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新型コロナウイルス感染症の年齢とウイルス量 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナウイルスの小児のウイルス量.jpg
JAMA Pediatrics誌に2020年7月30日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルスの上気道のウイルス量と、
年齢との関連についての論文です。

新型コロナウイルス感染症は流行の初期には、
小児への感染は極めて稀で、
重症化も殆どない、とされていました。
小児同士の感染や小児から大人への感染も、
何故か起こりにくいと考えられていました。

しかし、その後の研究により、
小児の感染自体は決して稀ではなく、
多くが軽症で推移すること自体は間違いがないのですが、
感染を周辺に拡大する要因となることは、
否定出来ないというように理解は変わってゆきました。

その上気道のウイルス量についても、
当初は少ないという見解がありましたが、
最近ではむしろ小児では多いというデータも、
複数報告されるようになっています。

今回の研究はアメリカ、シカゴの小児病院が主体のものですが、
生後1ヶ月から65歳の145名の新型コロナウイルス感染症の患者を、
その年齢を5歳未満、5歳から17歳、18歳以上の3群に分けて、
上気道のRT-PCR検査における、
CT値(Cycle Threshold Values)という指標から、
そのウイルス量を推測して比較しています。

PCR検査はウイルス遺伝子を増幅して検出するもので、
それ自体に定量性はありませんが、
CT値が低いとウイルス量が多いことが示唆されるので、
それを代用指標としているのです。

その結果、
年齢が5歳未満では、
それより上の年齢層と比較して、
有意にCT値が低下していました。
これはすなわち、
5歳未満ではそれより高い年齢と比べて、
同時期により上気道のウイルス量が多い、
ということを示唆しています。

この結果は、
必ずしも小児の感染力が強い、
ということを意味するものではありませんが、
小児が感染を拡大するきっかけになる、
というリスクはあると考えた方が良いようには思います。

ただ、実際には保育園などの集団感染において、
それほど多くの軽症から無症状の感染者が、
見付かるという訳でもないので、
こうしたPCRのCT値から推測されるウイルス量からは、
感染の実際は分からないのかも知れません。

新型コロナウイルス感染症に、
年齢による症状や病態の差があることは間違いのない事実ですが、
その実体や感染の拡大における意義については、
まだ不明な点が多く結論に至ってはいない、
とそう考えておいた方が良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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