「アルプススタンドのはしの方」(映画版) [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
高校演劇の名戯曲として有名で、
単独で上演もされた同題の戯曲を、
映画化した作品です。
高校選抜甲子園の1回戦、
はぐれ者の数人の高校生が、
アルプススタンドのはしの方で、
応援するでもなくぼんやりと試合を眺めています。
色々な理由で1人悩んでいたり、
野球部を辞めてしまったり、
野球部の先輩に恋をしていたりと、
様々な理由でその「はしの方」を選んだ高校生達が、
試合の推移と共に、
互いに少しずつ交流し、
最後は何故か熱のこもった応援を、
試合に向けるようになるのです。
なるほど…
高校演劇の台本としては、
これ以上はないな、というくらいに、
巧みに構成されたお芝居で、
学生演劇関係者の全てから、
絶賛されるようなタイプのお芝居です。
高校野球の試合が舞台ですが、
試合自体は描かれることはなく、
それを観ている数人の観客、
それも皆から離れてアルプススタンドの片隅にいる、
訳ありの数人だけで舞台を成立させ、
見えない試合を見せよう、という趣向です。
「見えないものを見せる」というのは演劇の本質ですし、
舞台装置など殆どなくても成立出来るところが、
さすがクレヴァーです。
ただ、これを映画にして面白いのかしら、
ということになると、
「全てを見せる」のが映画ですから、
余程工夫しないと間抜けになるのでは、
というのは誰でも分かるところです。
そして、実際に映画版を観てみると、
中途半端に劇場中継のような、
自主制作映画のような、
合成カットや特殊効果を全てカットした、
大林宣彦監督のファンタジー映画のような、
微妙な出来映えになっていました。
これね、地方球場みたいなところのスタンドを使って、
他のブラスバンド応援などの姿を、
ところどころ挟みながら展開されていて、
実際の試合の模様は一切画面には出て来ません。
映画としては、これじゃ成立しないと思うのですね。
映画でこの物語をやるとすれば、
球場は甲子園は無理だと思うので、
地方予選の決勝くらいに設定して、
リアルに試合も映すべきでしょ。
設定が野球の試合の客席なのに、
試合を映さないのは映画としては駄目ですよ。
もし舞台そのままにやりたいのなら、
普通に舞台録画をドキュメンタリーみたいにやればいいでしょ。
演劇として映像化するというのであれば、
もっと幾らでもやりようはあると思うのです。
でも、この映画はそういう撮り方はしていないんですよね。
舞台の設定を映画化してリアルに見せよう、
という趣向である筈なのに、
演劇の不自然さをそのままやっているので、
どっちつかずになってしまっていると思うのです。
演技も稚拙でとても映画レベルではないし、
演出も自主映画レベルでした。
ちょっと「カメラを止めるな!」のように、
演技や演出自体は稚拙でも、
アイデア勝負の拾い物を期待したのですが、
どうもそうしたものではなかったようです。
普通に映画でも観ようか、
というような方にはとてもお勧めは出来ません。
内容を分かった上で、
ご興味のある方のみにお勧めです。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
高校演劇の名戯曲として有名で、
単独で上演もされた同題の戯曲を、
映画化した作品です。
高校選抜甲子園の1回戦、
はぐれ者の数人の高校生が、
アルプススタンドのはしの方で、
応援するでもなくぼんやりと試合を眺めています。
色々な理由で1人悩んでいたり、
野球部を辞めてしまったり、
野球部の先輩に恋をしていたりと、
様々な理由でその「はしの方」を選んだ高校生達が、
試合の推移と共に、
互いに少しずつ交流し、
最後は何故か熱のこもった応援を、
試合に向けるようになるのです。
なるほど…
高校演劇の台本としては、
これ以上はないな、というくらいに、
巧みに構成されたお芝居で、
学生演劇関係者の全てから、
絶賛されるようなタイプのお芝居です。
高校野球の試合が舞台ですが、
試合自体は描かれることはなく、
それを観ている数人の観客、
それも皆から離れてアルプススタンドの片隅にいる、
訳ありの数人だけで舞台を成立させ、
見えない試合を見せよう、という趣向です。
「見えないものを見せる」というのは演劇の本質ですし、
舞台装置など殆どなくても成立出来るところが、
さすがクレヴァーです。
ただ、これを映画にして面白いのかしら、
ということになると、
「全てを見せる」のが映画ですから、
余程工夫しないと間抜けになるのでは、
というのは誰でも分かるところです。
そして、実際に映画版を観てみると、
中途半端に劇場中継のような、
自主制作映画のような、
合成カットや特殊効果を全てカットした、
大林宣彦監督のファンタジー映画のような、
微妙な出来映えになっていました。
これね、地方球場みたいなところのスタンドを使って、
他のブラスバンド応援などの姿を、
ところどころ挟みながら展開されていて、
実際の試合の模様は一切画面には出て来ません。
映画としては、これじゃ成立しないと思うのですね。
映画でこの物語をやるとすれば、
球場は甲子園は無理だと思うので、
地方予選の決勝くらいに設定して、
リアルに試合も映すべきでしょ。
設定が野球の試合の客席なのに、
試合を映さないのは映画としては駄目ですよ。
もし舞台そのままにやりたいのなら、
普通に舞台録画をドキュメンタリーみたいにやればいいでしょ。
演劇として映像化するというのであれば、
もっと幾らでもやりようはあると思うのです。
でも、この映画はそういう撮り方はしていないんですよね。
舞台の設定を映画化してリアルに見せよう、
という趣向である筈なのに、
演劇の不自然さをそのままやっているので、
どっちつかずになってしまっていると思うのです。
演技も稚拙でとても映画レベルではないし、
演出も自主映画レベルでした。
ちょっと「カメラを止めるな!」のように、
演技や演出自体は稚拙でも、
アイデア勝負の拾い物を期待したのですが、
どうもそうしたものではなかったようです。
普通に映画でも観ようか、
というような方にはとてもお勧めは出来ません。
内容を分かった上で、
ご興味のある方のみにお勧めです。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。