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大気汚染と喘息リスク(デンマークの疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
PM2.5と喘息リスク.jpg
British Medical Journal誌に2020年8月19日ウェブ掲載された、
気管支喘息の発症リスクに与える、
大気汚染などの影響についての論文です。

気管支喘息は気道のアレルギー性の炎症で、
両親が喘息を持っていると、
お子さんにも発症することが多いことから、
体質的にそのなりやすさが決められていることは、
ほぼ間違いのない事実で、
関連する遺伝子も複数報告されています。
その一方で、
喘息の発症には小児期の環境要因が、
大きいこともまた知られています。

世界的に喘息の罹患率は上昇していますが、
そこには何等かの環境要因が、
存在していると考えられるからです。

たとえば、小児期の受動喫煙が、
喘息のリスクを高めることが報告されていますし、
大気汚染の多い都市部では喘息が多い、
という報告も複数認められます。

汚染された空気を吸い込むことが、
喘息発作を誘発したり、
その急性増悪の原因となることは間違いがありません。

ただ、大気汚染に小児期に曝露することが、
長期的に喘息の原因となるのか、と言う点については、
それを明確に示すようなデータはあまりないのが実際です。

今回の研究は、
国民総背番号制が取られているデンマークで行われたもので、
1997年から2014年に出生した全ての国民を対象として、
1歳から15歳の間に喘息の診断がされたり、
持続的な喘鳴症状が認められるリスクと、
その危険因子との関連を解析しています。
対象者数は3192785名という非常に大規模なもので、
15歳までにそのうちの122842名が、
喘息もしくは持続性の喘鳴と診断されていて、
その83%は3歳未満で発症しています。

両親のいずれかが喘息であると、
お子さんが喘息や持続性喘鳴になるリスクは、
2.29倍(95%CI: 2.22から2.35)と最も高く、
妊娠中に母親が喫煙をしていると、
1.20倍(95%CI: 1.18から1.22)とこれも有意に増加していました。
一方で両親が高学歴であると28%(95%CI: 0.69から0.75)、
高収入であると15%(95%CI: 0.81から0.89)、
喘息や持続性喘鳴のリスクは有意に低下していました。

大気汚染の関連では、
PM2.5とPM10、二酸化窒素が大気中に多い地域で生活すると、
喘息や持続性喘鳴のリスクは高い傾向が認められ、
特にPM2.5については、
他の関連因子を補正しても、
その濃度が高いほど、
喘息や持続性喘鳴のリスクの増加が認められました。

今回の検証においては、
特に妊娠からお子さんが3歳になるくらいまでの期間において、
妊娠中のお母さんの喫煙、
両親の喘息の家族歴、
PM2.5の大気中濃度が多い地域での生活は、
その後の喘息や持続性喘鳴の、
リスクを増加させることが確認されました。

今後こうした知見を元に、
喘息予防の観点からの大気汚染対策が、
重要になってくるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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