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ヒドロキシクロロキンは新型コロナウイルス感染症の発症予防に有効か? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は終日レセプト作業の予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
クロロキンの新型コロナ発症予防効果.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2020年6月3日ウェブ掲載された、
ヒドロキシクロロキンの新型コロナウイルス感染症に対する、
暴露後の発症予防効果についての論文です。

新型コロナウイルス感染症(Covid-19)に対する治療薬は、
複数開発され使用されていますが、
今のところ決め手となるような薬はありません。

治療薬の臨床試験は、
その殆どが入院して人工呼吸器が必要とされるような、
重症の事例をその対象としています。

勿論重症の事例の予後を改善することは、
非常に重要なことですが、
今回の感染力が非常に強い感染症においては、
患者さんに接触して感染したリスクのある人が、
その時点で使用することにより、
病気の発症を予防するような薬があれば、
それも流行の拡大阻止のために、
重要な役割を果たすことは間違いがありません。

ヒドロキシクロロキンはマラリアの治療薬で、
基礎実験のレベルでは新型コロナウイルスに対する抗ウイルス作用を持ち、
特にアメリカとヨーロッパの一部において、
新型コロナウイルス感染症の治療薬として使用されています。

ただ、その有効性と安全性については議論があり、
このNew England…誌に掲載された複数の論文においては、
いずれもその有効性は否定されています。

ただ、これは入院中の主に重症事例の治療に対してで、
濃厚接触者の発症予防に有効かどうかは、
また別の問題です。

そこで今回の研究では、
アメリカとカナダにおいて、
新型コロナウイルス感染症の患者と濃厚接触した、
家族や同僚などの821名を対象に、
暴露から4日以内に、
本人にも主治医にも分からないように、
クジ引きで2つの群に分けると、
一方はヒドロキシクロロキンを5日間使用し、
もう一方は偽薬を使用して、
14日間の経過観察を行なっています。

その結果、
ヒドロキシクロロキン使用群の11.8%と、
偽薬群の14.3%が、
14日以内に新型コロナウイルス感染症を発症していて、
その差は統計的に有意ではありませんでした。
一方で有害事象はヒドロキシクロロキン群で有意に多く発症していました。
有害事象は吐気や下痢などの消化器症状が主体でした。

この結果は、
必ずしもヒドロキシクロロキンのこの用途での有効性を、
完全に否定するものではありませんが、
有害事象の多さも考慮すると、
安易に発症予防に使用することは、
現時点では控えるべきであるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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