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心房細動患者の長期生命予後のトレンド(フラミンガム研究の解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
心房細動の長期生命予後のトレンド.jpg
British Medical Journal誌に2020年7月掲載された、
心房細動という不整脈の診断と、
その後の生命予後を検証した論文です。

心房細動というのは、
脈が不規則に変動するタイプの不整脈で、
加齢と共に増加し、
上記文献の前置きにある記載では、
55歳以上の年齢で生涯に3人に1人は発症する、
というほど多い病気です。

心房細動が持続すると、
心臓内の血の塊である血栓が出来やすくなり、
それが脳塞栓という脳梗塞の原因になります。
また心臓細動が持続することにより、
心臓の働きは徐々に低下し、
心不全のリスクを高めます。
このような身体への影響により、
2016年に発表されたメタ解析の論文では、
心房細動があることにより、
その後の総死亡のリスクを46%増加させる、
という結果が報告されています。

ただ、近年抗凝固剤の進歩や心不全治療の進歩、
カテーテルアブレーションの適応拡大などにより、
心房細動の治療や管理にも大きな進歩が認められます。
そうした医療の進歩は、
心房細動の患者さんの生命予後に、
どのような影響を与えているのでしょうか?

今回の研究では、
アメリカの有名な長期の疫学研究である、
フラミンガム心臓研究のデータを活用して、
これを1972から1985年の第1期、
1986年から2000年の第2期
2000年から2015年の第3期の3つの時期に分けて、
その時期に新規に心房細動と診断された患者さんの、
その後の生命予後を比較検証しています。

対象者は、
第1期が5671名、第2期が6177名、
第3期が6174名です。
このそれぞれの時期に心房細動と診断された人は、
そうでない人と比較して、
総死亡のリスクが第1期は1.9倍(95%CI:1.7から2.2)、
第2期では1.4倍(95%CI: 1.3から1.6)、
第3期では1.7倍(95%CI: 1.5から2.0)、
それぞれ有意に増加していました。
心房細動診断から10年の時点で、
心臓細動による平均の損失年数は、
第1期で-2.9年(95%CI: -3.2から-2.5)、
第2期で-2.1年(95%CI:-2.4から-1.8)、
第3期で-2.0年(95%CI:-2.3から-1.7)、
となっていて、
この第1期から第3期の間に31%有意に低下していました。

このことはつまり、
一定の生命予後の改善が、
この数十年の間に見られたということを示しています。
それでも、総死亡のリスクで見ると、
まだ心房細動による明確なリスクの増加は見られており、
それを出来得る限り小さくすることが、
今後の大きな治療の課題であると言えそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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