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降圧剤の種類と認知症リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
降圧剤と認知症リスク.jpg
2019年のLancet Neurology誌に掲載された、
高血圧の治療と認知症リスクについての論文です。

認知症と血圧との関係については、
これまでに多くの議論があります。

中年期以降の認知症発症前の高血圧が、
その後の認知症発症と強く結び付いていることは、
ほぼ実証されている知見です。

ただ、高齢になった時期の高血圧と、
認知症のリスクとの関係については、
血圧が低いとむしろリスクは高まる、
というような知見もあります。
しかし、有名なSPRINTという大規模臨床試験においては、
75歳以上の年齢層でも、
120mmHgを下回る目標値を設定した方が、
認知機能の低下も予防された、
という結果が得られています。

今回の研究は、
これまでのデータをまとめて解析したメタ解析ですが、
55歳以上の年齢における血圧値と、
その後の認知症リスクとの関係、
そして高血圧における降圧剤治療が、
認知症発症リスクに与える影響を、
降圧剤の種別ごとに検証しています。

登録時に55歳以上で認知症のない一般住民を、
7年以上観察した6つの疫学研究の、
トータルで31090名のデータをまとめて解析したところ、
血圧が収縮期で140mmHg以上もしくは拡張期で90以上あると、
降圧剤による治療をしている方が、
認知症の発症リスクは12%(95%CI:0.79から0.98)、
アルツハイマー病の発症リスクは16%(95%CI:0.73から0.97)、
それぞれ有意に低下していました。
この降圧剤治療による認知症予防効果は、
治療薬の種類による違いは認められませんでした。
また、血圧が収縮期で140未満かつ拡張期で90mmHg未満では、
降圧剤の使用による認知症発症予防効果は、
確認されませんでした。

このように、
比較的高齢の年齢層においても、
血圧が収縮期で140mmHg以上または拡張期で90mmHg以上の時には、
降圧剤の使用により、
一定の認知症発症予防効果があると考えられますが、
それは血圧を低下させることそれ自体によるもので、
使用する降圧剤には関係はないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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