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BCGワクチン接種と発癌リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療や産業医面談などに都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
BCG感染と発癌リスク.jpg
2019年のJAMA Network Open誌に掲載された、
BCGワクチン接種とその後の発癌リスクについての論文です。

BCGワクチンは牛の結核菌由来の生ワクチンで、
日本では1歳未満の月齢において、
剣山のような針を接種するという日本独自の方法で、
定期接種として行われています。

しかし、アジアなどの結核の流行地域では、
同様の接種が通常の注射として行われていますが、
欧米諸国では定期接種としては行われていません。
その有効性は肺外結核については認められていますが、
肺結核については臨床試験では不十分な効果しか認められず、
BCGを接種することで結核感染時にその診断が難しくなる、
というような点が問題として指摘されているからです。

BCGワクチンの効果は、
事例によっては50年以上持続する、
という報告があるほど持続性のあるものです。
結核の予防以外に、
BCGには膀胱癌の治療効果や、
免疫調整効果も報告されています。

BCGの長期効果をみた疫学データや観察研究において、
気になる報告としては、
接種者で白血病やリンパ腫、特に非ホジキンリンパ種のリスクが、
増加したという複数の報告があります。
その一方でリンパ腫のリスクが低下したとするものや、
変わらないとするものもあって一定していません。

今回の研究はアメリカ先住民に小児期にBCGワクチンを接種した、
ワクチンの有効性を検証するための1930年代の臨床試験の、
その後60年に渡るフォローアップのデータを活用したもので、
BCGワクチンの接種が、
その後の長期に渡る発癌リスクに、
どのような影響を与えるのかを検証しているものです。

1540名のBCGワクチン接種者を、
1423名のコントロールと比較したところ、
その後の生命予後には違いはなく、
癌の発症リスクは有意ではないものの、
BCG接種群で低い傾向がありました。
これはリンパ腫や白血病でも同様でした。
そして、肺癌の発症リスクについては、
62%(95%CI: 0.20から0.74)BCG接種群で有意に低下していました。

このように、
今回のアメリカ先住民での非常に長期の研究においては、
BCGワクチンの接種は、
その後の長期の肺癌リスクの低下に、
結び付いている可能性が示唆されました。

BCGワクチンは非常に興味深い性質を持つ生物由来製剤で、
今後の更なる検証に期待をしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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