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新型コロナウイルス感染症に対するトシリズマブの効果(アメリカの観察研究) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナウイルスに対するトシリズマブの効果.jpg
Lancet Rheumatology誌に2020年8月14日ウェブ掲載された、
サイトカインの阻害剤を新型コロナウイルス感染症に使用した、
臨床事例を解析した論文です。

新型コロナウイルス感染症の重症化においては、
炎症性サイトカインの過剰な産生が、
肺の炎症の拡大に繋がっていると考えられています。

そのために、
炎症性サイトカインを抑制するような治療が、
重症事例の治療として有効な可能性が統制されます。

トシリズマブ(商品名アクテムラ)は、
炎症性サイトカインの代表であるIL6の阻害剤で、
主に関節リウマチの治療薬として使用されています。

そこでこのトシリズマブを、
重症の新型コロナウイルス感染症に使用して、
患者の予後を改善出来る可能性が期待されているのです。

今回の研究ではアメリカの13の病院において、
新型コロナウイルス感染症で集中治療室に入室した、
764名の患者の経過を解析して、
トシリズマブの使用と患者の予後との関連を比較検証しています。
そのうちに630の患者を抽出し、
トシリズマブを使用した210名と、
未使用の420名を、
年齢性別などの因子をマッチングさせて、
比較を行っています。
トシリズマブは98%は1日400mgが、
中間値で9日間使用されていました。

その結果、
630名のうち57%に当たる358名が死亡していて、
トシリズマブ群では49%の102名が、
未使用群では61%の256名が死亡していました。
トシリズマブの使用は入院中の死亡リスクを、
36%(95%CI:0.47から0.87)有意に低下させていました。

これはまだ観察研究に過ぎないものなので、
今後介入試験などで検証されることを期待したいのですが、
リウマチでは使用されている薬でもあり、
短期使用の安全性はほぼ確立しているので、
そのメカニズム的にも、
事例を選んで使用することは、
理に適っているように個人的には思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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