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新型コロナウイルス感染症抑止のためのソーシャルディスタンシングの有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は夏季の休診期間のためクリニックは休診です。
明日からは通常通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ソーシャルディスタンシングの効果.jpg
British Medical Journal誌に掲載された、
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する、
所謂「ソーシャルディスタンス」の発症抑止効果を解析した論文です。

人間同士が常に一定の距離を置いて接することで、
新型コロナウイルスの感染を予防しようというのが、
日本のソーシャルディスタンスという考え方です。

勿論世界的にそうした考えはあり、
Physical distancing という用語が一般的で、
時にSocial distancing と呼ぶこともあるようです。

今回はそうした試みの対策のことを、
ソーシャルディスタンシングと呼ぶことにします。

ソーシャルディスタンシングはスペイン風邪のパンデミックの時に、
その有効性が確認され一定の効果を挙げたようで、
学校の閉鎖、職場の閉鎖、公共交通機関の停止、集会の禁止、
そして移動の禁止(ロックダウン)は、
ソーシャルディスタンシングの感染予防効果を期待した対策です。

以前ご紹介したLancet誌の論文では、
1メートルの距離を取ることにより、
感染リスクは82%低下する、
というデータをご紹介しました。
ただ、これは理屈の上ではそうなる、ということで、
実際にそうした対策を行なった時に、
それがどの程度の感染予防効果をもたらしたのかを、
具体的に検証したものではありません。

今回のデータは世界149の国と地域において、
上記の学校の閉鎖、職場の閉鎖、公共交通機関の停止、
集会の禁止、そして移動の禁止(ロックダウン)という、
5種類のソーシャルディスタンシング目的の対策と、
その効果を実際の患者数の推移で検証しています。

その結果、
5種類のソーシャルディスタンシングの対策を、
幾つか組み合わせて施行することにより、
トータルで新型コロナウイルス感染症の罹患率は、
13%(95%CI: 0.85から0.89)有意に低下していました。
その一方で他の4つの対策が取られている時に、
公共交通機関の停止は、
付加的な効果をもたらしませんでした。
ロックダウンはより早期に行った方が、
その後の罹患率の低下は大きくなっていました。

13%の低下というのは、
効果としては小さいように思いますが、
これは実際の対策として行なった場合、
必ずしも常に徹底して行われている訳ではなく、
その国や地域によっても、
かなりの違いがあるということも大きいように思います。
また、患者の発生率の低下というのは、
敢くまで検査をして確定した患者数のみを対象としているので、
その点でのバイアスも大きいように思います。
流行期には検査数も色々な理由で増減することにより、
罹患率も見かけ上増減することがあるからです。

今回の結果は、
タイミングを過たずに行なえば、
ソーシャルディスタンシングには一定の有効性がある、
ということと、
良く言われる電車などの公共交通機関を止めるという対策は、
これまでのデータではあまりその有効性が、
確認されていないものである、
ということを示していると思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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