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心房細動再発予防における禁酒の効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
禁酒と心房細動.jpg
2020年のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
心房細動のリスクとアルコールとの関連についての論文です。

心房細動は心房が痙攣様に収縮して、
脈拍が乱れた状態が続く不整脈で、
75歳までに人口の10%はこの不整脈を発症すると報告されています。
(海外データ)

その最も深刻な合併症は、
心臓に生じた血栓による脳卒中ですが、
それ以外に心不全などのリスクも増加し、
抗凝固剤の適切な使用により、
脳卒中のリスクが予防されても、
総死亡のリスクは心房細動がない場合の、
2倍に増加すると報告されています。

また命に関わることはなくても、
不整脈発作時の動悸や息切れなどの症状は、
人によってはかなり不快なもので、
日常生活にも大きな制限が生じることも稀ではありません。

心房細動の治療としては、
不整脈を電気ショックなどの方法で元に戻すことと、
抗凝固剤や抗不整脈剤を使用する内服治療があります。

また、最近では不整脈の原因となっている部分を、
カテーテルを利用して焼却する、
カテーテルアブレーションと呼ばれる侵襲的な治療が、
広く行われるようになっています。

ただ、そのいずれの治療においても、
問題となることの1つは心房細動の再発です。

一旦は治療により心房細動が洞調律(正常な脈拍)に戻っても、
その後の再発率は決して低いものではありません。

そこで重要なのが、
生活改善による心房細動の予防効果です。

アルコールは喫煙などと並んで、
心房細動のリスクを高める代表的な生活習慣です。

しかし、適度な飲酒は、
心血管疾患には予防的に働くというデータもあるように、
飲酒の習慣のある人が禁酒をした場合に、
それがどれだけ心房細動の予防や再発予防に結び付くのか、
という点についての臨床データはあまりありません。

そこで今回の研究ではオーストラリアの6か所の病院において、
発作性心房細動もしくは持続性の心房細動があり、
治療によりそれが洞調律に戻っていて、
かつ飲酒の習慣のある140名の患者を登録し、
くじ引きで70名ずつの2つの群に分けると、
一方は禁酒を指導し、
もう一方はアルコール量の制限はせずに、
6か月間の経過観察を行なっています。
心房細動の再発に関しては、
ウェアラブル端末などを使用して、
観察期間においては持続的にモニタリングがされています。
(患者によりモニタリングには違いがあり)

飲酒量については、
1週間でアルコール120グラム以上の飲酒を基準にしています。

その結果、
開始後2週間は除外した観察期間において、
禁酒群では70人中37人(53%)、
コントロール群では70人中51人(73%)が心房細動を再発していて、
禁酒は心房細動再発までの期間を有意に延長させていました。

このように明確に、
心房細動における禁酒の効果が確認されたことの意義は大きく、
今後より長期の検証を含めて、
知見の積み重ねが、
心房細動のより良い管理に結び付くことを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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