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早産児や低出生体重児のBCGワクチン接種時期について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
BCGワクチンの接種時期.jpg
2019のJAMA Pediatrics誌に掲載された、
早産児や低出生体重児のBCG接種時期についての論文です。

BCGワクチンは牛の結核菌由来の生ワクチンで、
日本では1歳未満の月齢において、
剣山のような針を接種するという日本独自の方法で、
定期接種として行われています。

しかし、アジアなどの結核の流行地域では、
同様の接種が通常の注射として行われていますが、
欧米諸国では定期接種としては行われていません。
その有効性は肺外結核については認められていますが、
肺結核については臨床試験では不十分な効果しか認められず、
BCGを接種することで結核感染時にその診断が難しくなる、
というような点が問題として指摘されているからです。

BCGワクチンの効果は、
事例によっては50年以上持続する、
という報告があるほど持続性のあるものです。
結核の予防以外に、
BCGには膀胱癌の治療効果や、
免疫調整効果も報告されています。

さて、結核の流行地域においては、
BCGワクチンの接種は出生後速やかに、
具体的には7日以内に行われることが推奨されています。
日本においても、
周辺での流行など、
リスクが高いと想定された場合には、
出生直後からの接種が可能ですが、
一般的には生後5から8か月での接種が標準とされています。

ただ、早産児や低出生体重児においては、
その免疫機能が未熟であることで、
BCGワクチンの効果が充分に得られなかったり、
重篤な副反応が生じるという可能性が否定出来ず、
通常より遅らせての接種が行われることが国外でも通常でした。

今回の研究はこれまでの疫学データや臨床データをまとめて解析する、
メタ解析とシステマティックレビューという手法を用いて、
この問題の検証を行なっています。

その結果、
早産児や低出生体重児に対し、
生後7日以内にBCG接種を行なっても、
それ以降に行った場合と比較して、
お子さんの生命予後や、
BCGワクチンの有害事象には、
明かな差は認められませんでした。

従って、
これまでのデータからの推定として、
30週以降で出産された早産児と、
体重が1500グラム以上の低出生体重児に関しては、
通常の新生児と同様に、
生後7日以内にBCGワクチンを接種しても、
大きな問題はないと結論されています。

BCGワクチンの接種については、
その接種法においても、
接種時期の判断においても、
国内外でかなりの考え方の違いがあり、
単純にどちらが良いと即断出来るようなものではありませんが、
その違いを知っておくことは意義のあることであると思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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