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低糖質と低脂質の食事の健康効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
低糖質と低脂質の食事の影響.jpg
2020年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
糖質や脂質を制限した食事の健康効果についての論文です。

健康な食事とはどのようなものか、
という問題はまだ結論が出ていませんが、
そのトレンドは大きく変わって来ています。

以前には脂質を制限することが健康のためには必要であるとされ、
コレステロールを多く含む食品が悪玉のように言われていました。
しかし、最近ではむしろ脂質は多めに摂った方が健康的で、
問題は脂質の中身である、と言われるようになってきています。
また、以前の食事指導では糖質の比率は6割を超えることが普通でしたが、
糖質は制限することが健康のためには望ましい、
というようにこれも変わって来ています。

低糖質や低脂質という言葉が先走りすると、
その中身にはあまり注意が払われなくなります。

しかし、実際には同じ低糖質や低脂質と言っても、
その内容こそが問題であるようにも思います。

今回の研究はそこに着目したもので、
食事と健康についての大規模な疫学研究のデータを活用して、
食事の脂質量と糖質量をその内容を含めて点数化し、
それが総死亡のリスクと関連を持っているかどうかを比較検証しています。

対象となっているのはアメリカの一般住民、
トータル37233名で、
糖質においては、
全粒穀物や生の果物、豆やフレッシュな野菜が、
良質な糖質とされ、
精製穀物や砂糖を添加したジュース、
ポテトなどが質の低い糖質と区分けされています。
蛋白質は動物由来と植物由来に分けられ、
脂質は飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けられて、
その量も段階的に数値化されています。

ここで糖質は良質なものが多く、
脂質は不飽和脂肪酸が多く、
蛋白質は植物由来のものが多い食生活は、
健康的としてこれも数値化されています。

すると、
中身を問わない食事の脂質量が低下しても、
糖質量が低下しても、
それは総死亡リスクの低下には結び付いていませんでした。
一方で質の低い糖質を減らし、植物由来の蛋白質と不飽和脂肪酸を増やした、
健康的な低糖質食は、
そのスコアが高いほど総死亡のリスクは低下していて、
飽和脂肪酸を減らし、質の高い糖質と植物由来の蛋白質を増やした、
健康的な低脂質食は、
こちらも同程度総死亡のリスクを低下させていました。
ここでの低糖質というのは、
最もランキングの高いものでも、
総カロリーの45%程度が糖質というもので、
殆ど糖質を摂らないような、
極端な低糖質ダイエットではありません。

今回の結果から分かることは、
低糖質や低脂質というのは、
量の問題で考えるべきではなく、
敢くまで重要なのはその中身だということです。

植物由来の蛋白を増やし、
飽和脂肪酸を減らして不飽和脂肪酸を増やし、
豆や全粒穀物やフレッシュな野菜、果物を増やせば、
結果として軽度の低糖質になるのです。
脂質や糖質の比率を意識するよりも、
その方が合理的で確実に健康への効果が期待出来る、
ということなのだと思います。

赤身肉の評価や卵や乳製品の評価、
ω6系多価不飽和脂肪酸の評価など、
まだ未解決な問題はありますが、
健康な食事を総死亡のリスクを減らし、
心血管疾患などの生活習慣病のリスクを減らす食事として考えるなら、
その方向性はほぼ固まっていると、
そう考えて良いのではないでしょうか。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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