新型コロナウイルス感染症の嗅覚味覚障害の経過 [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
JAMA Otolarygology-Head & Neck Surgery誌に、
2020年7月2日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症の特徴的症状の1つである、
嗅覚味覚障害の経過を検証した論文です。
特に軽症から中等症の新型コロナウイルス感染症において、
その診断に有用な特徴的症状が、
嗅覚味覚障害です。
これは通常は嗅覚障害と、
それに伴う味覚鈍麻が本態であると思われ、
嗅皮質周囲の粘膜に、
ウイルスが感染して炎症を起こすことが、
その要因であるように、
これまでの知見からは想定されます。
上記論文の著者らによる以前の報告では、
肺炎を来さないような軽症の新型コロナウイルス感染症のうち、
64%に嗅覚味覚障害があるとされています。
他にも同様の報告があり、
僕の経験でも概ねそのくらいの頻度で、
日本でも嗅覚味覚障害は発症していると思われます。
つまり、
重症の肺炎を来さないような新型コロナウイルス感染症を、
他の通常の感冒症候群などと見分ける上で、
この症状の存在は非常に重要なのです。
今回の研究はイタリアの単独施設において、
202名の軽症で自宅隔離の対応となった、
新型コロナウイルス感染症の患者の経過を観察し、
嗅覚味覚障害の経過を追っています。
202名のうち、
2名は経過観察中に突然死をしていて、
13名は経過観察中に協力を拒否され離脱しています。
そのため、最終的解析は残りの187名で行われています。
187名のうち60.4%に当たる113名が、
観察開始の時点で嗅覚味覚障害が認められています。
その時点で嗅覚味覚障害のなかった74名のうち、
11名は経過中に新たに症状を発症しています。
従って、トータルに見ると、
経過中に66.3%が嗅覚味覚障害を発症していることになります。
観察の開始は、
RT-PCRにて検査陽性となってから、
5、6日が経過した時点ですが、
それから4週間が経過した時点でも、
全体の36.9%に当たる69名では、
嗅覚味覚障害が持続していました。
嗅覚味覚障害が観察期間中に改善した事例において、
その平均持続期間は11.2日でした。
最初のRT-PCR検査(鼻腔もしくは咽頭で施行)から、
4週間後に再度行われたRT-PCR検査で、
68.1%は陰性となりましたが、
残りの31.9%は再度陽性でした。
そして遺伝子検査の陽性率と、
嗅覚味覚障害の持続との間には、
関連は認められませんでした。
このように、
新型コロナウイルス感染症が回復しても、
1か月以上嗅覚味覚障害が持続することは稀ではなく、
それは病状の重症さなどとは関連がないようです。
遺伝子検査によるウイルスの検出は、
発熱などの症状から回復しても、
より長期間持続することが稀ではなく、
全身倦怠感などの症状の持続も、
長期間継続することが稀ではありません。
この点がこの病気をどの時点で治ったとするのか、
判断を難しくしている厄介な点です。
以前は有症状の新型コロナウイルス感染症の場合、
2回続けてRT-PCR検査が陰性とならないと、
退院すら認められずに、
これが入院期間を長期化する要因となっていたのですが、
現状は検査による陽性確認から10日が経過し、
発熱などの症状が消失して72時間が経過すれば、
退院は可能と判断は変更されています。
無症状の場合は10日経てば隔離は解除してよしとされています。
これは感染に病気が治癒したという意味ではなく、
10日を超えて感染が周辺に拡大した、
という事例がないからで、
実験的にも採取されたウイルス遺伝子に、
感染力のないことは確認されているからです。
この病気の性質が明らかになるにつれ、
その対応は少しずつ合理的かつ効率的になってきてはいるのですが、
まだまだ分からない点は多く、
今後の検証の継続に注視したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
JAMA Otolarygology-Head & Neck Surgery誌に、
2020年7月2日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症の特徴的症状の1つである、
嗅覚味覚障害の経過を検証した論文です。
特に軽症から中等症の新型コロナウイルス感染症において、
その診断に有用な特徴的症状が、
嗅覚味覚障害です。
これは通常は嗅覚障害と、
それに伴う味覚鈍麻が本態であると思われ、
嗅皮質周囲の粘膜に、
ウイルスが感染して炎症を起こすことが、
その要因であるように、
これまでの知見からは想定されます。
上記論文の著者らによる以前の報告では、
肺炎を来さないような軽症の新型コロナウイルス感染症のうち、
64%に嗅覚味覚障害があるとされています。
他にも同様の報告があり、
僕の経験でも概ねそのくらいの頻度で、
日本でも嗅覚味覚障害は発症していると思われます。
つまり、
重症の肺炎を来さないような新型コロナウイルス感染症を、
他の通常の感冒症候群などと見分ける上で、
この症状の存在は非常に重要なのです。
今回の研究はイタリアの単独施設において、
202名の軽症で自宅隔離の対応となった、
新型コロナウイルス感染症の患者の経過を観察し、
嗅覚味覚障害の経過を追っています。
202名のうち、
2名は経過観察中に突然死をしていて、
13名は経過観察中に協力を拒否され離脱しています。
そのため、最終的解析は残りの187名で行われています。
187名のうち60.4%に当たる113名が、
観察開始の時点で嗅覚味覚障害が認められています。
その時点で嗅覚味覚障害のなかった74名のうち、
11名は経過中に新たに症状を発症しています。
従って、トータルに見ると、
経過中に66.3%が嗅覚味覚障害を発症していることになります。
観察の開始は、
RT-PCRにて検査陽性となってから、
5、6日が経過した時点ですが、
それから4週間が経過した時点でも、
全体の36.9%に当たる69名では、
嗅覚味覚障害が持続していました。
嗅覚味覚障害が観察期間中に改善した事例において、
その平均持続期間は11.2日でした。
最初のRT-PCR検査(鼻腔もしくは咽頭で施行)から、
4週間後に再度行われたRT-PCR検査で、
68.1%は陰性となりましたが、
残りの31.9%は再度陽性でした。
そして遺伝子検査の陽性率と、
嗅覚味覚障害の持続との間には、
関連は認められませんでした。
このように、
新型コロナウイルス感染症が回復しても、
1か月以上嗅覚味覚障害が持続することは稀ではなく、
それは病状の重症さなどとは関連がないようです。
遺伝子検査によるウイルスの検出は、
発熱などの症状から回復しても、
より長期間持続することが稀ではなく、
全身倦怠感などの症状の持続も、
長期間継続することが稀ではありません。
この点がこの病気をどの時点で治ったとするのか、
判断を難しくしている厄介な点です。
以前は有症状の新型コロナウイルス感染症の場合、
2回続けてRT-PCR検査が陰性とならないと、
退院すら認められずに、
これが入院期間を長期化する要因となっていたのですが、
現状は検査による陽性確認から10日が経過し、
発熱などの症状が消失して72時間が経過すれば、
退院は可能と判断は変更されています。
無症状の場合は10日経てば隔離は解除してよしとされています。
これは感染に病気が治癒したという意味ではなく、
10日を超えて感染が周辺に拡大した、
という事例がないからで、
実験的にも採取されたウイルス遺伝子に、
感染力のないことは確認されているからです。
この病気の性質が明らかになるにつれ、
その対応は少しずつ合理的かつ効率的になってきてはいるのですが、
まだまだ分からない点は多く、
今後の検証の継続に注視したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。
実年齢56歳、血管・骨年齢30代の名医が実践! コーヒーを飲む人はなぜ健康なのか?
- 作者: 石原 藤樹
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2020/07/18
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
2020-07-27 06:07
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