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マスクの種類と飛沫飛散防止効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診です。
積み残している仕事を、
なるべく片付けたいと思っているのですが、
何処まで出来るでしょうか?
何とか頑張りたいと思います。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
マスクの性能比較研究.jpg
Science Advances誌に2020年8月7日掲載された、
マスクの飛沫拡散防止の性能を、
新しい方法で検証した論文です。

これは結構もうあちこちで、
紹介されているものですが、
多少切り口を変えて、
お伝え出来ればと思います。

特に咳などの症状がなく、
医療従事者でもない一般の人が、
マスクを公共の場で装着するという習慣は、
欧米にはないもので、
今回の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行初期には、
欧米ではマスクの有効性は、
否定的な見解が多く見られました。

しかし、その後流行が拡大して、
有効な感染予防の決め手がない、
という状態が長く続くにつれ、
公共の場で一般の人がマスクをすることの、
感染予防としての有効性が見直され、
今では世界的に有効な感染予防法として、
世界的に認知されています。

日本においても「マスク着用」というのは、
感染防御策の基本として推奨され、
劇場や集会、映画館などでも、
マスク着用が食事中以外は義務化されています。

ただ、
マスクには医療用のものからファッション的な用途のものまで、
多くの種類のものが発売され、
その素材も不織布と呼ばれるものから、
コットン、ポリエチレン、ニットや絹など様々です。
ジョギングなどの際には、
バンダナを口や鼻の周りに巻いたり、
ネックゲーターと呼ばれるフリース素材のもので、
口元を覆ったりしていて、
これもマスクに準じると見做されています。

N95マスクは最も高性能の医療マスクですが、
これを正しく装着すると、
正直相当の息苦しさがあります。
それに準じるのがサージカルマスクで、
これは不織布を3枚重ねて作られています。
こうした医療用のマスクと、
夏にも快適とされる通気性の良い布製のファッションマスクが、
とても同じ性能とは思えない、
というのは誰でも思うところです。

それでは、実際にはこうしたマスクの種類により、
その性能にはどのくらいの違いがあるのでしょうか?

マスクの性能には色々な指標があります。
最も単純なものは、
マスクの構造がどのくらいの飛沫粒子を、
通過させるのか、
ということです。

医療関係者が通常装着しているサージカルマスクは、
5μm(5000nm)程度の大きさの粒子を、
濾過して捕捉する機能を持っています。

N95マスクと称されるより高性能のマスクは、
0.1から0.3μm(100から300nm)の粒子を、
95%以上濾過して捕捉する性能を持っています。

ただ、こうした性能は敢くまで理論的なもので、
実際にこのマスクを人間が装着して、
それで声を出したり咳をしたりする時に、
マスクをしない場合と比較して、
どのくらい周辺への飛沫を阻止しているのか、
ということを証明しているものではありません。

今回ご紹介する論文は、
マスクの実際の感染予防効果を、
新しい測定法により解析したものです。

その方法というのは、
実際に被験者が色々なマスクをして、
レーザーが照射された箱に向かって声を出し、
レーザーの膜に移った飛沫粒子を、
スマホのカメラで撮影して計測する、
というものです。

この方法は文献の著者らによれば、
実際の感染防止効果を反映している点と、
スマホカメラを使用して安価に出来る、
と言う点が特徴であるようです。

従って、この論文の肝は、
どちらかと言えば新しい測定法という部分にあって、
マスクの性能比較は、
そのおまけのような意味合いです。

それではまずこちらをご覧下さい。
マスクの種類の一覧.jpg
今回使用比較されているマスクの画像の一部です。

1は通常のサージカルマスクで、
色つきですが2と14はN95マスクです。
5や8はコットン主体のファッション性の高いマスク。
11はネックゲーターです。

こうしたマスクを装着して、
同じ台詞を話して、飛沫の飛び具合を比較します。

それではこちらをご覧下さい。
マスクの性能比較評価の図.jpg
これは縦軸がカウントされた飛沫量を示し、
横軸はマスクの種類を示しています。
10回同じ実験を繰り返して、
それをグラフ化しているのです。
一部に色が付いているのは、
その4種類の比較はより詳細に行っているからです。
中抜きの大きな丸になっているのは、
4人の別の人を使って試験を繰り返した結果を、
同じマスクで図示したものです。
人が変わるとかなり結果に違いが出てしまうのですね。
この方法の限界を示しているようにも思いますし、
同じ言葉を喋っても、
飛沫の飛び方には非常に個人差が大きい、
ということを示しているようにも思います。

図の右から2番目の緑の結果が、
マスクをしていない場合です。
そして、一番左がN95マスクでその隣の青がサージカルマスクです。
N95マスクは飛沫量を0.1%未満に抑制していて、
サージカルマスクは幅はあっても、
5%未満には抑制しています。
一方でコットンなどのマスクは、
20%から30%は飛沫の拡散を許しています。
バンダナは50%近く飛沫の拡散を許していて、
ネックゲーターは、
むしろマスクをしない状態より、
飛沫を拡散させています。
これはネックゲーターの使用により大きな飛沫が小さくなり、
より拡散が多くなったと想定されています。

次にこちらをご覧下さい。
マスクから出る飛沫の解析の図.jpg
これは時間経過と飛沫量を、
先刻のグラフで色の付いていた4種で比較したものです。
2つの異なるグラフを重ねているので、
ちょっと分かりにくいのですが、
言葉を発する毎に、
飛沫が噴出するように飛んでいることが分かります。

このように、
同じマスクでも装着の仕方やその種類により、
その飛沫拡散防止効果には大きな差があり、
装着の方法によっては、
却って飛沫の拡散を増加させてしまう、
という可能性もあります。

こうした「ウィズ・コロナ」と言うべき状態が、
今後も続くようであれば、
マスクの種類や装着法についても、
もう少し詳細な検証が必要になるのではないでしょうか?

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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