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睡眠時間と脳卒中リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
睡眠時間と脳卒中リスク.jpg
2019年のNeurology誌に掲載された、
睡眠時間と脳卒中リスクとの関連についての論文です。

睡眠時間とその後脳卒中を起こすリスクとの間に、
関連があるという報告はこれまでにもありますが、
その結果は報告によってまちまちである上に、
脳卒中のタイプなどについての、
細かい分析がされているものは、
殆どありません。

そこで今回の研究では中国において、
大規模疫学研究のデータを解析することで、
この問題の詳細な検証を行っています。

登録時に平均年齢が61.7歳の31750名を、
中間値で6.2年の経過観察を行ったところ、
睡眠時間が7時間以上8時間未満と比較して、
9時間以上寝ている人は、
脳卒中をその後発症するリスクが、
1.23倍(1.07から1.41)有意に増加していました。

また、昼寝の時間が1から30分と比較して、
90分より長く昼寝をしていると、
脳卒中をその後発症するリスクは、
1.25倍(1.03から1.53)これも有意に増加していました。

このリスクの増加は、
主に虚血性梗塞によるものでした。

睡眠の質に関しての検証では、
ぐっすり眠っていると答えた人と比較して、
睡眠薬を使用しているなど、
睡眠の質が悪い事を自覚している人は、
トータルの脳卒中のリスクが29%、
虚血性梗塞のリスクが28%高い傾向を示し、
出血性梗塞のリスクは56%有意に増加していました。

また、睡眠時間が9時間以上で昼寝を90分以上していると、
1.85倍(1.28から2.66)、
睡眠時間が9時間以上で睡眠の質も悪いと、
1.82倍(1.33から2.48)、
脳卒中のリスクはより増加していました。

このように今回の大規模な検証においても、
睡眠時間や睡眠の質と、
脳卒中の発症リスクとの間には、
一定の関連が認められました。

ただ、これはおそらく加齢や動脈硬化の進行に伴う、
覚醒レベルの低下がその原因となっている可能性が高く、
決して長く寝ることや昼寝をすること自体が、
脳卒中のリスクを高めているのではない、
というように理解する必要があると思います。

睡眠の質やパターンが変化した時には、
その背景に脳の機能低下がある可能性を、
考える必要があるのではないでしょうか。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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