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ファン・ディエゴ・フローレス テノールコンサート(2019) [コロラトゥーラ]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当します。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ファン・ディエゴ・フローレス.jpg
2019年の12月に世界で最も人気のあるテノール歌手の1人、
ファン・ディエゴ・フローレスが来日して、
東京では場所を変えて2日間のコンサートを開催しました。

まさに待望の来日です。

フローレスは長くロッシーニの、
アジリタなどの装飾技巧を駆使する歌唱における第一人者で、
「セビリアの理髪師」のラストのテノールの大アリアなど、
その歌唱の困難さやアリアの長さから、
カットされることが通例であった多くの難アリアを復活させ、
ロッシーニやバロックオペラなどの歌唱を一変させました。

レジェ―ロという、
テノールでも最も高く繊細な声質ですが、
その歌唱は絢爛豪華で、
その技術は超絶技巧にと言うにふさわしく、
コロラトゥーラとしては声量もあるために、
前に充分に飛ぶ声で、
メトロポリタン歌劇場のような大空間においても、
遜色のない堂々たる歌唱を披露したために、
瞬く間に世界のスターに上り詰めました。

僕も個人的には強い声のコロラトゥーラとして、
女性ではデセイ様、男性ではフローレスが、
別格1位でした。

フローレスはまだ売れっ子になる前にリサイタルなどで来日し、
2002年にボローニャ歌劇場の来日公演で「セビリアの理髪師」を歌い、
2006年にもボローニャの来日で「連隊の娘」を歌いました。
これは両方とも聴きましたが抜群でした。
その後2011年に震災のために来日予定がキャンセルとなり、
今回は2006年以来の来日ということになります。

まさに待望の来日でした。

今回のリサイタルは、
サイン会などの予定は全て中止となったのですが、
リサイタル自体は無事に行われました。

10日はピアノ伴奏でオペラシティ、
14日はオーケストラ伴奏でサントリーホールでした。
演目にはロッシーニは14日の歌曲しかなく、
あれあれ、という感じであったのですが、
年齢的にも歌う演目を変えて、
ベルカントに移行しようという時期であるようでした。

フローレスが「ラ・ボエーム」や「トゥーランドット」のアリアを歌う、
というのですから、
かつてを知っていると、
あれあれ、という感じがあるのですが、
声質もかなり太くなっていて、
もう輝かしい高音がバシバシ、という感じではなかったので、
もうロッシーニを歌うことはないのかな、
というように感じました。
高速のアジリタなどは片鱗もありませんでしたね。
2日目のアンコールの本当にラストで、
「連隊の娘」のアリアを、
さわりだけ歌って大盛り上がりであったのですが、
昔の輝かしい声ではありませんでした。

テノール歌手の多くはこうしてスタイルを変えて行くのでしょうから、
それはもう仕方のないことで、
フローレスももう、
そうした年齢に達しているのだな、
というように納得はするのですが、
個人的にはもうフローレスは良いかな、
というようには思ってしまいました。

誰か良いコロラトゥーラはいないかしら。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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芸術参加と健康との関係について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
藝術参加と健康.jpg
2019年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
芸術参加と健康との関連についての論文です。

芸術に日常的に親しむことが、
心を豊かにする、というような言い方は、
しばしば行われています。

その人生における価値については、
日本より欧米の方がより高く考えることが多いようです。

それでは、こうした活動が、
健康に与える影響はあるのでしょうか?

それを真面目に検証したのが今回の研究です。

イギリスにおいて、
登録時に50歳以上の一般住民、
トータル6710名を14年という長期間観察し、
芸術参加と生命予後との関連を検証しています。

この場合の芸術参加というのは、
美術館や画廊に行ったり、
展覧会や演劇、オペラ、コンサートなどに行くことを意味しています。

その結果、
全く芸術鑑賞の機会がない人と比較して、
年に1から2回そうした機会のある人は、
総死亡のリスクが14%(95%CI: 0.77から0.96)、
数か月に1回以上ある人は、
総死亡のリスクが31%(95%CI: 0.59から0.80)、
それぞれ有意に低下していました。

これは勿論芸術鑑賞そのものの健康効果、
というようには言えません。
むしろそれに付随する生活そのもののゆとりのようなものが、
背景にあるように思われますが、
いずれにしても、
芸術鑑賞の機会を持つような生活が、
健康的にも良い可能性があることは確かで、
日本ではあまり受け入れられない考え方ですが、
生活の質と健康との関係についても、
食事や運動などと共に、
今後より議論される必要はありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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睡眠時間と脳卒中リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
睡眠時間と脳卒中リスク.jpg
2019年のNeurology誌に掲載された、
睡眠時間と脳卒中リスクとの関連についての論文です。

睡眠時間とその後脳卒中を起こすリスクとの間に、
関連があるという報告はこれまでにもありますが、
その結果は報告によってまちまちである上に、
脳卒中のタイプなどについての、
細かい分析がされているものは、
殆どありません。

そこで今回の研究では中国において、
大規模疫学研究のデータを解析することで、
この問題の詳細な検証を行っています。

登録時に平均年齢が61.7歳の31750名を、
中間値で6.2年の経過観察を行ったところ、
睡眠時間が7時間以上8時間未満と比較して、
9時間以上寝ている人は、
脳卒中をその後発症するリスクが、
1.23倍(1.07から1.41)有意に増加していました。

また、昼寝の時間が1から30分と比較して、
90分より長く昼寝をしていると、
脳卒中をその後発症するリスクは、
1.25倍(1.03から1.53)これも有意に増加していました。

このリスクの増加は、
主に虚血性梗塞によるものでした。

睡眠の質に関しての検証では、
ぐっすり眠っていると答えた人と比較して、
睡眠薬を使用しているなど、
睡眠の質が悪い事を自覚している人は、
トータルの脳卒中のリスクが29%、
虚血性梗塞のリスクが28%高い傾向を示し、
出血性梗塞のリスクは56%有意に増加していました。

また、睡眠時間が9時間以上で昼寝を90分以上していると、
1.85倍(1.28から2.66)、
睡眠時間が9時間以上で睡眠の質も悪いと、
1.82倍(1.33から2.48)、
脳卒中のリスクはより増加していました。

このように今回の大規模な検証においても、
睡眠時間や睡眠の質と、
脳卒中の発症リスクとの間には、
一定の関連が認められました。

ただ、これはおそらく加齢や動脈硬化の進行に伴う、
覚醒レベルの低下がその原因となっている可能性が高く、
決して長く寝ることや昼寝をすること自体が、
脳卒中のリスクを高めているのではない、
というように理解する必要があると思います。

睡眠の質やパターンが変化した時には、
その背景に脳の機能低下がある可能性を、
考える必要があるのではないでしょうか。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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第50回健康教室のお知らせ [告知]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はいつもの告知です。
こちらをご覧下さい。
第50回健康教室.jpg
次回の健康教室は、
1月18日(土)の午前10時から11時まで(時間は目安)、
クリニック2階の健康スクエアにて開催します。

今回のテーマは「腰の痛みの最新知識」です。

腰痛も非常に多い症状で、
軽いものから寝たきりになってしまうような重症まで、
その程度も様々です。

腰痛は通常整形外科で診療を担当することが多いと思いますが、
今回はどちらかと言えば内科的に見た、
腰の痛みのとらえ方や対処法、
そして最新の研究結果などを中心にお話したいと思います。

今回もいつものように、
分かっていることと分かっていないこととを、
なるべく最新の知見を元に、
整理してお話したいと思っています。

ご参加は無料です。

参加希望の方は、
1月16日(木)18時までに、
メールか電話でお申し込み下さい。
ただ、電話は通常の診療時間のみの対応とさせて頂きます。

皆さんのご参加をお待ちしています。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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年齢に伴う脈拍の変化と健康 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
脈拍増加と心血管疾患リスク.jpg
2019年のBMC Cardiovascular Disorders誌に掲載された、
安静時の脈拍と健康についての論文です。

一生のうちに心臓が打つ脈の数は決まっている、
とか、
脈が早いほど寿命が短い、
というような言い方が時々されることがあります。

確かに安静時の脈拍数と生命予後との関係を検証した研究は、
これまでに複数あり、
概ね脈拍が早いほど死亡リスクが高い、
という結果になっていることは事実です。

ただ、実際には脈拍が早くなるような原因は、
貧血や心臓病など数多くあり、
そうした明確な病気による影響を除外すると、
それでも脈拍数と健康との間に関連があるのか、
という点については、
あまり明確なことが分かっていません。

肥満があって運動不足の人は、
確かに脈拍は早くなる傾向はあり、
それが生命予後と関連している可能性はありそうですが、
脈拍が単独の指標として、
どの程度重要であるかは、
まだ明らかとは言えないのです。

今回の研究はイスラエルの疫学研究のデータを活用したもので、
登録の時点で心血管疾患の既往のない6683名の安静時の脈拍数を、
2.9年の期間をおいて2回計測し、
経年的な脈拍の差と、
健康との関連を検証しています。

その結果、安静時の脈拍は加齢に伴って低下し、
2.9年の期間において平均で1.1回低下していました。
一方で経年的に脈拍数が増加することは、
運動不足や体重増加、脂質異常症などと強く結びついていました。

要するに、
年齢と共に安静時の脈拍数は、
徐々に低下することが正常で、
それが逆に増加するときには、
体重増加は運動不足など、
不健康な生活習慣と結びついている可能性が高い、
という結果です。

脈拍数は単独で評価するのではなく、
経年的な経過をみることが、
より重要であるのかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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医師とスピード違反 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日からクリニックは通常の診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
医者とスピード違反.jpg
2019年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
医者の専門科とスピード違反の頻度を比較した、
ちょっとユーモラスな論文です。

別に不真面目であったり、インチキである、
ということはないのですが、
British Medical Journal誌のクリスマス号には、
こうしたユーモラスな論文がまとめて掲載されるのが恒例です。

スピード違反というのは、
国内外を問わず最も多く、
最も一般的な自動車の交通違反で、
違反が見つかれば、
罰金を受けたり切符を切られたりすることも同じです。

ただ、制限速度を守ることが決まりだと、
分かってはいても、
時間がなければ飛ばしたくなるのは皆同じですし、
道によって細かく定められた制限速度も、
交通事情などを考えれば、
妥当だと思えない部分も多くあります。

それでは医師は職業的に、
スピード違反が多いでしょうか、
それとも少ないでしょうか?

一口に医者と言っても、
内科と外科ではかなり性質が違いそうです。

今回の研究はアメリカのフロリダにおいて、
スピード違反で切符を切られた、
5372名の医師と、
19639名の医師以外の職業の人とを、
比較検証しているものです。

その結果、
医師と医師でない人との間で、
特にスピード違反の程度には差はなく、
特段医師がスピード狂というような傾向は認められませんでした。
また、取り締まりに医師と医師以外で明確な差がある、
というような傾向も認められませんでした。

医師の専門科毎の比較では、
精神科の医師が最もスピード違反の頻度は高く、
また高級車を運転していて違反をする頻度が最も高かったのは、
循環器内科の医師でした。

精神科が一番スピード狂という結果は、
正直かなり意外な感じがしますが、
日本でも同様の研究が行われれば、
また別個の結果になるような気もします。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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北村想「風博士」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日までクリニックは年末年始の休診です。
明日はいつも通りの診療になります。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
風博士.jpg
北村想さんが過去の文豪の作品に想を取り、
実力派のキャストに寺十吾さんの名演出で人気のシリーズの、
今回は6作目になります。

今回は坂口安吾の「風博士」が題材となっています。
と言っても、
原作とはほぼ関連はなく、
戦争中の中国大陸の何処かを舞台として、
戦争など何処吹く風と、
飄々と生きる中井貴一さん演じる主人公と、
彼を巡る人間模様を描きます。

何処かユーモラスでのんびりとした、
牧歌的な時間が流れ、
後半はサバイバル的に大陸を逃げ延びることになるのですが、
それでもそう深刻な空気は流れません。

ただ、ラストに至って、
達観したような雰囲気の中に、
拭いきれぬ絶望のようなものも漂っていて、
ちょっと底の知れないような味わいもあるのです。

今回の作品はかつての劇団時代の北村作品や、
代表作とされる「寿歌」などを彷彿とさせるような、
行き当たりばったりでいい加減で、
牧歌的でちょっと切ない独特の世界に、
回帰したような作品です。
ロードムービー的味わいは「寿歌」に似ています。

その意味でとても懐かしく鑑賞しました。

キャストは中井貴一さんを始めとして、
吉田羊さん、段田安則さん、趣里さん、林遣都さんと、
1本に出演するのはもったいないくらいの豪華な顔ぶれですが、
中では趣里さんの役柄がかつての北村作品の、
特徴的なスタイルを良く表現していて、
感心しましたし、懐かしくも感じました。

僕は昔はあまり北村さんの良い観客ではなく、
その適当ともとれるような作品作りに、
あまり感心しなかったのですが、
今になってみると矢張り唯一無二の世界で、
それがこのシリーズでは、
心に少し空き部屋がないと、
理解が難しいような大人の芝居として成立していて、
今ではとても楽しみです。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い年始をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「屍人荘の殺人」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

クリニックは明日まで年末年始の休診中です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
屍人荘の殺人.jpg
ミステリ―ファンに評価の高かった、
今村昌弘さんのデビュー作「屍人荘の殺人」が、
神木隆之介さん、浜辺美波さんなどの豪華キャストと、
ミステリ―ドラマの脚本では職人芸的な冴えを見せる、
蒔田光治さんの台本に、
師匠筋の堤幸彦監督よりはまとまりのある作品作りをする、
木村ひさしさんの演出で映画化され、
今ロードショー公開されています。

これは原作を先に読んでから映画を見ました。

これね、原作はあまり面白くなかったんですよね。

通常の本格ミステリーとある超自然現象とを、
ミックスしたところに原作の特徴があるのですが、
それはそれで良いとして、
どう考えても、チマチマした館の中の殺人より、
館の外の超常現象の方が興味が沸くでしょ。
でも、その超常現象は何も解決はされずに、
超常現象のままに終わってしまうんですよね。
それがどうも面白くないし、
肝心のミステリーが論理性はあっても、
あまり意外性がないでしょ、
犯人もあまり魅力的ではないし、
何より動機に全く工夫がないのが脱力してしまいます。
これで多少犯人絞り込みの論理が面白くても、
大して意味がないのじゃないかしら。

今回の映画版は、
若干のマイナーチェンジはあるものの、
ミステリーのトリックやロジックの部分については、
ほぼ原作通りに再現されています。

その意味では原作をリスペクトした映画です。

ただ、もともと荒唐無稽で出鱈目なお話が、
実際に絵にすることによって、
その欠点がよりクローズアップされて、
原作ではスルー出来た部分が、
看過出来なくなってしまった、
というきらいがありました・

これはまあ、
本格ミステリーを映像化するということの弊害ですね。

キャストでは中村倫也さんが、
年齢的にも無理がありましたし、
役柄的にも、
原作と比べれば出番が増えているとは言え、
ちょっと損で残念な感じでした。

浜辺美波さんは原作より二次元的なキャラを、
見事に演じて秀逸でした。

そんな訳で浜辺さんを見る以外には、
あまり見どころのない映画で残念でした。

これ映画化して本当に勝算があったのかしら?

関係者に素朴に問いかけたいような映画でした。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い年始をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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2019年のオペラと声楽を振り返る [オペラ]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

クリニックは今年末年始の休診期間です。
本日はそれでも終日レセプト作業の予定です。

休みの日は趣味の話題です。

今日は昨年聴いたオペラと、
声楽のコンサートを振り返ります。

昨年聴いたオペラはこちら。
①新国立劇場「タンホイザー」
②新国立劇場「ウェルテル」
③東京春音楽祭「さまよえるオランダ人」(演奏会形式)
④新国立劇場「ジャンニ・スキッキ」
⑤ボローニャ歌劇場「セビリアの理髪師」
⑥ボローニャ歌劇場「リゴレット」
⑦新国立劇場「トゥーランドット」
⑧英国ロイヤルオペラ「ファウスト」
⑨英国ロイヤルオペラ「オテロ」
⑩新国立劇場「エウゲニ・オネーギン」
⑪新国立劇場「椿姫」

昨年は何と言っても、
ボローニャ歌劇場の来日公演の「リゴレット」が、
アルベルト・カザーレ、セルソ・アルベロ、
デジレ・ランカトーレという当代最高の布陣で、
とてもとても素晴らしい歌の競演、
と言うか歌の格闘技のような舞台で最高でした。
オペラってやりようでいくらでも面白くなるんだよね、
ということを再認識させてくれる舞台。
セットもしょぼいのですがセンスのあるものでした。
英国ロイヤルオペラは「オテロ」が変な演出で、
これはかなりガッカリでした。
「ファウスト」のグリゴーロは良かったですね。
ドタキャンではない日に聴けてラッキーでした。
彼はリサイタルはただの大声ショーで感心しませんが、
オペラは本領発揮という感じでした。
新国立劇場はいつも以上に行きましたが、
クオリティはいつも通りで、
低値安定という感じでしたね。
「椿姫」の演出は最悪なので、
とっととお蔵入りにして欲しいと思います。
「トゥーランドット」はかなり期待したのですが、
SF風の演出には脱力してしまいました。
ラストでトゥーランドットが自殺するのが斬新な演出なんて、
そんな訳ないじゃん。
誰でも思いつくけど、やっちゃいけないんだよ。
馬鹿馬鹿馬鹿…という感じでした。
大野和士さんは…どうなのかなあ。
僕はどうもあまり信用が出来ません。
でもリューは良かったですよ。
あれは大野さんの力だと思いました。

それから昨年は以下のような、
声楽のコンサートに足を運びました。
①シカゴ交響楽団「レクイエム」
②トーマス・ハンプソンとアンジェラ・ゲオルギュー デュオコンサート
③クールマン リサイタル
④東京春音楽祭ガラコンサート
⑤バルセロナ交響楽団 「第九」
⑥ウィーンフィルハーモニー「ブルックナー8番」
⑦ファン・ディエゴ・フローレス リサイタル

今回は何と言っても12月のフローレスの来日ですね。
2006年来日後2011年のドタキャンがあって、
それ以来待望の来日です。
アンコールも多くサービス精神は抜群でした。
サントリーホールとオペラシティで2回あり、
かなり曲は変えていました。
ただ、以前の超絶技巧のアジリタと超高音を期待すると、
いずれもほとんどありませんでした。
ベルカント歌手に変貌の途上であるようで、
仕方のないことなのでしょうが、
ちょっと期待とは違っていました。
サントリーホールでのみロッシーニを歌いましたが、
かつてのような高速アジリタも高音もありませんでした。
最後に「連隊の娘」をさわりだけ歌って盛り上げましたが、
多分もうきちんと歌うことはないのだろうな、
などと思うと複雑な心境でした。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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2019年の演劇を振り返る [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

お正月、皆さん如何お過ごしでしょうか?

今日は昨年の演劇を振り返ります。

昨年は以下の公演に足を運びました。

1.コンプソンズ「ぶっ飛ぶ夢をしばらく見ない」
2.シベリア少女鉄道「いつかそのアレをキメるタイム」
3.夜会
4.ブス会「エーデルワイス」
5.岩井秀人「世界は一人」
6.歌舞伎座三月大歌舞伎(夜の部)
7.六本木歌舞伎
8.ベッド&メイキングス「こそぎ落としの明け暮れ」
9.蓬莱竜太「母と惑星について、および自転する女たちの記録」
10.根本宗子「クラッシャー女中」
11.蓬莱竜太「まほろば」
12.MCR「死んだら流石に愛しく思え」
13.少年王者館「1001」
14. 文楽「妹背山婦女庭訓」(通し上演)
15.イキウメ「獣の柱」
16.ゴキブリコンビナート「膿を感じる時」
17.KAKUTA「らぶゆ」
18.唐組「ジャガーの眼」
19.青木豪「黒白珠」
20.ケラ「キネマと恋人」
21.モダンスイマーズ「ビューティフルワールド」
22. 歌舞伎座六月大歌舞伎(夜の部 三谷歌舞伎)
23. 歌舞伎座七月大歌舞伎(夜の部)
24.「ドライビング・ミス・デイジー」
25.松尾スズキ「命ギガ長ス」
26.赤堀雅秋「美しく青く」
27.シベリア少女鉄道「ココニイルアンドレスポンス」
28.岩松了「二度目の夏」
29.王様と私(渡辺謙凱旋公演)
30.本谷有希子「本当の旅」
31.アガリスクエンターティメント「発表せよ!大本営!」
32.平田オリザ「転校生」(演出本広克行 女子校版)
33. 歌舞伎座八月納涼歌舞伎第三部
34.劇団☆新感線「けむりの軍団」
35.谷賢一「2011年:語られたがる言葉たち」(福島三部作第三部)
36.根本宗子「プレイハウス」
37.サムゴーギャットモンテイプ「NAGISA巨乳ハンター広島死闘編」
38.三谷幸喜「愛と哀しみのシャーロック・ホームズ」
39.渡辺えり「私の恋人」
40.鵺的「悪魔を汚せ」
41.長塚圭史「アジアの女」(吉田鋼太郎演出版)
42.阿佐ヶ谷スパイダース「桜姫」
43.劇団「地蔵中毒」「すんだor not ずんだ」
44.「死と乙女」(小川絵梨子演出版)
45.別役実「この道はいつか来た道」(鵜山仁演出版)
46.別冊「根本宗子」第7号「墓場、女子高生」
47.唐組「ビニールの城」
48.川村毅「ノート」
49.前川知大「終わりのない」
50.ケラ「ドクター・ホフマンのサナトリウム」
51.M&Oplaysプロデュース「鎌塚氏。舞い散る」
52.劇団朱雀復活公演
53.NODA・MAP「Q」
54.松尾スズキ「キレイ」
55.月刊「根本宗子」第17号「今、出来る、精一杯。」
56.北村想「風博士」
57. 荒れ野
58.赤堀雅秋「神の子」
59. 良い子はみんなご褒美がもらえる(後から追加。実際には12の後)
以上の59本です。

色々あって昨年より本数はかなり減りました。
選択もどうしても保守的になり、
もっと面白い小劇場があるだろうになあ、
と思いながらもこうしたラインナップになりました。

今年の私的なベスト5はこちらです。
基本的に初演を対象としていますが、
再演でも大きく演出が変わっていたり、
前回の上演から時間が経っているものは含んでいます。

①モダンスイマーズ「ビューティフルワールド」
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2019-06-16-1
今年は蓬莱竜太さんの作品を3本観ましたが、
この新作が抜群でした。
引きこもりの中年男を一種のトリックスターにして、
保守的な普通の家族のゆがみを抉りだすという仕掛けが鮮やかで、
戯画的な登場人物をリアルに肉付けした役者陣も光っていました。
比較的食わず嫌いだったのですが、
今年から好きな劇作家に加わりました。

②谷賢一「2011語られたがる言葉たち」
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2019-08-24
福島原発事故を取り上げた演劇作品は複数ありますが、
その距離感の取り方と言い、バランス感覚と言い、
緻密な取材に裏打ちされた情報量と言い、
そして何より福島県に暮らす住民達の造形において、
僕の知る限りはこの作品がこれまでのベストだと思います。
3部作として原発の誘致、原発を巡る地元政治、
原発事故後復興期の住民の声という、
異なった視点や時代を取り上げながら、
それが1つの家族の歴史でもあるという構成が卓越していて、
とても感銘を受けました。
第二部は観ていないので、
それが残念でなりません。再演熱望!

③松尾スズキ「命、ギガ長ス」
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2019-07-20
松尾スズキさんの久しぶりの新作で、
それもスズナリで安藤玉惠さんとの2人芝居です。
とても楽しみにして出掛けましたし、
非常に贅沢な公演であったことは確かです。
ただ、松尾さんはとても温和になったのね、
というのは強く感じました。
小道具や舞台のセンスなど、
その洗練度は抜群でした。

④唐組「ビニールの城」
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2019-10-22
唐組は昨年は1995年に初演された唐先生の作品2本の再演でした。
特に初演が伝説的な「ビニールの城」の舞台が素晴らしくて、
個人的には久保井研さんのこれまでの仕事のうちで、
最高傑作ではないかしら、というように思っています。
稲荷卓央さんの久しぶりの舞台も素晴らしかったですね。
これはまた是非再演して欲しい名品です。
4位にしたのは厳密に言えば再演であるからで、
これが初演であればぶっちぎりの1位です。

⑤ケラ「ドクターホフマンのサナトリウム」
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2019-11-09-1
ケラさんの昨年唯一の新作は、
カフカの未発見の4番目の長編を巡る物語。
ケラさんの系譜の中では、
偽翻訳劇とでも言うべきジャンルの作品です。
これは洗練された演出と舞台の特殊効果が素晴らしくて、
天井桟敷の舞台を観ているような感じもありました。
ただ、内容は意外にカフカ色が薄くて、
やや肩透かしの感じもありましたね。

今年何本くらいの舞台に出逢えるでしょうか?
一期一会の思いで作品に対したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良いお正月をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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