生命予後に有意な影響を与えていませんでした。

このように、今回の大規模な検証においては、
重症の事例において、
デキサメサゾンの使用は患者の生命予後を、
短期的に改善していました。

このデータは更なる検証が必要ですが、
事例を選べばステロイドの使用にょり、
患者の生命予後が改善する可能性が示されたことの意義は大きく、
この結果を受けて、
レムデシビルに次ぐ新型コロナウイルス治療薬として、
日本でもデキサメサゾンが承認の運びとなったようです。
実地臨床での有効性など、
今後の推移に注視したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。

実年齢56歳、血管・骨年齢30代の名医が実践!  コーヒーを飲む人はなぜ健康なのか?

実年齢56歳、血管・骨年齢30代の名医が実践! コーヒーを飲む人はなぜ健康なのか?

  • 作者: 石原 藤樹
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2020/07/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


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新型コロナウイルス感染症の後遺症(イタリア単独施設報告) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナウイルス感染の後遺症.jpg
JAMA誌に2020年7月9日ウェブ掲載されたレターですが、
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染回復後の、
後遺症についての報告です。

日本にでも報道などでは、
新型コロナウイルス感染症から回復後に、
全身倦怠感や微熱などの体調不良が、
持続しているというような話が聞かれます。

実際にクリニックで経験した患者さんでも、
回復後に体調不良が続いている、
というような話は聞くことがあります。

ただ、感染症の後の持続する体調不良というのは、
新型コロナウイルスに限ったものではありません。
「免疫のバランスが崩れている」というような説明がされることもあり、
病原体の抗原に対するアレルギー反応が、
持続するというような説明がされることもあります。
ただ、その裏付けとなるような明確な根拠が、
存在しているかどうかは甚だ疑問で、
感染のストレス後のうつ状態で、
説明されることもあります。

新型コロナウイルス感染症回復後の体調不良が、
この病気の特徴的な所見であるのか、
それとも他の感染症後の体調不良と、
変わることのない現象に過ぎないのかについては、
まだ明確なことが分かっていないのです。

今回の研究はイタリアの単独施設のもので、
発熱などの症状が改善し2回のPCR検査で陰性で退院した、
179名の患者を登録してその後の経過を観察し、
そのうちの14名は経過フォローを拒否し、
22名はその後にPCR検査が再度陽性となったため除外して、
結果として143名の解析を行なっています。

その結果平均で60.3日の経過観察において、
体調不良の症状が全くなかったのは、
全体の12.6%に当たる18名のみで、
残りの87.4%の患者さんは、
その後も体調不良の症状が持続していました。

最も多かったのは全身倦怠感で53.1%、
呼吸困難が43.4%、関節痛が27.3%、
胸部痛が21.7%と続いていました。
44.1%の患者さんはこうした症状により、
生活の質が低下していました。
発熱などの急性症状を呈したケースは認められませんでした。

このように、
検査が陰性化して臨床的には治癒とされた患者において、
8割を超える比率でだるさなどの症状が、
平均で2か月以上持続していました。

これが新型コロナウイルス感染症の、
何らかの特徴によるものなのか、
それとも他の感染症後の体調不良と、
同じ性質のものなのか、
ストレスに起因する心因反応のようなものなのか、
と言った点はまだ不明ですが、
多くの回復後の患者さんが、
こうした症状に苦しんでいること自体は、
おそらくは事実で、
今後この現象をより詳細に解析し、
より大規模な検証を行なって、
その原因に迫る必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。

実年齢56歳、血管・骨年齢30代の名医が実践!  コーヒーを飲む人はなぜ健康なのか?

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滅菌によるマスクの機能低下 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
マスク滅菌後の有効性.jpg
JAMA Network Open誌に2020年6月15日に掲載されたレターですが、
サージカルマスクやN95マスクなどの医療用マスクを、
滅菌した場合の有効性の低下についての論文です。

新型コロナウイルスの感染拡大の予防に、
人同士が接触する際のマスクの装着が、
有効であることは、
今では世界的に実証されている事実です。

欧米では病気でない人がマスクをする、
という習慣がなく、
そのため「マスクに予防効果はない」という意見が、
今年の3月くらいまでの時期には、
専門家の間でも強かったのですが、
その後世界的な新型コロナウイルスの流行の中で、
マスクの有効性は見直され、
勿論マスクで感染を全て予防できるという訳ではありませんが、
適切にマスクを使用することにより、
感染を8割は抑制することが出来る、
という知見が世界的に認められています。

マスクを巡る考え方は、
この数か月で劇的に変わったのです。

マスクにも多くの種類があり、
衣類の一部のように使用されている、
ファッション性の高いマスクは、
一定の予防効果はありますが、
ウイルスを含む粒子を、
食い止めるほどの力は持っていません。

医療関係者が通常装着しているサージカルマスクは、
5μm(5000nm)程度の大きさの粒子を、
濾過して捕捉する機能を持っています。

N95マスクと称されるより高性能のマスクは、
0.1から0.3μm(100から300nm)の粒子を、
95%以上濾過して捕捉する性能を持っています。
これはアメリカの規格です。

それに対抗して中国で作られた規格がKN95で、
KN95マスクというのは、
中国版N95マスクと言うべきものです。

ウイルス粒子の大きさは100nmくらいですから、
どんな高性能のマスクでも、
それを完全に濾過して捕捉するような機能は持っていません。
ただ、通常はウイルスは飛沫と共に、
一体となって降りかかってくることが殆どで、
飛沫粒子の大きさは5μm(5000nm)以上はあるので、
飛沫の予防という意味では医療用のマスクには、
充分な有効性があると言えるのです。

一方で通常の市販のマスクが濾過捕捉出来るのは、
10から100μm(10000から100000nm)とされています。

今は少し余裕のある状態ですが、
感染が急激に拡大するとマスク不足が問題となります。

マスクは使い捨てが原則です。

ウイルスの飛沫などを濾過捕捉することがマスクの役割ですから、
装着したマスクはそれ自体感染リスクのある不潔なものです。
従って、一度装着したマスクは手を触れず、
外した時にはそのまま廃棄することが原則です。

しかし、マスクがないのであれば、
何等かの形で再利用するしかありません。

そこで他の医療用具と同じように、
マスクを滅菌して再利用する、
という考え方が生まれました。

滅菌すれば確かに再利用は可能です。

しかし、滅菌によりマスクの性能に影響はないのでしょうか?

今回の研究では、
N95マスク、KN95マスク、サージカルマスクの3種類のマスクを、
過酸化水素による滅菌と二酸化塩素による滅菌という、
2種類の滅菌法で滅菌し、
その前後でマスクの性能を比較検証しています。

通常日本の医療施設での医療器具の滅菌は、
エチレンオキサイドガス滅菌か放射線滅菌が主体だと思いますが、
過酸化水素滅菌も、
ステラットという過酸化水素プラズマ滅菌器の使用が最近増加していて、
厚労省のN95マスク滅菌再利用の資料でも、
この滅菌器利用の記載があります。

N95マスクの指標とする、
濾過補足効率で見たところ、
N95マスクは97.3%、KN95マスクは96.7%、
サージカルマスクでも95.1%という、
高い濾過補足効率を示しました。

これを過酸化水素滅菌すると、
N95マスクが96.6%、KN95マスクが97.1%、
サージカルマスクが91.6%と、
軽度ながら滅菌による性能の低下が認められました。

二酸化塩素滅菌後には、
N95マスクで95.1%、KN95マスクで76.2%、
サージカルマスクでは77.9%と、
過酸化水素滅菌より滅菌による性能の低下は大きく認められました。

特に捕捉可能な粒子のうち、
最も小さいレベルである0.3μm(300nm)のみの濾過率でみると、
N95マスクでも86.2%に低下しており、
KN95マスクでは40.8%に、
サージカルマスクでは47.1%に、
と著明な濾過性能の低下が確認されました。

以上は1回のみの滅菌による影響なので、
複数回の滅菌処理を繰り返せば、
その性能はより低下することも推測されます。

このように、
滅菌法によってもマスクの性能に与える影響には違いがあり、
医療従事者の感染防御のためには、
日本においてもこうした検証をしっかり行った上で、
海外のデータを引用するだけの通達ではなく、
もっと実効性のあるマスク再利用の指針が、
作られることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。

実年齢56歳、血管・骨年齢30代の名医が実践!  コーヒーを飲む人はなぜ健康なのか?

実年齢56歳、血管・骨年齢30代の名医が実践! コーヒーを飲む人はなぜ健康なのか?

  • 作者: 石原 藤樹
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  • 発売日: 2020/07/18
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「コーヒーを飲む人はなぜ健康なのか?」内容ご紹介 [告知]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

今日は告知です。
それがこちら。
コーヒーの本.jpg
水曜日にもご紹介をさせて頂いたのですが、
新しい自著が今発売中です。

7月16日に発売され、
17日には書店の店頭に並んでいます。
ただ、そこまで目立つような場所には置かれていないので、
書店の方に場所を聞いて頂いてお探し下さい。
概ね実用書のコーナーにあるようです。

アマゾン、楽天などでも勿論販売しています。

こちらです。

実年齢56歳、血管・骨年齢30代の名医が実践!  コーヒーを飲む人はなぜ健康なのか?

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  • メディア: 単行本(ソフトカバー)





内容はコーヒーの健康効果を多角的に解説したもので、
生命予後の改善効果や、
糖尿病予防効果のように、
既に確立されているものから、
骨粗鬆症や癌に対する影響など、
まだ議論のあるもの、
そして抗ウイルス効果やダイエット効果など、
比較的最近になって明らかになったものまで、
詳細な分析を行っています。

2020年発表の論文も複数引用していて、
現時点で知見としては最新のものです。

後半ではお茶やココアなど、
他の健康効果が報告されている飲み物との比較や、
具体的な飲み方と健康との関係のQ&A、
実際のクリニックでの経験をもとにした、
コーヒー・エッセイ的なパートもあります。

コーヒーについての健康本も、
勿論これまでに沢山刊行されていますが、
ここまで詳細かつ広がりがあり読みやすいものは、
これまでにはなかったと、
個人的にそう思っています。

是非一度お手にとってご覧下さい。

よろしくお願いします。

そんな訳で今日はすいません、宣伝でした。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「MOTHER マザー」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
マザー.jpg
少年による祖父母殺人事件の実話をもとに、
生活の破綻した母子の奇妙で壮絶な絆を描いた、
大森立嗣監督の新作映画を観て来ました。

実話に基づいた親子の絆と犯罪というテーマは、
日本映画ではお馴染みのもので、
野村芳太郎監督の「鬼畜」や、
大島渚監督の「少年」、
是枝裕和監督の「誰も知らない」など、
これまでにも多くの傑作や話題作が生まれています。

今回の作品も、
自堕落な生活を送り、
子供に自分の金の無心をさせて、
何とも思わないような母親と、
そんな母親から離れることの出来ない息子との、
長い年月を経た愛憎劇が、
結局は肉親を巻き込んだ犯罪で、
終わりを告げるまでを描いています。

基本的に救いの欠片もない暗い話ですが、
登場人物の誰にも感情移入をさせないように、
全編はドライなタッチで貫かれていて、
これまでにない役柄を熱演した、
母親役の長澤まさみさんのお芝居が、
くっきりと浮かび上がってくるような仕上がりです。

息子を演じた2人の少年の芝居も良いですが、
間違いなくこれは長澤まさみさんの存在を観る、
という趣きの映画です。

観る前には、
長澤さんにこの役柄というのは、
ちょっと美形過ぎるのではないかしら、
というように思うのですが、
観ているうちにその美しい仮面の内側の、
濃密な嫌らしさや狂気じみた情熱が、
ふつふつと湧き上がって来るような感じがあって、
後半には違和感なく、
その役柄として感じることが出来ます。

ともかく、
周りにいたら背筋が嫌悪に震えるような存在なのですが、
それを長澤さんが演じることで、
こちらはそこまでの嫌悪感なく、
その存在を受け入れることが出来るのです。

後半では特にメイクなどすることなく、
自然体で老け役を演じているのですが、
それが違和感なく感じられるところが凄いと思います。

1年前に「キングダム」をやって「コンフィデンスマンJP」をやって、
それでこれでしょ。
その振り幅には素直に感心します。
阿部サダヲさんの徹底したダメ男も凄まじく、
2人の絡みの濃厚さは、
かつての大竹しのぶさんと豊川悦司さんなどを彷彿とさせました。

一方で監督の演出や絵作りについては、
正直あまり個性を感じませんでしたし、
あまり好みではありませんでした。

音楽は岩代太郎さんなのですが、
たとえばラストの殺人の場面などは無音にしておきながら、
その後で血まみれの少年が出て来ると、
そこでドカンと音を入れるでしょ。
こういうのは僕は嫌いです。
何か、場面に寄り添うという感じではなくて、
「ここで音を聴け!」みたいな感じでしょ。
これなら音効などない方がいいのに、
と思いました。

絵作りもあまり美学や個性を感じませんよね。
全体が平板で、間合いもずっと同じでしょ。
最後のところとか、いくら何でもため過ぎですよ。
もっとさらっとやった方がいいのに、
と感じました。
ところどころで遠景の長回しがあるのも、
如何にも「やってやったぞ」という感じで鼻につくし、
室内撮影とか、
ここにカメラを置きました、
みたいな構図が多いですよね。
ちょっと工夫を感じませんでした。

そんな訳で映画としては、
もう少し個性があって美意識のある映画が好きなので、
ちょっと好みではなかったのですが、
テーマはなかなか重く扱いも面白く、
長澤さんの芝居は凄いので、
一見の価値はある作品だと思います。

ご興味のある方はどうぞ。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。

実年齢56歳、血管・骨年齢30代の名医が実践!  コーヒーを飲む人はなぜ健康なのか?

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新型コロナウイルス感染症の重症化とチェックポイント阻害剤 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナウイルスと癌治療.jpg
Nature Medicine誌に2020年7月掲載されたレターですが、
癌の患者さんで新型コロナウイルス感染が重症化する因子についての報告です。

高血圧や糖尿病などの患者さんで、
新型コロナウイルス感染症の重症化が多い、
という報告は複数認められます。

しかし、癌の患者さんで、
新型コロナウイルス感染症の重症化が多いかどうかについては、
データによっても違いがあり、
まだ明確は結論は得られていません。
これまでの報告で中国やイタリアにおいては、
癌の患者さんの新型コロナウイルス感染症による死亡率は、
そうでない場合より高いと報告されていますが、
癌の患者さんと言っても、軽症から重症まで幅広く、
どのような治療を受けているのかによっても、
その免疫の状態などは大きく異なっているので、
癌の患者さんを一括りにして論じることに、
そもそも問題があるという気もします。

今回の検証はアメリカの単独施設のもので、
アメリカの癌センターにおいて癌の治療中に、
有症状の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染した、
423名の解析を行っています。

感染者のうち40%は入院治療を行い、
20%は急性呼吸窮迫症候群の状態となって、
そのうちの9%は人工呼吸器を装着しています。
感染者の12%が発症30日以内に死亡しています。

この数字は世界的に一般住民の入院患者の死亡率と、
ほぼ同等の数字となっています。
一方で癌患者の入院中死亡率のデータは、
一般患者と同等のものと、
より高いものとがあり、
その違いは不明ですが、
おそらくは患者の重症度やどんな治療をしているのかに、
影響されている可能性が高いと考えられています。

ここで急性呼吸窮迫症候群になるリスク因子を解析すると、
年齢が65歳を超えると、それ以下より1.67倍(95%CI:1.07から2.60)、
オブジーボのような免疫チェックポイント阻害剤による治療を、
行なっていると行なっていないより2.74倍(95%CI:1.37から5.46)、
それぞれ有意に重症化のリスクは増加していました。
一方で手術治療や通常の抗癌剤による化学療法治療群では、
こうした重症化のリスク増加は認められませんでした。

免疫チェックポイント阻害剤は、
癌細胞によって抑制されているT細胞機能を、
活性化させるような働きがあり、
非常に有用な薬剤である一方、
免疫系の過剰反応による有害事象を、
生じやすい事が指摘されています。

新型コロナウイルス感染症による肺病変の重症化も、
免疫の過剰反応が関連しているという可能性が指摘されているので、
そのためにリスクが増加している、
という可能性が想定されます。

これはまだ単独施設の報告ですし、
そのメカニズムも推測に過ぎませんが、
免疫チェックポイント阻害剤を使用中の方は、
より感染予防に留意するべきだ、
ということは間違いがないように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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全粒穀物の摂取と糖尿病発症リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
シリアルと糖尿病リスク.jpg
2020年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
精製していない全粒穀物の摂取による、
2型糖尿病の予防効果を検証した論文です。

糖尿病や他の生活習慣病の予防のための食事として、
米では白米が、パンでは白い食パンや菓子パンなどのパンが、
良くないというのはほぼ間違いのない事実です。

その一方で良いとされているのが、
米であれば玄米や五穀米などの茶色い米で、
パンであればベーグルや全粒小麦パンや胚芽パンなど、
茶色い色のついたパンです。

こうした米やパンは、
通常穀類を精製する過程で除去される、
外皮や胚芽などの部分を含んでいて、
そうした部位には食物繊維や抗酸化物質などが多く含まれ、
内臓脂肪の減少やインスリン抵抗性の改善、
抗炎症作用などがあると報告されています。
こうした作用が糖尿病や動脈硬化性疾患の、
予防に繋がると考えられているのです。

ただ、こうした全粒穀物由来の食品にも、
多くの種類があります。
全粒小麦パンや玄米以外に、
小麦ブラン(ふすま)由来のパンやクッキー、
全粒穀物を主体としたシリアル、オートミールなど、
多種多様です。

こうした食品毎にその健康効果を検証したような研究は、
これまでにあまり行われたことはありませんでした。

そこで今回の研究では、
アメリカの医療従事者を対象とした、
大規模な疫学データを活用して、
全粒穀物由来の食品と糖尿病発症リスクについての、
詳細な検証を行っています。

158259名の女性と36525名の男性を対象に検証した結果、
トータルな全粒穀物の摂取量を5分割して、
最も少ない群と比較して最も多い群では、
2型糖尿病の発症リスクは29%(95%CI:26 から33)有意に低下していました。

個別の食品の解析では、
その食品を月に1回未満しか摂取しない場合と比較して、
1日1単位以上摂取した場合、
全粒穀物由来のシリアルで19%(95%CI:0.77から0.86)、
全粒小麦パンで21%(95%CI:0.75から0.83)、
それぞれ有意に2型糖尿病の発症リスクは低下していました。
ポップコーンで同様の検証を行うと、
糖尿病リスクはむしろ増加する傾向を示していました。

それ以外の食品は摂取量が少ないので、
その食品を月に1回未満した摂取しない場合と、
1週間に2単位以上摂取する場合で比較すると、
オートミールで21%(95%CI:0.75から0.83)、
玄米で12%(95%CI:0.82から0.94)、
小麦ブランで15%(95%CI:0.80から0.90)、
小麦胚芽で12%(95%CI:0.78から0.98)、
2型糖尿病の発症リスクは有意に低下していました。

このように食品によるばらつきはありますが、
多くの全粒穀物由来の食品を多く摂取することで、
2型糖尿病の発症リスクは低下していました。

これは以前から指摘されていた知見ではありますが、
大規模な疫学データでその詳細が明確になったことは、
臨床においては非常に意義のあることで、
今後より精度の高い栄養指導や病気予防に繋がることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「コーヒーを飲む人はなぜ健康なのか?」発売のお知らせ [告知]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日は恐縮ですが少し宣伝です。
今週土曜日(7月18日)新しい自著が出ます。

こちらです。
コーヒーの本.jpg
コーヒーについての健康効果を、
多角的にまとめた1冊です。

コーヒーの病気の予防効果や生命予後改善効果については、
これまでにも何度もブログ記事で取り上げています。

2012年くらいを契機として、
コーヒーは身体に良くない飲み物から、
身体に良い飲み物へと、
劇的にそのポジションを変えたのです。

このコーヒーネタでは、
何度かテレビのバラエティにも出演をさせて頂きましたし、
健康教室でもまとめた話をさせて頂きました。
今回の本はそうした知見をたたき台にした上で、
2020年の時点でのコーヒーの健康効果の全てを、
様々な視点から解説したものです。

内容はなるべく堅苦しくならないように工夫を凝らしました。
勿論ライターは付けず、全て自分で書いています。
僕自身の経験を書いたところもありますし、
エッセイ的な部分もあります。
その一方で科学的な部分は正確さを重視し、
主だった参考文献も参照出来るように記載しています。

ちょっと副題はお恥ずかしいのですが、
これは販売上の方針なのでご容赦下さい。

いずれにしても、
これまで書いた本の中では、
一番自分らしい作品になったと、
その点では結構満足しています。

どうか、
もしご興味が少しでもありましたら、
是非お読み頂ければと思います。

以下にて予約受付中です。

実年齢56歳、血管・骨年齢30代の名医が実践!  コーヒーを飲む人はなぜ健康なのか?

実年齢56歳、血管・骨年齢30代の名医が実践! コーヒーを飲む人はなぜ健康なのか?

  • 作者: 石原 藤樹
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2020/07/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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野菜や果物の摂取量と糖尿病リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ビタミンと糖尿病リスク.jpg
2020年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
野菜や果物の摂取量と糖尿病リスクについての論文です。

糖尿病を予防するための食事というと、
果物や野菜を多く摂るということが、
必ず強調されます。

しかし、その根拠がどのくらいあるかと言うと、
実はあまり精度の高いデータがあるとは言えません。

一般住民を対象とした疫学研究は多くあるものの、
通常食事のアンケートのようなものが元になっているので、
その正確さはそれほど高いものとは言えないのです。

今回の研究ではアンケートの代わりに、
血液のビタミンCとカロテノイドの濃度を測定し、
それを野菜や果物の摂取量を推測する指標として活用し、
ヨーロッパで大規模なデータの解析を行っています。

ヨーロッパ8カ国で施行された、
340234名を登録し癌と食事との関連を検証した疫学研究のデータを活用して、
ビタミンCとカロテノイド濃度と、
経過観察中の糖尿病の発症リスクとの関連を検証しています。

その結果、
血液のビタミンC濃度とカロテノイド濃度が高いほど、
観察期間中の2型糖尿病の発症リスクは低下していました。
血液濃度毎に5つの群に分けると、
最も高い群は最も低い群と比較して、
糖尿病の発症リスクは50%有意に低下が認められました。

糖分の多い果物については勿論注意が必要ですが、
今回の血液濃度からの分析においても、
野菜と果物の摂取を多くすることは、
糖尿病の予防につながる食生活であることは、
裏付けられた結果と言って良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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高齢者におけるスタチン使用の有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
スタチンの高齢者使用の効果.jpg
2020年のJAMA誌に掲載された、
コレステロール降下剤スタチンの、
高齢者での有効性についての論文です。

スタチンはコレステロール合成酵素の阻害剤で、
広く使用されている動脈硬化性疾患の予防薬です。

心血管疾患(主に心筋梗塞)を一旦起こした場合の、
再発予防(二次予防)としての効果は、
75歳以上の年齢においてもほぼ確認されていますが、
まだ心血管疾患を起こしていない場合の、
起こさないための予防(一次予防)効果は、
75歳以上ではトータルには明確には確認されていません。

これは多くの臨床試験において、
年齢が75歳未満に設定されていることが多く、
それより上の年齢層ではデータは少ないのが主な原因ですが、
実際には世界的に高齢化は進行し、
むしろ75歳以上がスタチン治療の主体と言っても、
誤りではないのですから、
この点を明確にすることが急務であるのは間違いがありません。

今回の研究は、
これまでにもよく使用されている、
アメリカの退役軍人の医療データを活用して、
登録時に心血管疾患がなく、
スタチンも使用はしていない75歳以上の326981名を対象として、
観察期間中のスタチンの開始と、
その後の生命予後との関連を比較検証しています。

その結果、
17.5%に当たる57178名がスタチンを開始しており、
その後平均観察期間6.8年において、
スタチン未使用と比較して、
スタチン使用高齢者は、
総死亡のリスクが25%(95%CI:0.74から0.76)、
心血管疾患による死亡のリスクが20%(95%CI:0.78から0.81)、
心血管疾患の発症リスクが8%(95%CI:0.91から0.94)、
それぞれ有意に低下していました。

これは別個のデータを後から解析したものなので、
データの質としてはそれほど高いものではありませんが、
75歳以上から開始した一次予防目的のスタチンの使用にも、
一定の生命予後改善効果が示された、
という知見は意義のあるもので、
今後より精度の高い臨床試験において、
高齢者のスタチンの使用の可否が、
明確になることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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