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骨密度検査を繰り返すことに意味はあるのか? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
繰り返す骨密度測定の有効性.jpg
JAMA Internal Medicine誌に2020年7月27日ウェブ掲載された、
骨密度測定を繰り返し行うことの有効性を検証した論文です。

閉経後の女性では急激に骨塩量が減少し、
骨粗鬆症になると骨折のリスクが高まります。
主に問題となるのは、
背骨の圧迫骨折と足の付け根の大腿骨頸部骨折で、
どちらも寝たきりの大きな原因となります。

上記文献にあるアメリカの状況では、
アメリカの閉経後白人女性の、
2人に1人は生涯に骨折を経験するとのことです。

骨粗鬆症の治療薬は、
多くの新薬が登場するなど格段に進歩を遂げていて、
そのため骨密度(骨量)の検査を行なって、
骨量が減少している閉経女性を拾い上げ、
適切な治療を行なうことは、
骨折の患者さんを減らすことに繋がるので、
骨粗鬆症検診のような形で、
骨塩量を測定する検診を行なうことには意義があります。

アメリカのUSPSTF(アメリカ予防医学作業部会)は、
65歳以上の閉経女性に、
こうした検診を行なうことを推奨しています。

それでは、骨塩量の測定は、
複数回繰り返した方が、
より効果があるのでしょうか?

たとえば毎年1回骨塩量を測定すれば、
その変化を確認することが出来るので、
リスクの高い患者さんを、
より効率的に見付けることが出来るのではないか、
というように考えられます。

日本で行う健診というのは、
概ね定期的に繰り返して比較することを、
推奨していることが多いと思います。

ただ、世界的に見ると、
1回きりの健診と繰り返しの健診というのは、
基本的に意味合いの違うもので、
一度のみ行う検診としては意味があっても、
繰り返し行うことの有用性は確立していない、
というような健診の方が多いのです。

骨塩定量検査を、
初回の検査後4から8年後にもう一度行う、
という検診の有効性を検証した臨床研究がこれまでに2つあり、
その結果は骨折の有無にかかわらず、
有用性は乏しいというものでした。

今回の研究では、
アメリカで7419名の閉経女性に対して、
3年の間隔で2回の骨塩定量検査を施行し、
単回の検査による評価と、
2回の検査の比較による評価の、
いずれがより骨折リスクの予測に、
有効であるのかを検証しています。

その結果、大腿骨頸部骨折と主要部位の骨折のいずれにおいても、
初回のみの検査値での骨折リスク評価と、
2回の検査の変化率による骨折リスク評価との間には、
明確な違いは認められませんでした。

このように、
何度も検査をすればそれだけ骨折を予測出来るように、
何となく思いがちですが、
実際には1回のみの骨塩量の測定で、
予測には充分で、
治療効果などを確認するため以外の骨量の複数回の測定は、
検診としてはあまり意味のないものであるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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