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「WAVES ウェイブス」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ウェイブス.jpg
今注目のA24制作の青春映画で、
アカデミー賞を取った「ムーンライト」に近い感じの、
1つの黒人家族の崩壊と再生を描いた作品です。

黒人映画と言ってしまうと単純過ぎると思いますが、
雰囲気は矢張りかつての黒人青春映画の感じですね。

前半と後半に分かれていて、
前半は一家の兄が主人公で、
追い詰められ、
取り返しの付かない犯罪を犯してしまうまで。
後半はその妹が主人公で、
トラウマを抱えながらも幸せをつかみ、
最後は家族の再生が予感されて終わります。

前半の兄貴がまあどうしようもなくて、
普通は後半にも兄貴が登場して、
兄貴の再生の物語になりそうでしょ。
でも、そうはしていないんですね。
妹にボーイフレンドが出来て、
彼はろくでなしの父親を憎んでいるんですね。
その父親が危篤という時に、
妹はボーイフレンドを促して、
父親の最後を看取ることに成功するのです。
兄も強権的な父親を憎むことになって、
それが悲劇の引き金を弾いたのですが、
その経験があったからこそ、
ボーイフレンドと父との和解に結び付いたのですね。
波がもう1つの波に繋がるように、
不幸な出来事の記憶が、
もう1つの出来事に結び付いて過去を浄化してゆく、
その思いが心に染みました。

現実はむしろそうしたもので、
過ち自体は正されることもなく、
犯罪者が改心するようなこともそうはないのだけれど、
周囲にもたらす影響は決して悪いことばかりではなく、
次の世代に正しい果実をもたらす種になることもあるのは、
真実であるように思います。

ただ、映画としてはやや舌足らずで、
物足りなさやモヤモヤした感じが残ることも事実で、
「ムーンライト」と比べると完成度はかなり落ちるかな、
というようにも思います。
特にラストが、
点描みたいに家族の1人1人を綴るでしょ。
あれはあまりに凡庸で、
もっとやりようがなかったかな、
というように感じました。
「ムーンライト」はラスト浜辺で少年が振り向くのが、
とても印象的で素敵でしょ。
そうした決定的なカットがないのが、
この映画の一番の弱みだと思います。

これ、画格が途中で何度も変わるのですね。
スタンダードサイズとビスタサイズが基本で、
そこに一回り小さなパナビジョン(シネスコサイズ)が挟まれます。
小さなパナビジョンはへんてこりんだと思うのですが、
劇場の映写方式によるのかも知れません。
本来はそのまま横幅が大きくならないと変ですよね。

音楽映画のような売り方がされていますが、
そうしたものではなく、
音楽は流れますが、
普通のほろ苦い青春映画でした。

「ムーンライト」がお好きな方であれば、
その変奏曲として、観て損はないと思います。
久しぶりに映画でも、
というような向きには、
ちょっと小粒かも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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