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新型コロナウイルス感染症の皮膚所見 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は夏季休診でクリニックは休診ですが、
訪問診療などには出掛ける予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナウイルス感染症の皮膚病変.jpg
2020年のDermatologic Therapy誌に掲載された、
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の皮膚病変についての論文です。

新型コロナウイルス感染症は多彩な全身症状を示し、
その中には多彩な皮膚症状も報告されていますが、
どのような皮膚症状が多いのか、
などの詳細はあまり明確にはなっていません。

今回の論文はトルコのイスタンブールの単独施設(病院)において、
210名の新型コロナウイルス感染症の入院患者を対象に、
皮膚病変の頻度と種類を観察しています。
患者のうち47名は入院中に集中治療室で管理されています。

患者のうち52名には何からの皮膚病変が認められました。

一番多かったのは手の接触皮膚炎で、
これは32.7%に認められました。
感染予防のため頻回に手を洗うことによるものの可能性が高く、
新型コロナウイルス感染との関連は低いと思われます。

次に多かったのは主に体幹に多い斑状の皮疹です。
その実例がこちら。
コロナウイルス感染症の体幹斑状皮疹.jpg
新型コロナウイルス感染症のみならず、
ウイルス感染で良く見られる皮疹です。

13.5%に見られたのが蕁麻疹で、
全身に見られるのが特徴です。
その実例がこちら。
コロナウイルスの蕁麻疹.jpg

7.7%に見られたのが下肢に多い出血斑です。
その実例がこちら。
コロナウイルスの下肢点状出血斑.jpg
これは血小板数や凝固機能とは無関係でした。

同じく7.7%に見られたのが血流障害による壊死で、
これは重症の事例に合併し易い血栓症や凝固障害の、
1つの現れと考えられます。
その実例がこちら。
コロナウイルス感染症の血行障害.jpg
これは凍傷に近いような病変です。

今回の検証では、
皮膚病変が見られる事例は、
重症化のリスクも高まると解析されています。

新型コロナウイルス感染症に伴う皮膚病変の意味は、
まだ明確なものではありませんが、
重症の事例に多いという知見もあることから、
皮膚病変のあるケースでは、
より慎重にその経過をみる必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。

実年齢56歳、血管・骨年齢30代の名医が実践!  コーヒーを飲む人はなぜ健康なのか?

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極私的新型コロナウイルス感染症の現在(2020年8月10日) [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日のためクリニックは休診です。
8月11日と12日はお休みを頂き、
13日からは通常通りの診療に戻ります。

ただ、9日は1日ずっとレセプトをしていて、
夜にはRT-PCR検査の結果説明を15分間隔で10人しましたし、
明日は訪問診療には廻りますので、
休みという感じはあまりありません。
今年は勿論奈良にも行きません。

東京の状況としては、
感染者は相変わらず多いのですが、
先週のような混乱は少し落ち着いているという印象はあります。

8月8日にRT-PCR検査を10人以上提出して、
結果は10日になるかなあ、と覚悟していたのですが、
9日の午後5時にはファックスが送られて来たので、
それから電話をかけまくって、
15分間隔でクリニックに来て頂いて、
順番に結果説明をしました。

2日前に陽性確認した方の濃厚接触者のご家族がいて、
軽症ですがもう入院になったとお話を聞いたので、
1週間ほど前よりは保健所の対応も迅速化していると感じました。

この病気は学校の寮のクラスターでも分かるように、
濃密な空間での集団生活では非常に高い感染率で、
周囲に感染を拡大させます。

従って、
家族や寮、シェハウスなど、
こうした集団で感染者が確認された場合には、
速やかな隔離が必須です。
一方で1人暮らしの軽症者であれば、
自宅療養で基本的には問題ありません。

ただ、現状の問題は自宅療養ではケアも医療もなく、
ただ放置されたような状態になってしまう、
ということです。

自宅療養は今後拡大するのであれば、
オンラインの形でも良いので、
主治医は決めて定期的に状況をお聞きするなど、
経過観察の体制づくりが必要ではないかと、
地域診療の立場からはそのように思います。

僕自身は自宅療養が想定されるような場合には、
「何か心配なことがあれば、
いつでも連絡をして下さい」
というように最近はお話するようにしています。

現状のシステムは、
敢くまで医療崩壊を起こさないということと、
重症化する患者に如何に医療を集中させるのか、
という点に力点があって、
圧倒的に多い軽症者をどのようにケアして、
感染の拡大を防ぎ、
患者さん1人1人に不安なく療養をしてもらうのか、
という観点がない点が問題なのです。

その意味ではゆるい感じで良いので主治医を決めて、
常に連絡が取れるような状況を、
作るのが良いのではないでしょうか?

現状は軽症者には一切治療はないのですが、
プラセボ(偽薬)でも良いので、
何かこれを飲めばある程度安心、
と思えるようなものがあると、
非科学的ではあってもメンタルケアとしては、
意味があるのではないかと個人的には思います。

その意味ではイソジンも発想としては悪くありません。

ただ、内分泌屋の立場としては、
大量のヨードをそのために使う、
というのはあまり推奨出来ません。
使う人は矢鱈と使うでしょうからね。

アズノールのうがいのようなものでも悪くないと思いますし、
感冒には一定の効果が報告されている、
亜鉛のサプリみたいなものでも良いのではないかしら。

バイオテロもどきの危険な行為を抑止するためにも、
軽症者や無症状感染者の不安を軽減し、
サポート出来るような態勢づくりが、
今後は重要になるように思います。

保健所の方も検査会社の方も病院の方も、
今本当に踏ん張っていらっしゃるというように思います。

これで良い方向に向けば良いとは思います。
現状の対策では、
これ以上やりようがないですものね。

僕も微力ながら、
日々できることをしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

こんな時期に何ですが、
出来れば下記書籍もよろしくお願いします。
発売中です。

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「コンフィデンスマンJPプリンセス編」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診ですが、
朝からしこしこレセプト作業をしています。

色々憂鬱ではありますが、
日曜日は気を取り直して趣味の話題です。

今日はこちら。
コンフィデンスマン.jpg
人気ドラマ、コンゲームを扱った、
「コンフィデンスマンJP」の映画版第二弾が、
今ロードショー公開されています。

新型コロナの公開遅れに、
東出昌大さんのスキャンダル、
三浦春馬さんの急死など、
幾多の困難の中での公開となりました。

このシリーズは台本の古沢良太さんが、
技巧的でとても好きなので、
いつも楽しみにしています。

ただ、古沢さんが台本を書いてコンゲームの話ですから、
さぞかし面白くなるだろうなと期待するのですが、
出来上がったものはその期待よりは、
少し低空飛行という感じはいつもあります。

映画の1作目も結構頑張っていたのですが、
海外ロケで大風呂敷を広げた割にはなあ…
という印象もありました。

海外ロケをして海外に売れるような映画になれば、
それは素晴らしいと思うのですが、
とてもそんな感じではないですよね。
そこがちょっと残念です。

おそらく2作ほぼ同時に撮影した感じだと思うので、
この映画2作目も、その雰囲気は1作目と変わりません。
登場人物もかなりダブっていますし、
構成もほぼ同じです。

ただ、前半の段取りの部分はかなり整理されていて、
1作目より見やすくなっていました。

どんでん返しというのか、肝心の騙しの部分は、
今回はかなり薄っぺらで、
誰でも想像は付いてしまう程度のものです。
ただ、大富豪の遺産相続というテーマで、
このラストに落とし込むというのは、
非常に複雑な味わいのあるハッピーエンドですし、
あまり類例のない感じで、
古沢良太さんの腕を感じました。

キャストはいつものメンバーは過不足のない芝居で楽しく、
劇画的悪党の江口洋介さんもますます快調です。
三浦春馬さんは今回はちょこっと出演なので、
複雑な気分になりますね。
今回のメインはヒロインを演じた関水渚さんで、
確かに悪くはないのですが、
この役は広瀬すずさんという感じですよね。
芳根京子さんもこういうのは上手いですね。
そのお二人と比較して考えると、
関水さんはちょっと格落ち感はありました。

いずれにしても、
大した映画ではないのですが、
鑑賞後にすっきりした気分になる、
と言う点では優れた娯楽映画で、
そこそこのお薦めではあります。

ご興味と暇なお時間があればどうぞ。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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極私的新型コロナウイルス感染症の現在(2020年8月8日) [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

新型コロナウイルス感染症(COCID-19)の感染が止まりません。

クリニックの検査でも、
この1週間は陽性率が高くなっていて、
診察上は「これは違うな」と思うようなケースでも、
陽性の事例が多く認められています。

間違いなく市中感染が拡大しています。

今流行が拡大しているのは、
間違いなく保健所などの対応が、
パンクしてしまっているからです。

クリニックでも家族などの濃厚接触者の唾液RT-PCR検査の依頼が、
この1週間くらいは多いのですが、
お聞きすると陽性者が出ても、
入院になるのか、宿泊療養となるのか、
自宅療養となるのかの対応がなかなか決まらず、
結果としてあまり感染防御が出来ないままに、
家族が一緒に暮らしていて、
更に感染が広がってしまう、
という悪循環になっています。

濃厚接触者が発熱などの症状を呈していれば、
その時点ですぐにRT-PCRを施行すれば良いのですが、
無症状の場合には、
その時点ですぐにRT-PCR検査を行なうことが、
必ずしも感染の拡大阻止に繋がるとは言えません。

無症状の感染者でのRT-PCR検査の陽性時期や期間は、
事例によりまちまちで、
文献的にもあまりまとまったデータがなく、
その時点での検査で陰性であることが、
「無罪証明」には決してならないからです。

今日検査が陰性であっても、
翌日に陽性になる可能性が充分にあるからです。

問題なのは検査を受けた多くの人にとって、
その検査は感染していないという、
安心のために行われていると理解されていることです。
濃厚接触者の検査は、
敢くまでどのくらいの感染の広がりが想定されるのかの、
「当たり」を付ける目的のもので、
感染と非感染の振り分けをするためではないのですが、
それを理解してもらうのは、
なかなか難しいのが実際です。

東京や大阪や沖縄で今起こっていることは、
市中感染の状態になっているのに、
泥縄的に検査数のみを増やしているので、
陽性となった場合の保健所など行政の対応が追い付かず、
それが却って感染をより広げる原因となっている、
という悲惨な状態です。

医療崩壊を食い止めるということに力点を置き過ぎたために、
多くの軽症事例の行き場がなくなって、
結果として感染を発見しても、
適切な対応が取れないために、
感染が拡大し続けているのです。

システム的な問題もあります。

クリニックで唾液のRT-PCR検査を行なって、
陽性になりますよね。

保健所に発生届をファックスで出し、
それから折り返しの電話で補足の説明をします。
保健所ではその情報を元に、
入院の必要性などの優先順位を付けて、
それを東京都の担当部署に送付します。
入院や宿泊療養の判断をするのは、
東京都になるのです。
品川区はほぼ収容はパンク状態で、
品川区在住でも品川区で入院や宿泊療養が出来るとは限りません。
その采配は全て東京都でしているのです。

単純に考えて、
これで毎日数百人の情報が都に集まり、
それを都内の宿泊施設や医療機関の情報と照らして、
対応を決めるだけで、
多くの時間が費やされてしまうのです。

それが更に地区の保健所に伝えられ、
それから本人や家族に伝えられるということになるのです。

このシステムは、
医療崩壊を防いで、
重症の患者を効率的に入院させる、
と言う点では一定の効果を挙げています。

しかし、感染を収束させるという点では、
全く機能しないばかりか、
むしろ感染の拡大を助長してしまうのです。

軽症者や無症状感染者の多くは、
適切な決定がなされないまま、
自分達の責任で、
家族や周辺の人達と、
一緒に生活せざるを得ないからです。

RT-PCR検査を増やしても、
この状況は全く解消はされません。

検査は症状が出た時点で、
速やかに行なえるという体制があればいいのです。
そのスピード感こそが命であって、
無症状の人に検査をして、
陰性で安心することには何の意味もありません。
現状は無症状の人に「安心」のための検査を多数行うことで、
結果として検査機関もパンクして、
迅速に出るべき結果が却って遅延してしまっているからです。

家族や会食をした友人、
同じフロアで仕事をしている同僚が、
新型コロナウイルス感染症と診断された時、
周辺で長く接触していた人に、
症状がなくても一旦検査をすること自体は、
悪いことではありません。
ただ、その時の検査で陰性であっても、
ある程度の確率では既に感染していると、
そう想定した方が良いので、
陰性であっても濃厚接触であれば、
陽性として経過をみることが必要なのです。

無症状の濃厚接触者は、
感染している可能性を念頭に、
周囲との接触を避けて2週間(期間には別の意見もあります)
経過をみることが何より必要なのです。
その間に症状が出現すれば、
速やかに検査を行ないますが、
無症状のままに経過していれば、
必ずしも検査をする必要はないのです。

これが無理な状態となれば、
もうロックダウンしか手はありません。

今重要なことは、
陽性患者を迅速に隔離することです。
そのためにはマンパワーが圧倒的に不足しているのです。

飲食店や映画館などが感染防御の対策を取ることは、
確かに新規の感染者の増加予防には役立ちます。

しかし、今最も感染拡大の要因となっているのは、
家族などでの周辺の感染拡大なのです。
それを防ぐためには、
感染者が発見された段階で、
速やかにその患者を隔離出来るような対策が必要です。
たとえば1人暮らしであれば、
体調をみながらの自宅療養で問題はないのです。

現状は重症者以外の行き先を決めるのに、
数日から1週間くらいの時間が掛かってしまい、
その間に感染が周辺に拡大し、
それが更に周辺に拡大するという、
いたちごっこの悪循環に陥っているのです。

これでは絶対に感染は収束しません。

現状の問題は行政が感染収束の対策を取っていない、
ということです。
最悪の事態を免れるための対策は取られているのですが、
それは感染拡大を抑えるための対策ではない、
と言う点が問題なのです。
しかし、このペースで感染が拡大すれば、
医療崩壊を防いでいる堤防もいずれは決壊して、
最悪の事態に至ることは、
もう火を見るより明らかです。

堤防があるので、
川の増水を実感出来ない、
というのが現在の東京の状態です。

どうか一刻も早く、
感染者が迅速に振り分けられ、
それぞれのあるべき場所に速やかに隔離されるための、
そうした対策に努力を集中して下さい。

理性のある人が少しでもいることを祈りつつ、
今日も僕なりに必死に、
診療に当たりたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

一刻も早くこの状態が解消されますように。

石原がお送りしました。
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ビタミンDによるうつ病予防は有効か? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ビタミンDとうつ病リスク.jpg
2020年のJAMA誌に掲載された、
ビタミンDのサプリメントのうつ病予防効果を検証する、
介入試験の論文です。

中高年のうつ病は腹痛や胸部痛など、
身体症状がメインとなることも多く、
治療にも困難が多いという特徴があります。

また、中高年のうつ病というのは、
脳梗塞や虚血性心疾患、認知症などを合併することが多く、
身体の器質的な疾患が、
その発症に関連しているという考え方もあります。

ビタミンDはカルシウムの吸収を促進するなど、
骨代謝に深く関わっているビタミンですが、
血液のビタミンD(25(OH)D)濃度が低値であると、
その後中高年のうつ病を発症しやすいというデータがあります。

この知見は、
ビタミンDの不足が続くことが、
何らかのメカニズムで中高年のうつ病の発症に結び付いている、
という可能性を推測させます。

それでは、
中年の時期にビタミンDを補充することで、
その後のうつ病の発症を予防することが出来るのでしょうか?

この点についてはこれまでに、
複数の臨床試験が行われていますが、
明確な結論に至っていません。

今回の研究はアメリカにおいて、
50歳以上の一般住民18553名を対象として、
ビタミンDやオメガ3系脂肪酸のサプリメントの、
うつ病予防効果を検証したもので、
そのうちビタミンDのみの効果をまとめたものです。

対象者をクジ引きで分け、
一方はビタミンDのサプリメントを、
コレカルシフェロールで1日2000IU使用し、
もう一方は偽サプリメントを使用して、
中間値で5.3年の経過観察を行なっています。

その結果、
ビタミンDのサプリメントの使用は、
観察期間中のうつ病の発症リスクに、
有意な影響を与えませんでした。

この試験はうつ病の発症を見るには、
観察期間が短すぎるという気がしますし、
対象者ももともとは癌や心血管疾患の予防効果のための試験なので、
うつ病の発症予防効果をみるには、
適していなかったという可能性もあります。

従って、
対象者を選んで長期の検証を行なえば、
肯定的な結果が得られたという可能性も否定は出来ませんが、
少なくとも一般住民にサプリメントとしてビタミンDを使用しても、
それがうつ病の予防に結び付く、
という可能性はあまりないと考えて良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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新型コロナウイルス感染症治療薬のメタ解析 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナウイルスの治療のメタ解析.jpg
2020年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
2020年7月の時点での新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療についての、
これまでの臨床データをまとめて解析した、
システマティックレビューとメタ解析の論文です。

新型コロナウイルス感染症の治療薬は、
多くの候補となる薬剤が検証されていますが、
未だに決め手となるような薬剤はありません。

今回の研究では、
これまでの臨床データのうち、
介入試験と呼ばれる、
患者さんを登録して治療薬の効果を比較した、
比較的信頼性の高い23の臨床試験データを、
まとめて解析しその比較を行なっています。

その結果、
多くの試みられた治療の中で、
ステロイド(グルココルチコイド)の使用は、
通常の治療と比較して、
一定期間の死亡リスクを12%(95%CI:0.80から0.97)、
有意に低下させていました。
レムデシビル、リバビリン、ヒドロキシクロロキン、インターフェロンβ、
ロピナビル・リトナビルなどそれ以外の治療薬は、
死亡リスクを有意に低下させることはありませんでした。

人工呼吸器装着のリスクについてみると、
そのリスクを有意に低下させたのは、
矢張りグルココルチコイドのみで、
その使用は人工呼吸器装着のリスクを、
26%(95%CI:0.59から0.93)有意に低下させていました。
それ以外の薬剤では人工呼吸器装着のリスクを、
有意に低下させるものはありませんでした。

症状回復までの期間を短縮した、
というデータのある薬剤は3種類で、
ヒドロキシクロロキンが平均で4.5日間、
レムデシビルが平均で2.6日間、
ロピナビル・リトナビルが平均で1.2日間、
それぞれ未使用と比較して症状持続期間を短縮していました。
ただ、データの信頼性においては、
レムデシビルが中等度である一方、
他の2つの薬剤のデータの信頼性は、
それほど高いものではありませんでした。

このように、介入試験のレベルで、
現時点で感染症の予後を、
明確に改善したというデータがあるのは、
ステロイド剤のみで、
それ以外の薬や治療に、
そうした有効性は確認されていません。

観察研究や非常に少人数の臨床研究では、
びっくりするような画期的な効果が、
報告されているものもあるのですが、
現時点ではあまり信用のおけるものではなく、
再現性もないので、
あまり鵜呑みにはしない方が良さそうです。

新型コロナウイルス感染症の制圧は、
まだまだ険しい道のりであるようです。

それでは今日はこのくらいで。

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ヒドロキシクロロキンは新型コロナウイルス感染症の発症予防に有効か? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は終日レセプト作業の予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
クロロキンの新型コロナ発症予防効果.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2020年6月3日ウェブ掲載された、
ヒドロキシクロロキンの新型コロナウイルス感染症に対する、
暴露後の発症予防効果についての論文です。

新型コロナウイルス感染症(Covid-19)に対する治療薬は、
複数開発され使用されていますが、
今のところ決め手となるような薬はありません。

治療薬の臨床試験は、
その殆どが入院して人工呼吸器が必要とされるような、
重症の事例をその対象としています。

勿論重症の事例の予後を改善することは、
非常に重要なことですが、
今回の感染力が非常に強い感染症においては、
患者さんに接触して感染したリスクのある人が、
その時点で使用することにより、
病気の発症を予防するような薬があれば、
それも流行の拡大阻止のために、
重要な役割を果たすことは間違いがありません。

ヒドロキシクロロキンはマラリアの治療薬で、
基礎実験のレベルでは新型コロナウイルスに対する抗ウイルス作用を持ち、
特にアメリカとヨーロッパの一部において、
新型コロナウイルス感染症の治療薬として使用されています。

ただ、その有効性と安全性については議論があり、
このNew England…誌に掲載された複数の論文においては、
いずれもその有効性は否定されています。

ただ、これは入院中の主に重症事例の治療に対してで、
濃厚接触者の発症予防に有効かどうかは、
また別の問題です。

そこで今回の研究では、
アメリカとカナダにおいて、
新型コロナウイルス感染症の患者と濃厚接触した、
家族や同僚などの821名を対象に、
暴露から4日以内に、
本人にも主治医にも分からないように、
クジ引きで2つの群に分けると、
一方はヒドロキシクロロキンを5日間使用し、
もう一方は偽薬を使用して、
14日間の経過観察を行なっています。

その結果、
ヒドロキシクロロキン使用群の11.8%と、
偽薬群の14.3%が、
14日以内に新型コロナウイルス感染症を発症していて、
その差は統計的に有意ではありませんでした。
一方で有害事象はヒドロキシクロロキン群で有意に多く発症していました。
有害事象は吐気や下痢などの消化器症状が主体でした。

この結果は、
必ずしもヒドロキシクロロキンのこの用途での有効性を、
完全に否定するものではありませんが、
有害事象の多さも考慮すると、
安易に発症予防に使用することは、
現時点では控えるべきであるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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ヒドロキシクロロキンの中等症以上の新型コロナウイルス感染症への有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ヒドロキシクロロキンの新型コロナウイル感染症への有効性202007.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2020年7月23日ウェブ掲載された、
ヒドロキシクロロキンとアジスロマイシンの、
入院した軽症から中等症の新型コロナウイルス感染症に対しての、
有効性を検証したブラジルの臨床試験の論文です。

ヒドロキシクロロキンはマラリアの治療薬で、
基礎研究では新型コロナウイルスに対する、
抗ウイルス作用が報告されていて、
共に免疫調整作用があることより、
抗菌剤とアジスロマイシンとの併用も試みられています。

ただ、その臨床的有効性については、
一定の有効性があるとするものから、
無効であるばかりか、
有害事象による不整脈などで、
却って患者さんの予後に悪影響を与える可能性を、
指摘するような報告もあります。

日本では同様の病状に対しては、
ヒドロキシクロロキンよりアビガンが多く使用されているようですが、
世界的にはアビガンの方がずっとマイナーです。

今回の研究はブラジルで行われた介入試験で、
入院を要した有症状の新型コロナウイルス感染症で、
高濃度酸素吸入や人工呼吸器装着などの必要性はなかった、
軽症から中等症の667名を、
クジ引きで3つの群に分けると、
ヒドロキシクロロキン単独群と、
ヒドロキシクロロキンとアジスロマイシンの併用群、
通常治療群の3群に分けて、
治療開始後15日の時点での病状経過の比較検証を行なっています。

比較的軽症の入院事例に限っての臨床試験、
という点が今回のポイントです。
ヒドロキシクロロキンは400㎎を1日2回、
アジスロマイシンは500㎎を1日1回、
7日間継続しています。

その結果、
ヒドロキシクロロキン単独治療も、
アジスロマイシンの併用も、
通常治療と比較して、
15日の時点での有意な予後の改善には結びついていませんでした。
一方でヒドロキシクロロキンの有害事象である、
心電図のQT延長や肝機能の低下は、
治療群でより多く認められました。

このように、
今回のブラジルの臨床試験においては、
ヒドロキシクロロキンの効果は、
アジスロマイシンとの併用を含めて、
明確に確認されませんでした。

少なくともNew England…誌においては、
一貫してヒドロキシクロロキンの、
新型コロナウイルスに関する有効性は否定されているのですが、
他に肯定的なデータもあり、
まだ結論が出るのは先の話になりそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました、

下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。

実年齢56歳、血管・骨年齢30代の名医が実践!  コーヒーを飲む人はなぜ健康なのか?

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  • 作者: 石原 藤樹
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  • 発売日: 2020/07/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


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新型コロナウイルス感染症軽症事例の抗体持続期間 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナウイルス軽症例の抗体持続期間.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2020年7月21日にウェブ掲載されたレターですが、
新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の軽症事例における、
血液の抗体価の持続期間をみたものです。

こうした報告は複数あり、
その幾つかはこれまでにも紹介しています。

これまでの報告では、
当初想定されていたよりも、
血液中の抗体価が陽性となる期間は短く、
数か月で陰性化するケースが、
特に軽症や無症状で多い、
というものです。

今回のレターではアメリカにおいて、
殆どが軽症で人工呼吸器などは装着せずに治癒している、
34名の新型コロナウイルス感染症の患者を対象として、
その大部分で時期を変えて2回の血液中のIgG抗体の測定を行い、
その感染後の持続期間を検証しています。

抗体はウイルスの突起の結合部位に対するIgG抗体を、
ELISA法にて測定したものです。

その結果、
観察期間における抗体価の半減期は、
平均で36日で、
その95%が26から60日に分布していました。
つまり、抗体価はほぼ1か月で半減し、
数か月で陰性化する可能性が高い、
と言う結果です。

SARSウイルスにおいては、
同様の検証での抗体の持続期間は、
1年程度という報告が多く、
間違いなく新型コロナウイルスはSARS原因ウイルスと比較して、
血液中の液性免疫の持続が短いことが明瞭となってきています。

細胞性免疫はもっと長く維持されるという報告もありますが、
いずれにしても今回の新型コロナウイルス感染症罹患後の、
免疫の持続期間が、
特に軽症例では短いことはほぼ間違いのないことで、
今開発中のワクチンの有効性も、
その点を踏まえてなされる必要がありそうです。

そして、これはもう常識的なことですが、
不特定多数の抗体価を測定して、
陽性であれば免疫が成立しているという、
「抗体があれば安心」というような考え方は、
今回は全く成立しないということは、
もう一度強調しておく必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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よろしくお願いします。

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三谷幸喜「大地」(ウェブ配信版観劇) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。
朝からレセプト作業をして、
午後から演劇のライブ配信を観ました。
こちらです。
大地.jpg
三谷幸喜さんの新作「大地」が、
客席を減らしたソーシャルディスタンス版として、
今上演されています。

もともと人気なのに席数を減らしているので、
僕も抽選には応募しましたが撃沈しました。
それで仕方なく配信版を観たのですが、
結論的には配信で充分かな、
というように感じました。

作品は「第17捕虜収容所」みたいな収容所の群像劇ですが、
収容されているのが全員役者というのがミソで、
ある種の役者論と観客論のようになります。
ラストはかなりビターで、
小細工のような笑いの要素は希薄です。

悪いということではないのですが、
三谷さんとしては、
かつての新劇を意識した作風の1つで、
如何にも古めかしく、
僕にはあまり好みではない世界でした。
最近の作品には割とそうしたものが多いのですが、
これなど井上ひさし作品そのものという感じでしょ。
舞台面も非常に地味で動きが少なく、
申し訳ないですが、
実際に劇場に足を運んでいたら、
覚醒したまま観劇することは、
難しかったと思います。

ただ、勿論さすが三谷幸喜というところもあって、
決め手となるラストの台詞と共に、
不在の1つの椅子がスポットに照らされた時には、
ちょっと鳥肌の立つような思いがありました。
なるほど、これがやりたかったのね、
という感じです。

幕間でおちゃらけもありましたが、
この作品は基本的に大泉洋さんのための芝居ですね。

彼のラストの芝居のためにあるような戯曲ですし、
大泉さんもいつもの遊びを相当封印して、
ラストを計算しつつ緻密かつ熱の籠った芝居をしていたと思います。

他のキャストは正直少し地味ですよね。
この役この人でなくていいのに、
というようなキャスティングが多くて、
「お友達人事」みたいな感じもありましたよね。

辻萬長さんのお芝居を、
役者演技の理想形として提示したり、
浅野和之さんを世界的なパントマイムの名手にして、
そのマイムを延々と演じさせたり、
こういうものを誰が期待しているのかしら、
それは結局身内受けを期待しているもので、
一般の観客向けのサービスではないのじゃないのかな、
というようには感じました。

クドカンとか演劇人の方は挙って絶賛されていて、
まあ、ラストまで観ると、
身内の方は絶賛するしかないですよね。
それ以外に言葉はない、という感じ。
ただ、そうでなくてもいつもプレミアチケットなのに、
今回は席数も少なくてより特権的な観客しか劇場に足を運べないので、
それを3000円払ってスマホで観ている自分は何なかな、
これで済むなら結局ライブなんてなくてもいいじゃん、
と複雑な思いにも捉われてしまいます。

要するに「劇場に足を運ぶことは素晴らしい」
ということを言っているのに、
実際には足を運ぶことはとても難しくて、
身内の方しか出来ない訳でしょ。
「観客賛歌」というのがテーマである筈なのに、
実際の観客は選ばれた少数の人と身内だけでしょ。
この辺りに、ライブという形態の難しさがあるように、
このようなコロナ禍の現在では特に感じました。

役者同士の距離を取って、
感染防御に努めたような説明があったのですが、
配信で舞台を観る限りは、
それほどそうした配慮や新しい舞台作り、
という印象は希薄でした。
役者の位置関係など気を遣っていることは分かりますが、
でも役者の1人が感染していれば、
絶対に集団感染にはなりますよね。

誤解ないように言いますが、
それが悪いと言っている訳ではないのです。

いつものことで日本人は「安全神話」を求めますが、
そんなものはない、ということを言いたいのです。

こうしたライブは感染するのです。
それは仕方のないことで、
問題はその上でどのレベルで社会がこうした状況を許容するのか、
という1点にしかない、
というような気がします。

観んなで飲んだくれて大騒ぎしたい、
大声で歌を歌いたい、唾の掛かるような芝居を観たい、
そうした欲望はあって良いのです。
それを全て否定はできないけれど、
感染のリスクは勿論ありますよ、
ということなのです。
ステッカーを貼っただけで、
それが「安全」になる訳はないのです。
あんな自己申告の「お札」に意味はないでしょ。

感染しないような方法には限界があり、
絶対に「安全」にはならないので、
何処までの危険を許容して、
実際に感染が起こった時に、
どのようにしてそれを最小に封じ込めるのか、
問題はその点に尽きるように考えます。

まあでも、今後はこうした配信が、
演劇においても主体となってゆくことは間違いがなく、
そこで「ライブ」というものの意味が、
今後は根底から問われることになるのではないでしょうか?

そのうちに、
「お前は知らないだろうけれど、昔はこういう演劇というものを、
配信ではなく劇場で実際に観ていたんだよ」
とお父さんが言うと、息子が、
「お父さん達はどうしてそんな感染リスクのある危険なことをしていたの?」
と聞かれるような時代になるのかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。

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よろしくお願いします。

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