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大腸ポリープ切除後の検査スケジュールについて [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
大腸ポリープ切除後の観察スケジュール.jpg
2019年のAnnals of Internal Medicine誌に掲載された、
大腸の腺腫性ポリープの経過観察方針についての論文です。

大腸癌の多くは、
大腸の腺腫性ポリープが、
遺伝子変異を蓄積することにより、
癌化に至るということが明らかになっています。

そして、
前癌病変である腺腫性ポリープを切除することにより、
大腸癌による死亡のリスクが、
明確に低下することも証明されています。

現行のアメリカのガイドラインにおいては、
大きさが1センチ未満のポリープを1から2個切除したか、
1センチ以上の異形成のないポリープを切除した時には、
その5から10年後に、
大きさが1センチ未満のポリープを3個以上切除したか、
少なくとも1つ以上の異形成のあるポリープを切除した時には、
その3年後に、
フォロー目的の大腸内視鏡検査を施行することを推奨しています。

ただ、このガイドラインの裏打ちとなる科学的知見は、
それほど多くはありませんし、
その費用対効果もあまり検証されていません。

今回の研究はマイクロシミュレーションモデルという、
仮想的人口モデルを統計的に検証したものですが、
低リスク病変(1センチ未満の腺腫性ポリープ1から2個)を切除した時と、
高リスク病変(1センチ未満の腺腫性ポリープ3から10個もしくは1センチ以上の腺腫)
を切除した時に病変を分類し、
その後のフォローの方針は、
全くフォローしない場合、
10年後に内視鏡検査を行なう場合、
低リスク病変は5年後、高リスク病変は10年後に内視鏡検査を行なうという、
通常のサーベイランス、
低リスクの病変は5年後、高リスクの病変は3年後に内視鏡検査を行なうという、
より念入りなサーベイランス、
の4つに分けてその有用性と費用対効果を検証しています。

その結果、
50歳で低リスク病変を内視鏡的に切除した場合、
全くその後のサーベイランスを行なわなければ、
生涯に大腸癌を発症するリスクは10.9%で、
これが高リスク病変であれば17.2%と計算されます。

ここで、
全くフォローしない場合と比較して、
10年後に内視鏡検査を行なうフォローにより、
そのリスクは39%、
通常のサーベイランスを行なうと46から48%、
念入りなサーベイランスを行なうと55から56%、
そのリスクは低下します。

ここで費用対効果を計算すると、
念入りなサーベイランスを行なっても、
それで健康な生活を1年余計に送るために必要な負担は、
多く見積もって10万ドルを超えることはなく、
通常妥当とされる費用対効果の基準を満たしていました。

このように、
今回の検証からは、
低リスク病変を切除した場合は5年後に、
高リスク病変を切除した場合は3年後に、
それぞれ内視鏡検査を行なうサーベイランスの有効性と、
費用対効果的にもそれが妥当であることが示されました。

日本においては、
あまりこうした場合の明確な基準はなく、
一定のガイドラインはあっても、
患者さんがもっと短い間隔で検査をしたい、
と言われれば、その通りになることが多いと思いますが、
概ね世界的に妥当とされる検査間隔が、
上記のようなものであることを理解しておくことは、
重要であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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