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川村毅「ノート」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
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吉祥寺シアターに、
川村毅さんの新作「ノート」を観劇に出掛けました。

川村さんは今年で劇作40周年で還暦だそうです。
僕は正直それほどのファンではありませんが、
第三エロチカには何度か足を運びました。
アングラの薫陶は確かに受けながら、
当時としては近未来を舞台にするなど、
SF的でスケールの大きな舞台設定が魅力でした。

その後紆余曲折はありながら、
演劇を現役で作り続けている、
その創作力とエネルギーには感心させられます。

最近では唐組と東京乾電池のコラボ公演に書き下ろした芝居が、
とても洒脱で味わいの深い作品で印象に残っています。

今回の新作はオーム真理教事件に真っ向から取り組んだ群像劇で、
記憶を失ったかつての幹部の1人が、
かつての教団幹部や関わり合いになった人々とのディスカッションの中で、
その記憶を思い出して行くという仕掛けにより、
あの事件を忘却してしまった多くの観客に対して、
主人公を媒介にその記憶に向き合ってもらうことを意図した、
骨太のお芝居です。

台詞の熱量においては、
久しぶりに第三エロチカ時代を彷彿とさせるものがあり、
論旨も明快でまずは水準を超える台詞劇になっていました。
基本的に動きのないセットですが、
プロジェクションマッピングで、
床や壁に抽象的な模様のようなものを映し、
その動きで時代の雰囲気のような部分を、
表現するという趣向も成功していたと思います。

ただ、真面目に取り組まれている分、
面白みに乏しい感じ、
全てが規格内に収まっているような感じはあります。
役者さんもある種の役割として存在している感じで、
人間ドラマとしての要素は希薄です。

もう少し血と肉のある個人の葛藤やドラマが、
事件の背後に浮かび上がって来ると、
より切実な作品になるように感じました。

これまでにも再演やリクリエーションにより、
作品に磨きを掛けることの多かった川村さんですから、
この作品についてもこれで完成形ではなく、
これからより深化した作品に、
進んでゆくことを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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