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新型コロナウイルス感染症の重症化と血糖値との関連 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナウイルス重症化と血糖値.jpg
Diabetes Research and Clinical Practice誌に、
2020年8月24日ウェブ掲載された、
血糖値と新型コロナウイルス感染症の重症化との関連についての、
中国発のデータです。

新型コロナウイルス感染症が、
糖尿病の患者さんでは重症化しやすく、
生命予後も悪い可能性がある、という知見は、
流行の比較的早期の段階から複数寄せられていました。

糖尿病で血糖コントロールが悪い状態においては、
感染が悪化しやすいこと自体は以前から知られている知見ですから、
これは想定内の事実であるとも言えます。

一方で高血糖のみならず、血糖が低値であることも、
糖尿病の患者さんでは死亡リスクの上昇に繋がる、
という報告があります。
ただ、低血糖と新型コロナウイルス感染症との関係についての、
明確な知見はまだ得られていません。
また、糖尿病の患者さん以外でも、
血糖が低ければ感染症の予後に関連するのか、
といった点についても明らかではありません。

今回の研究は中国温州市の5カ所の病院において、
293名の糖尿病のない新型コロナウイルス感染症の患者の予後と、
入院時に採取された血液で測定した血糖値との関連を検証しています。

空腹時血糖を、
85.32mg/dL未満、85.32から93.78mg/dL、93.78から104.04mg/dL、
104.04から126.9mg/dL、126.9mg/dL以上、
の5群に分けて分析すると、
肺炎や呼吸不全などを来した中等症から重症の事例は、
順に20.7%、1.7%、13.8%、27.1%、67.2%となっていました。

これは空腹時血糖が85.32から93.78mg/dLの範囲が、
最も感染の予後が良いことを示していて、
それより血糖値が高いことも、低いことも、
いずれも重症化のリスクの増加に繋がることを示しています。

最も予後の良い群と比較すると、
最も血糖が低い群で25.33倍(95%CI:2.77から231.64)、
最も高い群では38.93倍(95%CI: 4.36から347.48)、
重症化のリスクは高くなっていました。

これはかなりクリアな結果ですが、
入院時の血糖値の若干の高低が、
ここまで感染症の予後に影響を与えるものだろうか、
という疑問は正直なところ感じざるを得ません。

興味深いデータではありますが、
今後別個のデータでも同様の結果が出るまでは、
まだ鵜呑みにはしない方が良さそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

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