SSブログ

新型コロナウイルス感染症治療薬のメタ解析 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナウイルスの治療のメタ解析.jpg
2020年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
2020年7月の時点での新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療についての、
これまでの臨床データをまとめて解析した、
システマティックレビューとメタ解析の論文です。

新型コロナウイルス感染症の治療薬は、
多くの候補となる薬剤が検証されていますが、
未だに決め手となるような薬剤はありません。

今回の研究では、
これまでの臨床データのうち、
介入試験と呼ばれる、
患者さんを登録して治療薬の効果を比較した、
比較的信頼性の高い23の臨床試験データを、
まとめて解析しその比較を行なっています。

その結果、
多くの試みられた治療の中で、
ステロイド(グルココルチコイド)の使用は、
通常の治療と比較して、
一定期間の死亡リスクを12%(95%CI:0.80から0.97)、
有意に低下させていました。
レムデシビル、リバビリン、ヒドロキシクロロキン、インターフェロンβ、
ロピナビル・リトナビルなどそれ以外の治療薬は、
死亡リスクを有意に低下させることはありませんでした。

人工呼吸器装着のリスクについてみると、
そのリスクを有意に低下させたのは、
矢張りグルココルチコイドのみで、
その使用は人工呼吸器装着のリスクを、
26%(95%CI:0.59から0.93)有意に低下させていました。
それ以外の薬剤では人工呼吸器装着のリスクを、
有意に低下させるものはありませんでした。

症状回復までの期間を短縮した、
というデータのある薬剤は3種類で、
ヒドロキシクロロキンが平均で4.5日間、
レムデシビルが平均で2.6日間、
ロピナビル・リトナビルが平均で1.2日間、
それぞれ未使用と比較して症状持続期間を短縮していました。
ただ、データの信頼性においては、
レムデシビルが中等度である一方、
他の2つの薬剤のデータの信頼性は、
それほど高いものではありませんでした。

このように、介入試験のレベルで、
現時点で感染症の予後を、
明確に改善したというデータがあるのは、
ステロイド剤のみで、
それ以外の薬や治療に、
そうした有効性は確認されていません。

観察研究や非常に少人数の臨床研究では、
びっくりするような画期的な効果が、
報告されているものもあるのですが、
現時点ではあまり信用のおけるものではなく、
再現性もないので、
あまり鵜呑みにはしない方が良さそうです。

新型コロナウイルス感染症の制圧は、
まだまだ険しい道のりであるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。

実年齢56歳、血管・骨年齢30代の名医が実践!  コーヒーを飲む人はなぜ健康なのか?

実年齢56歳、血管・骨年齢30代の名医が実践! コーヒーを飲む人はなぜ健康なのか?

  • 作者: 石原 藤樹
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2020/07/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


nice!(6)  コメント(0) 

nice! 6

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。