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運動後の血圧低下に対するマウスウォッシュの効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日はクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療には廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
マウスウォッシュの血圧低下作用.jpg
2019年のFree Radical Biology and Medicine誌に掲載された、
運動後の血圧低下という生理現象と、
口内細菌とに関連があるのでは、
という面白い発想の研究についての論文です。

運動をするとその時は脈拍が増加して、
心臓から拍出される血液量も増え、
それにより血圧は上昇します。
その一方で、同時に血管は拡張し、
そのため運動をした後には、
脈拍が低下する一方で血管の拡張はしばらく持続するので、
今度は血圧が低下することになります。

この血圧の低下は、
血管の内皮細胞で産生される一酸化窒素が、
その原因であると考えられてきました。
しかし、最近の研究では血液中での一酸化窒素の産生を、
ブロックするような薬を注射しても、
運動による血管拡張作用は抑制されない、
というような結果も報告されています。

もしこれが本当であるとすると、
運動後の血管拡張には、
これまでとは別個のメカニズムが存在している、
という可能性が考えられます。

それはどのようなメカニズムでしょうか?

最近の研究によると、
血液中の一酸化窒素の25%は、
口の中で常在の細菌により産生される、
という報告があります。

それは事実でしょうか?

今回の研究はそれを検証する目的で行われたもので、
23名の健康なボランティアをくじ引きで2つの群に分けると、
一方は殺菌作用のあるクロルヘキシジンを含むうがい液で、
口の中をゆすぎ、
もう一方は殺菌作用はないうがい液で同じように口をゆすいで、
その後に同じ運動を行って、
その後の一酸化窒素の産生能と血圧の低下率を測定しました。

その結果、
口の中を殺菌してから運動を行うと、
殺菌しない場合と比較して、
運動中の一酸化窒素の産生能が低下し、
血圧の低下も有意に抑制されていました。

つまり、運動による一酸化窒素の産生と血圧低下は、
口の中の細菌が関連している現象だ、
ということになります。

実は口の中の細菌は、
身体の環境の維持に、
大きな役割を果たしているのかも知れません。

面白いですね。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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