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クロモジのインフルエンザ予防効果? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
クロモジのインフルエンザ予防効果.jpg
2019年のGlycative Stress Research誌に掲載された、
高級な楊枝で有名な香木のクロモジのエキスに、
インフルエンザ感染の予防効果があるとする臨床試験の報告です。

聞き慣れない雑誌ですが、
これは実は糖化ストレス研究会という日本の団体が、
発行している英文誌です。

クロモジというのは日本に自生する落葉低木で、
リナロールという物質を主成分とする良い香りがあり、
古くから高級な楊枝「クロモジ」として使用され、
またその成分は生薬のウショウとして、
養命酒の主成分の1つとしても使用されています。
養命酒の独特な香りは、
このウショウによるものなのです。

養命酒製造株式会社では、
このクロモジに抗ウイルス作用があるとする基礎研究をしていて、
それを元に愛媛大学との共同研究で、
今回臨床試験が行われました。

その結果が今回の論文です。

愛媛大学に勤務する135名の看護師を対象として、
クジ引きで2つのグループに分けると、
一方はクロモジ抽出物を含む飴を使用し、
もう一方は偽のクロモジ成分を含まない飴を使用して、
インフルエンザの流行シーズン12週間の経過観察を行なっています。
看護師は全員インフルエンザワクチンを接種しています。
飴は毎食後に1個ずつ使用し、
クロモジ成分を含む飴では、
67㎎のクロモジ抽出物が含まれています。

観察期間終了後に、
期間中のアンケートを実施し、
その結果を集計して比較します。

その結果、
期間中の風邪症状や発熱の頻度には、
両群で有意な差はありませんでしたが、
インフルエンザ感染の件数は、
クロモジ抽出物含有飴の使用群で2名(3.0%)であったのに対して、
偽の飴の使用群では9名(13.4%)で、
この差は有意と判断されました。
つまり、クロモジ抽出物の成分に、
インフルエンザ感染の予防効果のある可能性がある、
という結果です。

ただし…

この研究は一施設の職員のみが対象者となっていて、
インフルエンザの感染の診断も、
おそらくは迅速試験のみの結果です。
インフルエンザ感染の件数も少なく、
一応有意差は出ていますが、
感冒症状や発熱には差はないので、
これでクロモジにインフルエンザ感染予防効果があるとは、
とても言い難いように思います。
両群に勤務する病棟の偏りなど、
ちょっとしたバイアスがあれば、
こうした結果は簡単に出てしまうと思えるからです。

こうした結果がある程度の説得力を持つには、
もう1桁は間違いなく多い対象人数と、
より厳密な試験デザインが、
必要となるのではないでしょうか。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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