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「IT イット THE END “それ”が見えたら、終わり。」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日なのでクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
It それが見えたら終わり.jpg
2017年に公開された「IT イット “それ”が見えたら、終わり。」の続編が、
今ロードショー公開されています。

原作はスティーブン・キングのベストセラーで、
翻訳は厚い文庫本で4冊になる長大なもので、
主に1958年とその27年後の1985年の物語が、
錯綜するようにして展開されます。
その一方でこの映画版は前後編に分かれ、
2017年に公開された前作は、
原作の1958年のパートを独立させ、
年代は1980年代に置き換えて1本の映画にし、
今回の後編は原作の1985年のパートを、
ほぼ現代に舞台を移して描いています。

これはかなり頑張った映画であることは間違いありません。

ホラーなのに3時間近いという長尺ですが、
レトロなものを取り混ぜて、
次々と新奇な幻想シーンや怪物やおどかし演出が登場し、
ホラー百科事典的な原作を向こうに張って、
ホラー映画百科事典的な楽しい世界を高密度で展開させています。

この点はとても楽しいのです。

ただ、映画として面白いかと言うと、
前編と比べても正直あまり面白くはありません。

それは何故かと言えば、
原作が絶対に映像化しても面白くない、
というような代物だからです。

キングの作品はもともと、
古めかしく幼稚なストーリーを、
緻密で情報量の多い描写で蘇生させる、
というような趣向なので、
映画にしてしまうと、
その物語の間抜けさだけが、
直接的に感じられる結果となってしまうのです。

中でもこの「It」という作品は、
怪物が太古の昔に地球に落下した宇宙人、
という脱力的な設定になっていて、
実は女性で子供を卵で産みつけ、
それを踏みつぶされて悲しんだりしてしまいます。
最後は「お前なんかこわくないぞ」と言われただけで、
力を失いボコボコにされて殺されてしまいます。
間抜けで哀れで馬鹿馬鹿しくて、
とても怖くなどありません。

この怪物は、
人間に幻覚を見せて恐怖を味合わせるのですが、
子供は殺して食べてしまったりもします。
これもどうもよく分からなくて、
怪物に実体があるのかないのかそれも不明で、
実体がないようにも思われるのですが、
ラストには人間の暴力で退治されてしまうので、
実体があるとしか考えられない面もあるのです。
何かとてもヘンテコです。

また、いじめっ子で頭のイカれたヘンリーや、
ベヴァリーというヒロインの暴力夫が登場し、
その悪意のあるキャラが、
怪物の意識で操られる、という趣向になっているのですが、
結局大したことをしないままに、
2人とも間抜けに死んでしまうので、
「何だこりゃ」という感じになるのです。

映画では、
怪物が女性で卵を産む、という、
ヘンテコな設定や、
その正体が宇宙人であったという脱力オチは、
排除されているのですが、
それでも怪物のあやふやな設定は、
そのまま残されているので、
観ている方はモヤモヤしてしまいます。

また、ベヴァリーの夫は殆ど登場しなくしていますが、
ヘンリーはそのままに登場し、
原作と同じように間抜けな行動を繰り広げるので、
これも映画の緊張感をかなり削いでいました。

ただ、繰り返しになりますが、
これは映画のせいではなく、
原作の間抜けさなので仕方がないのです。

また、2つの時代が錯綜する原作に対して、
映画は子供時代と大人時代の2つに分離して、
それぞれ1本の映画にしています。
これは物語をスッキリさせるという意味では、
正解だったと思うのですが、
その一方で結局同じように怪物は退治されるので、
ラストの新鮮味が全くなくなってしまった、
という点では、
今回の後編の落胆の1つの原因ではあったように思いました。

そんな訳で大作の映画化として、
一定の水準には達していたと思いますが、
かなり脱力でガッカリの部分もありました。
ただ、これはもうキングの作品自体がそうしたものなので、
仕方のないことなのです。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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