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極私的新型コロナウイルス感染症の現在(2020年8月8日) [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

新型コロナウイルス感染症(COCID-19)の感染が止まりません。

クリニックの検査でも、
この1週間は陽性率が高くなっていて、
診察上は「これは違うな」と思うようなケースでも、
陽性の事例が多く認められています。

間違いなく市中感染が拡大しています。

今流行が拡大しているのは、
間違いなく保健所などの対応が、
パンクしてしまっているからです。

クリニックでも家族などの濃厚接触者の唾液RT-PCR検査の依頼が、
この1週間くらいは多いのですが、
お聞きすると陽性者が出ても、
入院になるのか、宿泊療養となるのか、
自宅療養となるのかの対応がなかなか決まらず、
結果としてあまり感染防御が出来ないままに、
家族が一緒に暮らしていて、
更に感染が広がってしまう、
という悪循環になっています。

濃厚接触者が発熱などの症状を呈していれば、
その時点ですぐにRT-PCRを施行すれば良いのですが、
無症状の場合には、
その時点ですぐにRT-PCR検査を行なうことが、
必ずしも感染の拡大阻止に繋がるとは言えません。

無症状の感染者でのRT-PCR検査の陽性時期や期間は、
事例によりまちまちで、
文献的にもあまりまとまったデータがなく、
その時点での検査で陰性であることが、
「無罪証明」には決してならないからです。

今日検査が陰性であっても、
翌日に陽性になる可能性が充分にあるからです。

問題なのは検査を受けた多くの人にとって、
その検査は感染していないという、
安心のために行われていると理解されていることです。
濃厚接触者の検査は、
敢くまでどのくらいの感染の広がりが想定されるのかの、
「当たり」を付ける目的のもので、
感染と非感染の振り分けをするためではないのですが、
それを理解してもらうのは、
なかなか難しいのが実際です。

東京や大阪や沖縄で今起こっていることは、
市中感染の状態になっているのに、
泥縄的に検査数のみを増やしているので、
陽性となった場合の保健所など行政の対応が追い付かず、
それが却って感染をより広げる原因となっている、
という悲惨な状態です。

医療崩壊を食い止めるということに力点を置き過ぎたために、
多くの軽症事例の行き場がなくなって、
結果として感染を発見しても、
適切な対応が取れないために、
感染が拡大し続けているのです。

システム的な問題もあります。

クリニックで唾液のRT-PCR検査を行なって、
陽性になりますよね。

保健所に発生届をファックスで出し、
それから折り返しの電話で補足の説明をします。
保健所ではその情報を元に、
入院の必要性などの優先順位を付けて、
それを東京都の担当部署に送付します。
入院や宿泊療養の判断をするのは、
東京都になるのです。
品川区はほぼ収容はパンク状態で、
品川区在住でも品川区で入院や宿泊療養が出来るとは限りません。
その采配は全て東京都でしているのです。

単純に考えて、
これで毎日数百人の情報が都に集まり、
それを都内の宿泊施設や医療機関の情報と照らして、
対応を決めるだけで、
多くの時間が費やされてしまうのです。

それが更に地区の保健所に伝えられ、
それから本人や家族に伝えられるということになるのです。

このシステムは、
医療崩壊を防いで、
重症の患者を効率的に入院させる、
と言う点では一定の効果を挙げています。

しかし、感染を収束させるという点では、
全く機能しないばかりか、
むしろ感染の拡大を助長してしまうのです。

軽症者や無症状感染者の多くは、
適切な決定がなされないまま、
自分達の責任で、
家族や周辺の人達と、
一緒に生活せざるを得ないからです。

RT-PCR検査を増やしても、
この状況は全く解消はされません。

検査は症状が出た時点で、
速やかに行なえるという体制があればいいのです。
そのスピード感こそが命であって、
無症状の人に検査をして、
陰性で安心することには何の意味もありません。
現状は無症状の人に「安心」のための検査を多数行うことで、
結果として検査機関もパンクして、
迅速に出るべき結果が却って遅延してしまっているからです。

家族や会食をした友人、
同じフロアで仕事をしている同僚が、
新型コロナウイルス感染症と診断された時、
周辺で長く接触していた人に、
症状がなくても一旦検査をすること自体は、
悪いことではありません。
ただ、その時の検査で陰性であっても、
ある程度の確率では既に感染していると、
そう想定した方が良いので、
陰性であっても濃厚接触であれば、
陽性として経過をみることが必要なのです。

無症状の濃厚接触者は、
感染している可能性を念頭に、
周囲との接触を避けて2週間(期間には別の意見もあります)
経過をみることが何より必要なのです。
その間に症状が出現すれば、
速やかに検査を行ないますが、
無症状のままに経過していれば、
必ずしも検査をする必要はないのです。

これが無理な状態となれば、
もうロックダウンしか手はありません。

今重要なことは、
陽性患者を迅速に隔離することです。
そのためにはマンパワーが圧倒的に不足しているのです。

飲食店や映画館などが感染防御の対策を取ることは、
確かに新規の感染者の増加予防には役立ちます。

しかし、今最も感染拡大の要因となっているのは、
家族などでの周辺の感染拡大なのです。
それを防ぐためには、
感染者が発見された段階で、
速やかにその患者を隔離出来るような対策が必要です。
たとえば1人暮らしであれば、
体調をみながらの自宅療養で問題はないのです。

現状は重症者以外の行き先を決めるのに、
数日から1週間くらいの時間が掛かってしまい、
その間に感染が周辺に拡大し、
それが更に周辺に拡大するという、
いたちごっこの悪循環に陥っているのです。

これでは絶対に感染は収束しません。

現状の問題は行政が感染収束の対策を取っていない、
ということです。
最悪の事態を免れるための対策は取られているのですが、
それは感染拡大を抑えるための対策ではない、
と言う点が問題なのです。
しかし、このペースで感染が拡大すれば、
医療崩壊を防いでいる堤防もいずれは決壊して、
最悪の事態に至ることは、
もう火を見るより明らかです。

堤防があるので、
川の増水を実感出来ない、
というのが現在の東京の状態です。

どうか一刻も早く、
感染者が迅速に振り分けられ、
それぞれのあるべき場所に速やかに隔離されるための、
そうした対策に努力を集中して下さい。

理性のある人が少しでもいることを祈りつつ、
今日も僕なりに必死に、
診療に当たりたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

一刻も早くこの状態が解消されますように。

石原がお送りしました。
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